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第一章 書物と少年

逃避行

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 アイツに追いつかれないよう必死に走る。走っている中で、俺はあることに気がつき彼女に聞いてみることにした。

 「なぁ、同じような所を走ってるように見えるぞ。どういうことだ?」

 走りながらの質問だったからか、無視された。

 必死に逃げる。距離が徐々に空いてきている気がした。そして部屋に入ったタイミングで、追ってきていないことを悟った。

 「はぁ、はあ」

 息を整えていると、彼女がなんとも言えない表情で、さっきの質問に答えてくれた。

 「この世界は、あなたの、はぁ。ん、あなたの神化世界。だから、基本的には世界に範囲が存在するの。だけど、今のあなたは2つに分離している。だから世界自体が不安定で際限が無くなっているの。」

 息を整えてながら答えてくれた彼女に感謝しつつ、もう一つ聞いた。

 「そうか。もう一つ、この世界に居たあの喋る本棚はなんだ?」

 そう言うと、彼女は少し驚いた表情をして、言葉にした。

 「その本棚こそ、ここから出てアイツに勝つカギよ」

 「なに?本当かそれ」

 「ええ。今までの神化世界でも、あの神擬キ以外の喋る物や者が、この世界から出るカギになっていたわ。恐らく今回も……」

 彼女は動き出す。

 そもそも何故彼女は、見ず知らずの自分という存在の問題に、首を突っ込んでいるのだろう?

彼女をそうさせる理由が知りたかった。それに、さっき聞きそびれてしまった、何故ここのことを知っているのかということも、まだ気になっているのだ。

 しかし、彼女は動き出してしまっている。なんとかして聞きたいのだ、俺は。

 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

 「?どうしたの?早くあなたの言っていた喋る本棚まで行きましょう」

 「いや、……さっき聞きそびれたこと。それに、なんで見ず知らずの俺の問題に、自分から入ってきたのかを、聞きたかったんだ!教えて、くれないか?」

 「……そんなことより、早くここから出ることを考えて。いつまでもこの世界がある訳じゃないの。」

 「……さっき言ってた世界が不安定だってのと繋がってるのか?」

 「ええ。不安定で範囲が定められていないこの世界は、同時に崩壊してるの。そうすればあなたとアイツの勝負とは関係なしにあなた達は死ぬ。体と精神の崩壊ね。」

 「そう、なのか…。」

 「だから、今は私のことは後回し。聞くならここを出た後にして。」

 「…分かった」

 果たしてここを出られるのか?いや、出た後に彼女と話すことはできるのだろうか?

 いや、いまは出ること最優先だ。彼女のことを知るためにも。

 喋る本棚の元へと、俺達は走り出した。
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