ベアりんぐ奇譚詩編集

ベアりんぐ

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あなたを吸う

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P-013「あなたを吸う」

 誰か、大切な人がいたことを覚えている。でも顔が思い出せないの。

匂いや仕草、その全てが誰かだったはずなのに。

 この空間は以前閉ざされたままだ。そして何の目的もなく私は、詩を読み続ける。












       @












あなたは気体

広がりすぎるの

吐きすぎてしまうの

だから風船ね

閉じ込めてしまって

全部吸ってしまうの

肺までいれて

そしてむせるの

まるでタバコよ

フィルターなしで

がつんと入れて

くらくらしちゃって

もう吸わないと言っても

どうせまた吸うの

あなたのタールは重たいわ

気づけば染まって

あなた色












       @












 吸って、吸って、吐いて。

 いつまでも詩を読んでいられるわけじゃない。私も戻れたら。

 きっと、吸いにいく。


: 中毒愛の、感受を求めし少女の手記
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