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第二章 女神と信者
数打ちゃ当たる
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「じゃ、ちょっと行ってくる」
「ええ…気をつけて」
家を出て、事務所に向かう。
彼女が言うには、神化世界を開いてしまう人間は大体19時から24時の間に出るらしい。何故この時間帯なのかは、まだ分かっていないらしい。
俺の家から事務所まで、そんなに時間は掛からない。約15分歩くと、5階建てのビルがある。事務所はこのビルの4階だ。
階段を登り、扉を開ける。もうすでに彼女は来ていた。
「あ、来たみたいね。こんばんは」
「こんばんは」
「……そう言えば、名前まだ聞いてなかったね。あなた名前は?」
「本木 幸助だ。君は?」
「榊 希よ。改めてよろしく」
そう言うと彼女は、少し話をしましょ、と言って麦茶を持って来た。
ソファに座り、話をすることにした。
「何て呼べばいい?幸助で構わない?」
「ああ、それでいいよ。こっちは榊で構わないか?」
「ええ、問題ないわ。所で、あなた今高校生なの?この近く?」
「ここから少し東に行った高校だ。榊は高校生なのか?」
「いえ、私はこの近くの大学に通ってる二年生よ。」
大学生だったか…この近くの大学は入学するのに高い偏差値を要求される国立大学だったはずだ。勉強ができるようだ。
「受験に困ったら相談してもいいよ。たぶん力になれるわ」
「その時は頼むよ」
「話は変わるけど、あなたは神化世界を作ってしまう要因って何だと思う?」
神化世界を作ってしまう要因?俺が作ってしまったのは何故だ?今まで考えていなかった。
「…ストレス、とかか?」
「半分正解ね。ストレスもあるし、家庭環境というのもあるわ。」
だとすると、榊も家庭環境が良くなかったのか?
「もう半分の答えは、異常なまでに信じ、崇める精神が関係してるわ。以前簡単にあなたの世界で説明したけど、詳しく説明するわ。」
確かに以前、神化世界の中で説明を受けたが、あの時は陶酔と言っていたし、それ程のものではないと思っていたが、信じ、崇めるとなるともはやそれは信仰だ。
それ程までに、俺は知らず知らず本を信仰していたのか?
「信じ、崇める対象は物や人よ。誰だって信じてるものはあるし、信仰の対象ぐらいあるわ。でも、あなたや私は違うの。精神的繋がりを求めてしまうぐらいに、その物や人に執着するの。」
「神擬キがあんなにしつこいのはそれが原因か?」
「ええ。私は、私や幸助のような人を狂信者と呼んでいるわ。」
本当なら疑うか馬鹿にする所だろう。でも経験してしまった以上、それが本当にあることで、実際に人が消えているのかも知れないと思うと、少し怖くなった。
「狂信者は、一度神化世界に入ると自力ではほぼ、脱出不可能よ。だから、神化世界に入れる私達が、その手助けをするの。」
「……一つ、良いか?」
「どうしたの?」
……彼女は、何故ここまで助けようとするんだ?
正直、あの世界で精神に呑まれて現実から消えてしまった方が楽だったに違いない。
榊もそれを経験してるはずなのに、何故こんなに助けるんだ?
今は聞ける状態じゃないと、俺は思う。単純に、出会ったばかりというのもあるが、それ以上にそこに踏み込むことは、何かを変えてしまいかねないような予感がする。
「…いや、やっぱりなんでもない。」
「?そう。なら、これから神化世界に入ってもらうわ。」
「この前も言ってたが、そんなに簡単に世界に入れるのか?」
「ええ。精神に問いかけるようにすれば、あなたも入れるわ」
「問いかける?……とりあえず、やってみるか」
問いかける。たぶん、人それぞれの感性だろう。なら、俺はーー
4
「……来れた」
さっきまでの世界と違う。本棚や本が無数にある世界。神化世界。
少し歩くと、誰かが来たようだ。榊だろうか?
……いや、違う。あれは、俺だ。
「じゃ、ちょっと行ってくる」
「ええ…気をつけて」
家を出て、事務所に向かう。
彼女が言うには、神化世界を開いてしまう人間は大体19時から24時の間に出るらしい。何故この時間帯なのかは、まだ分かっていないらしい。
俺の家から事務所まで、そんなに時間は掛からない。約15分歩くと、5階建てのビルがある。事務所はこのビルの4階だ。
階段を登り、扉を開ける。もうすでに彼女は来ていた。
「あ、来たみたいね。こんばんは」
「こんばんは」
「……そう言えば、名前まだ聞いてなかったね。あなた名前は?」
「本木 幸助だ。君は?」
「榊 希よ。改めてよろしく」
そう言うと彼女は、少し話をしましょ、と言って麦茶を持って来た。
ソファに座り、話をすることにした。
「何て呼べばいい?幸助で構わない?」
「ああ、それでいいよ。こっちは榊で構わないか?」
「ええ、問題ないわ。所で、あなた今高校生なの?この近く?」
「ここから少し東に行った高校だ。榊は高校生なのか?」
「いえ、私はこの近くの大学に通ってる二年生よ。」
大学生だったか…この近くの大学は入学するのに高い偏差値を要求される国立大学だったはずだ。勉強ができるようだ。
「受験に困ったら相談してもいいよ。たぶん力になれるわ」
「その時は頼むよ」
「話は変わるけど、あなたは神化世界を作ってしまう要因って何だと思う?」
神化世界を作ってしまう要因?俺が作ってしまったのは何故だ?今まで考えていなかった。
「…ストレス、とかか?」
「半分正解ね。ストレスもあるし、家庭環境というのもあるわ。」
だとすると、榊も家庭環境が良くなかったのか?
「もう半分の答えは、異常なまでに信じ、崇める精神が関係してるわ。以前簡単にあなたの世界で説明したけど、詳しく説明するわ。」
確かに以前、神化世界の中で説明を受けたが、あの時は陶酔と言っていたし、それ程のものではないと思っていたが、信じ、崇めるとなるともはやそれは信仰だ。
それ程までに、俺は知らず知らず本を信仰していたのか?
「信じ、崇める対象は物や人よ。誰だって信じてるものはあるし、信仰の対象ぐらいあるわ。でも、あなたや私は違うの。精神的繋がりを求めてしまうぐらいに、その物や人に執着するの。」
「神擬キがあんなにしつこいのはそれが原因か?」
「ええ。私は、私や幸助のような人を狂信者と呼んでいるわ。」
本当なら疑うか馬鹿にする所だろう。でも経験してしまった以上、それが本当にあることで、実際に人が消えているのかも知れないと思うと、少し怖くなった。
「狂信者は、一度神化世界に入ると自力ではほぼ、脱出不可能よ。だから、神化世界に入れる私達が、その手助けをするの。」
「……一つ、良いか?」
「どうしたの?」
……彼女は、何故ここまで助けようとするんだ?
正直、あの世界で精神に呑まれて現実から消えてしまった方が楽だったに違いない。
榊もそれを経験してるはずなのに、何故こんなに助けるんだ?
今は聞ける状態じゃないと、俺は思う。単純に、出会ったばかりというのもあるが、それ以上にそこに踏み込むことは、何かを変えてしまいかねないような予感がする。
「…いや、やっぱりなんでもない。」
「?そう。なら、これから神化世界に入ってもらうわ。」
「この前も言ってたが、そんなに簡単に世界に入れるのか?」
「ええ。精神に問いかけるようにすれば、あなたも入れるわ」
「問いかける?……とりあえず、やってみるか」
問いかける。たぶん、人それぞれの感性だろう。なら、俺はーー
4
「……来れた」
さっきまでの世界と違う。本棚や本が無数にある世界。神化世界。
少し歩くと、誰かが来たようだ。榊だろうか?
……いや、違う。あれは、俺だ。
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