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第一章 書物と少年

生まれる不幸

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       Ⅱ

 「一体……どういうことなの……」




 ある女性が呟いた。それが悲劇の終わりであり、始まりだった。




 若い女性が居た。彼女には妹が居て、どちらも互いを思いやり、家族として愛していた。

 両親は既に亡くなっており、親戚も疎遠になっていたようだ。だからこそ、二人は今まで互いを助け合って生きてきた。

 その内、若い女性に恋人が出来た。将来を考える相手であり、彼女は幸せの絶頂の近くにいたのだ。

 しかし、彼女の妹はそう思っていなかった。

 若い女性は妹のことを家族として愛していたが、妹は、一人の人間として愛していたのだ。

 彼女は考えた。自分を裏切った姉や、その原因となった男に対して何が出来るのか、と。

 彼女はその時、既に人として何かが欠けてしまっていたようだ。姉の彼氏に何も知らないフリをして近づき、そして不倫関係となった。

 不倫関係となり、姉と彼氏の仲を不完全で迷いのある状態にしたかったのだ。そして、姉が自身の元へ戻ってくることを望んでいた。

 しかし、この時彼女は思った。姉を自身のことしか考えられないようにしたいと。

 彼女はその男のことなど愛していなかった。だから、子供が出来てしまった時はそのまま堕ろそうと思っていた。

 彼女は姉と別居し、お腹の子を隠し続けた。そして産んだ。

 その頃、彼女の姉は恋人と上手くいっていないようだった。彼女の妹との蜜月に重きを置いていたようだった。

 ある日、彼女は妹から用があるから来て欲しいと言われた。その日、彼女は誕生日だったので、サプライズで祝われてプレゼントでも渡してくれるだろうと思い、自分の可愛い妹の、可愛い行為に微笑んでいた。

 


 ある意味サプライズであり、自分の期待していたものとは全く別の光景が、ありありと現実を突きつけた。




 妹と自身の恋人が、歪んだ愛を確かめ合う形で。妹の器に、恋人が液体を注ぐ体勢で。裸体の花瓶がひび割れたように死んでいた。

 彼女はわけが分からなかった。さらにその近くには、手紙と子供があった。

 手紙には、妹の復讐の全貌と姉を祝いながら呪うような愛の言葉。そして復讐の結晶として、子供を遺して福音とする旨のことが書かれていた。

 彼女は絶句した。彼女の行いや彼女の想い。恋人の裏切りそして、その結晶の福音。

 この全ては彼女の誕生日である11月5日。赤子が泣く、肌寒い時雨の降る日のことだった。




 その後、彼女はその子を引き取ることとなった。子に罪は無いと、その子が幸せになれる名前を付けて。




 その子を育てていると、妹や恋人を思い出してしまい、その子を好きになることが出来なかった。

 結果的にネグレクトとなり、彼女とこの子の間には深い溝が出来た。

 つい、言ってしまうのだ。その子に言うべきで無い言葉。呪いの言葉。

 「あんたなんか、生まれてこなければ良かったのに。生まれてくるべきじゃなかった。あんたに福音は訪れない。」




 

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