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第三章 血族と信仰
新たなる人外
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帰路に着き家に着いた時、前に交換していた無料通話アプリFINEの方に両津から連絡が入っていた。
『今日の夜暇か?出来れば駅近くの喫茶店に来れないか?』
自室に向かうため階段を登っている最中に、返信する。
『すまん、夜予定がある』
予定があるのは事実だから仕方がない。
榊との見回りを今日だけ休む、という選択肢もあったが、今日は何かがある。そんな予感がした。
『そうか、分かった!じゃまた明日学校でな!』
それきり両津からの連絡は止まった。
両津とはFINEこそ繋がっているが、連絡がきたのはこれが初めてだった。
何故両津がいきなり連絡をしてきたのかは分からない。何か連絡するようなことがあっただろうか。
両津のことはこれ以上気にしても何もないだろう。……事務所に行かなくては。
◎◎◎
あの後自宅で夕食を済ませ、いつもと同じ時間帯に家を出た。
現在は事務所内で、榊とコーヒーを飲んでいる。
事務所内にある時計の針がカチッ、カチッ、と一秒ずつ動く音が聞こえる。特に話すこともないので、それぞれが沈黙を貫いていた。
しかしコーヒーを飲み終えたのか、榊はマグカップを持って立ち上がり、事務所内の流しにマグカップを置いた。
少し冷えてきた夜だからか、薄めの上着を羽織りながらこちらを見た。
「そろそろ行きましょうか」
「ん、分かった」
そう返事をして立ち上がると、榊は先に外へと出ていった。
マグカップを片付けて外に出る。電気を消して窓が閉まっているかを確認した後、事務所に鍵を掛けた。
二人で階段を降りている時に珍しく榊から声を掛けてきた。
「ねぇ、幸助は何か予感がする時はある?」
「予感……たまにあるな。実は今日も何か、よく分からないけど予感がするんだ」
そう言うと榊は少し驚いた顔をしながらこちらを見て、口を開いた。
「私も、今日何か起こる予感がして……今日はちょっと注意深く見回りましょう」
「ああ、分かった」
神化世界が発現してから、俺はよく何かわからない予感がする時があった。榊にもそれがあるということだろうか?
思えばこの神化世界について俺はまだよく分かっていない。発現してしまう人の特徴は分かるが、何故それが世界として現れているのか。
それは榊も同じなのだろうか?彼女もまたただ巻き込まれただけなのか?
気づけばもう駅の近くまで来ていた。色々考えてみたが、考えはまとまらない。
「どうかした?」
「あ…いや、ボッーとしてただけだ」
「…そう」
あまり考えすぎても仕方ない。とにかく今は、神化世界を開いてしまう人を見つけ救うことに注意しなければ。
駅の近くに来たことで、俺は両津のことを思い出した。
両津に誘われていた喫茶店を見ても、その姿が確認出来ないことから俺は、両津が来なかったことを確認した。
FINEをした時に予感を感じていたから、その予感が両津で無くて良かったと思った。その瞬間——。
「幸助っ!あっちの路地から声がする……!何か、嫌な予感がする!」
「……!行こう!」
榊の言う路地の方へと向かって走る。
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