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第三章 血族と信仰

新たなる刺客

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          ♭






 俺と榊は、いつも通り記憶の欠片を探すことにした。しかし、今回は手分けして探すのではなく三人揃って探すことにした。

とにかく、皇 奈津美に記憶の欠片を触らせてはいけない。下手に記憶を取り戻したが最後、この世界は同化を迎え消滅してしまう。

そうなってしまう前に、なんとかしなくてはならない。そう考えた俺達は、"皇 奈津美がある程度記憶の欠片に触れることなく記憶を取り戻し、その上で対話を重ねてなんとか救おう"としている。

榊が言うには、"これまで記憶の欠片を手にする以外で記憶を取り戻したケースはないけど、そもそもあまりこの形の世界の例がないから、もしかしたら記憶を取り戻せるかも知れない"、とのことだ。

とりあえず、自分への言い聞かせも終わって、やる事がハッキリした。後は実行するだけだ。

 様々な色達に見つめられながら、俺達は探索を始めた。













         ◎◎◎










 皇 奈津美と話しながら、探索をしていく。記憶を取り戻せるか言ってはみたものの、案の定思い出せそうにないようだ。

思い出しそうなら声を掛けてもらうことにし、しばらく沈黙の中歩き続けた。

だが、しばらく歩いていくうちに自然と口を開いていた。



「なんか……やけに無くないか」

「ええ……ここまで見つからないと、そもそもあるのかも怪しくなってくるわね」

「無いなんてことあるのか!?」

「分からないわ……そんなケース、遭遇したこと無いもの」



 しばらく探索をしたが、一向に見つからない。普段なら、一人で探索していても全て見つけられると思われるほどの時間が経過しているはずだ。それなのに、まだ一つも見つけられていない。

だが、こうして探索して改めて分かったこともある。観測者の言う通り、いつもなら襲って来る"アイツ"らしき者が、やはり居ない。

そして、この世界にはカラフルな空間が一面に蔓延っているが、物が一切ないことだ。これなら、記憶の欠片も見つけやすい。見つけやすい、はずなんだけど……

 俺と榊で次はどの方面を探すか話していると、今までただオロオロしながら着いて来ていただけだった皇 奈津美が、口を開いた。



「あ、あの!……私たち、誰かに見られてませんか?」

「「え……?」」

「なんだか……あっちの遠い所から、視線を感じるんです」



 そういうと彼女は、何も変わらない空間のある一点を指差した。

その瞬間、俺の心臓が嫌な音を立てて鳴り響いた。



「今すぐ伏せろ!!」

「「っ!!」」



 次の瞬間、彼女が指差した方向から槍のようなものが空間を切り裂くようにこちらに飛んできた。

俺達の頭上を掠めるようにして、逆方向に飛んでいく。

間一髪の所で避けた俺達は、槍のようなものが飛んできた方向を見た。誰かが近づいて来ている。



「外したか……今度はきちんと——って、まさかお前……幸助?」

「お前は……まさか!?」



 遠くから歩いて来たそいつは、学生服を身にまとい、俺のよく知っている姿、容姿をしていた。



そう、両津だったのだ。



「お前もこっちの世界の者だったか。……悪いことは言わない、そこの女を差し出せ。お前に危害を加えるつもりはない」

「あなた……知り合いなの?」

「ああ、あいつは両津。俺と同じ高校のやつだ。でも、なんでこんな所に……」



 俺はそう答えたが、訳が分からなかった。どうして、両津がここに……しかも、皇を狙っている。意味が分からなかった。



「たとえ友達だったとしても、あいつに耳を貸さないで。恐らく、"神殺し"だわ」

「ああ……分かってる」

「幸助、何を勘違いしているのか分からないが、俺はお前の敵じゃない。……その女をこちらに差し出せ。さもなくばお前にも矛先が向くことになる」

「……すまんが、それは出来ない。俺は……榊を信じる」

「……そうか、なら——」



 そういうと両津は、手印を結んで何かを唱えた。



    ——シュペァ・ヴルフ——



 唱えた後、いつの間にか両津の手には先程飛んできた槍のようなものが収まっていた。

その武器を構え、こちらに矛先を向ける。



「すまないが、お前たちには消滅してもらうぞ」

「両津……!」

「幸助、来るぞ!」



 俺たちは、対抗する術を持っていない。それでも——

両津に向かって、構えを取った。


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