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第二章 女神と信者
悲惨の果て
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父は当然逮捕された。状況的に死刑、もしくは無期懲役だろう。
私たち家族にも大きな影響が出た。家を特定した報道陣、野次馬、そしてEmiRyのファンもこぞって駆けつけた。
父と母、そして私の三人家族だったため、残った二人の母子にその非難や不満がぶつけられた。
この世のものとは思えない罵詈雑言の数々。まさに生き地獄。
何度も頭を下げ、何度も涙を流した母は疲れ果て、どんどんやつれていった。
しかし、報道陣や野次馬の非難は止むことが無かった。
そしてある雨の日の次の朝、私が強い日差しで目を覚まし、リビングへ行くとそこには、大きなてるてる坊主が出来ていた。
その日は、良く晴れていた。家の前にあった雲も、その日は嘘のように無くなっていた。
10
涙が出た。あの日から激変した私達の暮らし。あの地獄のような日々、その末路。最悪だ。
「…大丈夫、じゃないな」
「うぅ…う、うわあああぁぁぁ!!あああああっ!!」
自分でも信じられないぐらい大きな声で泣いた。あの日も、こんなに泣いていただろうか。
泣き止むまで、男の子は待ってくれていた。
少し落ち着き、ようやく立てるようになり、あのEmiRyに似た人の元へ行くこととなった。
ペンダントを、返さなきゃならないから。
11
もう一人の人とも合流した。この人はEmiRyによく似ている。もっとよく見たいと思った。でも今は、少し目を合わせたくなかった。
「ペンダントは揃ったみたいね」
「ああ、彼女が二つ。俺達で二つずつだ。観測者の元へ行こう」
「……。」
何も考えたく無かった。急に色々なことを思い出してしまって、何をすれば良いのか分からなくなってしまった。
しばらく歩いていると、彼女の元へと着いた。彼女はEmiRyによく似た容姿でこちらを微笑んでいた。
「ペンダントを見つけて来てくれた?」
「……はい、全部で四つ、です。」
「そうかい!じゃあ、君の手でその四つのペンダントをこの額縁に入れてくれないか?」
「………いや、です」
「…ん?」
「ッ!」ダッッ!
「お、おい!」
「待って!」
知らないうちに走り出していた。あの世界に帰りたくないって思ったから。
とにかく遠くへ走った。見つからないように、あの世界に帰れないように。
12
あれから、どれだけ走っただろう。誰の足音も聞こえなくなった。途中でアイツにも追いかけられたけど、いつの間にか何処かに消えていた。
自分でも信じられないぐらい速く走った。帰りたくないという力のお陰なのだろうか?
「はぁ……はぁ…」
どうしたら良かったの?何処から間違ったの?私のせい?いや、違う……
結局私は何も出来ていない。気がついたら自分の周りが変わってたんだ。
もう、そんな世界、いらない。
何処かもわからず歩いていると、アイツが現れた。
「……はは」
「クウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウゥ!!」
こちらに向かって走ってくる姿に、私は両手を広げて待った。
「もう、いいよ」
私は、諦めた。
私たち家族にも大きな影響が出た。家を特定した報道陣、野次馬、そしてEmiRyのファンもこぞって駆けつけた。
父と母、そして私の三人家族だったため、残った二人の母子にその非難や不満がぶつけられた。
この世のものとは思えない罵詈雑言の数々。まさに生き地獄。
何度も頭を下げ、何度も涙を流した母は疲れ果て、どんどんやつれていった。
しかし、報道陣や野次馬の非難は止むことが無かった。
そしてある雨の日の次の朝、私が強い日差しで目を覚まし、リビングへ行くとそこには、大きなてるてる坊主が出来ていた。
その日は、良く晴れていた。家の前にあった雲も、その日は嘘のように無くなっていた。
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涙が出た。あの日から激変した私達の暮らし。あの地獄のような日々、その末路。最悪だ。
「…大丈夫、じゃないな」
「うぅ…う、うわあああぁぁぁ!!あああああっ!!」
自分でも信じられないぐらい大きな声で泣いた。あの日も、こんなに泣いていただろうか。
泣き止むまで、男の子は待ってくれていた。
少し落ち着き、ようやく立てるようになり、あのEmiRyに似た人の元へ行くこととなった。
ペンダントを、返さなきゃならないから。
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もう一人の人とも合流した。この人はEmiRyによく似ている。もっとよく見たいと思った。でも今は、少し目を合わせたくなかった。
「ペンダントは揃ったみたいね」
「ああ、彼女が二つ。俺達で二つずつだ。観測者の元へ行こう」
「……。」
何も考えたく無かった。急に色々なことを思い出してしまって、何をすれば良いのか分からなくなってしまった。
しばらく歩いていると、彼女の元へと着いた。彼女はEmiRyによく似た容姿でこちらを微笑んでいた。
「ペンダントを見つけて来てくれた?」
「……はい、全部で四つ、です。」
「そうかい!じゃあ、君の手でその四つのペンダントをこの額縁に入れてくれないか?」
「………いや、です」
「…ん?」
「ッ!」ダッッ!
「お、おい!」
「待って!」
知らないうちに走り出していた。あの世界に帰りたくないって思ったから。
とにかく遠くへ走った。見つからないように、あの世界に帰れないように。
12
あれから、どれだけ走っただろう。誰の足音も聞こえなくなった。途中でアイツにも追いかけられたけど、いつの間にか何処かに消えていた。
自分でも信じられないぐらい速く走った。帰りたくないという力のお陰なのだろうか?
「はぁ……はぁ…」
どうしたら良かったの?何処から間違ったの?私のせい?いや、違う……
結局私は何も出来ていない。気がついたら自分の周りが変わってたんだ。
もう、そんな世界、いらない。
何処かもわからず歩いていると、アイツが現れた。
「……はは」
「クウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウクウゥ!!」
こちらに向かって走ってくる姿に、私は両手を広げて待った。
「もう、いいよ」
私は、諦めた。
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