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5.陰謀詭計
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・陰謀詭計(いんぼうきけい)
人を欺くための、ひそかなたくらみごと
斯くして、アリシア・プリムローズ、ならびにプリムローズ伯爵はコルデーを入手した罪で捕縛された。伯爵邸からは、相当数のコルデーが押収されたと聞くが、一つ余さず国が処分したらしい。
プリムローズ嬢は、意中の男をお茶に誘い、アニマを用いて、前後不覚になった相手の上に跨がり、既成事実を作っていた。娼婦も真っ青な手練手管だ。
中毒性が少ないとは言え、麻薬は麻薬。多用すれば中毒症状を起こす。多感な年頃の青少年たちは、それを恋だと誤認しても仕方がないのかもしれない。
とはいえ、一人の犯罪者に現を抜かし、学園に混乱をもたらした事実は取り消しようもなく、貴族子息たちはそれぞれ親に引きずられて領地に帰って行った。以降、領地から出て来ることはないだろう。
さて、王太子殿下と、そしてイルゼお嬢様についてだが。
「あの子が、僕に好意を抱いていることはすぐに分かったから、上手く利用できないかな、と思ったんだよ」
事件から一夜明け、俺とお嬢様は殿下に登城するよう命じられ、学園を休んで、王城へとやって来ていた。
王妃が好んでいるリアの花が咲き誇る中庭は、思わず感嘆の息がこぼれるほどに美しい。
これだけリアの花があったら、花煙草何本分になるだろうなァ……。
しばし紅茶と菓子で舌を楽しませてから、明日の天気を告げるような気軽さで、殿下は言った。
利用とは、随分と穏やかではない。あの犯罪者に利用できるような価値があったとも思えず、殿下の言葉の真意を図りかねていると、殿下が悪戯っ子のように笑う。
「ほら、イルゼは僕と結婚したくないようだったから」
「ど、どうしてそれをッ!?」
「分かるよ。僕は、イルゼの婚約者だもの」
驚きのあまり、ぽかんと口を開くお嬢様。必死に隠してきていたお嬢様を思えば、気持ちは分からないでもないが、その顔はいただけない。
貴族令嬢としてあるまじきお顔を許せる訳もなく、咳払いを一つして諌める。
慌てて口を覆い隠すお嬢様に、殿下はクスクスと肩を揺らした。
「僕は、国の為になるなら相手は誰でも構わないんだ。それが王族の務めだからね。でも、僕との結婚が嫌なのに、無理強いさせるのも申し訳がなくて。かといって、理由もなく破棄できるものでもないだろう?」
イルゼの評判にも瑕が付くしね、と殿下は眉を下げた。
なるほど、だからアリシア・プリムローズの想いを利用しようとしたのか。
殿下は、言葉は悪いが、相手が国内の有力貴族であれば、誰でも良かった。
そんなところに現れたのが、あの女だ。見目はそれなりに良く、小細工を用いる程度には小賢しい。
何より、あの女は殿下に恋をしていた。手段を選ばないほどに想いを募らせているなら、厳しい王妃教育も堪えられるだろう。
ある意味、殿下にとって、彼女の存在は渡りに船だったのだ。
「……とは言え、彼女はほら、随分と奔放に過ごしていただろう。今時、処女性なんて重視されていないけれど、物には限度があるじゃない?」
「殿下。僭越ながら、未婚の女性の前では言葉をお選びください」
「ただ、彼女の男に取り入る才能はずば抜けていたし、股も緩そうなくらいには経験豊富に思えたし、高級娼婦として使うのもありかな、と考えていたところだったんだ」
「殿下」
お嬢様は頬をほんのり赤らめ、殿下は面白くて仕方ないとばかりに、にこにこと笑っている。
当然、わざとだ。おい、なんで俺が殿下を諌めなきゃならねえんだよ。ハイドフェルト様はどこで遊んでやがる。
「シルヴェリオなら、今日は外してあるよ。ほら、お互いに気まずいだろう?」
「…………お心遣い、痛み入ります」
人の心を読むんじゃねえよ。この人、存外にイイ性格をしてらっしゃる。王族ならば然もありなん、だと思うが。
「そういう訳だから、イルゼ」
「は、はい!」
「まだしばらく、僕の婚約者でいてくれるかい? 正式に婚姻を結ぶ前には、君に悪いようにならないよう、僕の方から破棄しようと思っているから」
「――――はい。殿下の御心のままに」
微笑むイルゼお嬢様は、花のように可憐で、同時に頼りげがない。
殿下は、イルゼお嬢様の為に破棄をする、と口にしたが、果たして言葉の通りに受け取って良いものか。
伏魔殿を取り仕切る主の一人としての才が足りない、と見なされた可能性もある。
何でもかんでも口にしろ、顔に出せ、とは間違っても言えないが、本当に大事なことも言えないようでは、とても正妃など務まるとは思えない。前途多難だな、と誰にも気付かれないよう、小さく溜息をついた。
◇
コースフェルト邸に戻り、今回の一件に使用した金額の確認の為、息をつく間もなくグリニコフ商会へと向かった。俺のケツを労る暇もありゃしねえ。
商会本部の奥、案内された応接間のソファは、公爵家のそれと遜色ない品質だったが、いかんせんケツが開通工事明けだった為、身体の動きがぎこちなく見えたのだろう。
残念なことに、俺の取引相手は失態を見逃してくれるほど、甘い人間ではない。
「気怠そうだねぇ、エリィ。次期護衛騎士筆頭、シルヴェリオ・ハイドフェルト卿に抱かれたご感想は?」
めちゃくちゃ楽しそうな顔をして、対面ではなくすぐ横に腰掛けたツェルが繰り出す、手心なぞ一切ない問い。
いや、この男が手加減する訳はないんだが、口に出すのも憚られるような場所に痛みと違和感を覚えて、顔を青くしている俺に、そんなこと訊くか? どういう神経してんだ、こいつ?
こいつに比べたら、俺はまだまだ善良な人間だわ。
「…………尻の違和感がやべえ」
「ついに出口が出入口になっちゃったかぁ」
出入口言うんじゃねえよ。こんなもん、事故だ事故。今後も俺の尻は一方通行だよくそったれ。
大体、俺が尻にイチモツ咥え込む羽目になったのは、まず間違いなくツェルの所為だ。
俺をぶち犯す前のハイドフェルト様は、ツェルの名を口にした。おそらく、こいつに煽られたか、唆されたのだろう。
「お前、なんでハイドフェルト様にちょっかい出した?」
「面白そうだったから。後、俺なりにちょっと心配だったんだよ?」
「心配ぃ?」
「あの紅茶に、コルデーが盛られてたらどうするつもりだったの?」
心配していたからハイドフェルト様を唆すって、心配の方向性が斜め上を行っている。
俺の身は確かに無事だが、尻が無事じゃねえ時点で、その気遣いはどう考えても意味がない。
「その可能性は著しく低かったし、万が一に備えてはいただろうが」
「そうだけどさぁ。わざわざ自分から罠にかかりに行くのは、危ない橋だったと思うなぁ」
「媚薬程度なら、どうにでもなるし、どうにかするつもりだったんだよ。あッの絶倫野郎……!」
あの豚箱直送女の親が、コルデーを入手したことは、早々に分かっていた。
予想外だったのは、騎士団が思ったよりも早く動いたことだ。
おかげで、予定を早める必要が出て、しかも余計な仕事まで増えた。
加えて、ハイドフェルト様を誤魔化す為の茶番を演じ、尻までくれてやる始末。
「俺が貰っても良かったかなぁ。今回、色々お手伝いしてあげたじゃない?」
「あ?」
「だって、騎士団の目を掻い潜って、コルデーの解毒薬を融通してあげたし、別ルートで仕入れたコルデーを、あの雌豚ちゃんのポケットに忍ばせてあげたよねぇ?」
口許こそ笑んではいるが、ツェルの目に宿る光は、刃のように冷ややかだ。
危ない橋を渡ったのは、何も俺だけではない。目の前の男にも、随分と手伝ってもらった。
アリシア・プリムローズは男を籠絡する為に麻薬を用いていたが、さすがに王太子殿下に使う度胸はなかったらしい。
代わりに、殿下の婚約者であるお嬢様を排除しようと、父親に毒薬を入手してほしいと頼み込んだ。女って怖え。
で、上手いこと手に入れた後は、使う機会をうかがうだけ。後生大事に机の中に仕舞っていることは、買収した学園付の使用人から聞いていた。
「入手したこと自体に嘘はない。俺たちが捏造した証拠だって、全部が全部作り物って訳でもない」
「『机に仕舞っていた筈なのにぃ!』って言い分も、取り調べる側にしてみたら『はいはい言い訳ご苦労様』って印象だろうねぇ」
「使いまくった経費は、ハイドフェルト様との契約の対価で補填できるから、金の流れを怪しまれることもない」
学園付使用人たちを買収した分。グリニコフ商会から仕入れた分。加えて色をつけた分。
必要経費だったとは言え、随分と使い込んでしまったから、どう誤魔化すかが難題だったが、ハイドフェルト様と結んだ一時的な協力関係のおかげで、補填の目処は立った。
仮に、財務官共に突付かれても、ハイドフェルト公爵子息からの見舞金と言って押し通すつもりだ。何の見舞金かは訊くんじゃねえぞ。
「その上、迷惑料代わりにプリムローズ伯爵の取引をごっそり奪って、コースフェルト公爵はご満悦なんでしょ」
「ああ。ウチにばかり上手い話が転がり込んだと、不審に思われる可能性もあるが……婚約者に蔑ろにされた公爵令嬢、主人のために身体を張った使用人と、同情を誘う話には事欠かない」
「公爵家の不興を買うくらいなら目を瞑る、かぁ……尻穴あげた甲斐あって良かったねぇ?」
「やかましい。その減らず口、叩けねえようにされたいなら素直に言えよ」
「えっ? えっ? キスしてくれるの?」
「床としてろ」
不満げに唇を尖らせるツェルに、かなりいらっときたが、これ以上相手をするのも疲れるので、無視することにした。
こいつには世話になっているが、自分の身体を安売りするつもりはない。第一、ハイドフェルト様と寝たのだって想定外だっての。
「あのさあ、もう一個訊きたいんだけど……今回、なんでそこまで身体張ったワケ?」
「お嬢様がお可哀想だったから」
「それ、素面で言ってんなら、エリィこそ床とキスした方良くない? 正気に戻って?」
随分な言われようだ、とわざとらしく肩を竦める。
確かに、俺は可哀想なんて理由で動くほど、お人好しではない。
だが、実のところ、利益と合理性だけを行動理由にしている訳でもないのだ。
「……お綺麗な顔をしてるメルヒェン野郎を、ぐちゃぐちゃにしてやりたかったんだよ」
「シルヴェリオくんのこと?」
「ハイドフェルト様に限らず、イルゼお嬢様も、王太子殿下も、ついでにあのバカ女と取り巻き共、皆だ」
この世には綺麗であたたかいものがいっぱいだと信じている連中を、ヘドロの中に引きずり落としてやりたかった。
恋い焦がれてやまない男に裏切られたら、女はどんな絶望を味わうだろうか。
愛した女が、誰にでも股を開くような女と知ったら、男はどれほど衝撃を受けるだろうか。
忠義を立てた相手が、婚約者を蔑ろにし、誰にでも股を開く女に現を抜かすようになったら、男はどんな顔をするだろうか。
この世には、どうにもならないほどの理不尽や絶望が吐いて捨てるほどある。
お貴族様は、知ってはいても、実感したことはほとんどない。故に、いつまでも善意を振りかざしていられる。
「使用人を人間扱いするのは結構だが、それで責め立てられるのは、俺たち使用人なのだと、騎士様はご存知ないのだから、やってらんねえよなァ?」
「そんなにシルヴェリオくんが嫌い?」
「この世で一番嫌いだな。お綺麗でお優しく、何もかもを兼ね備えた騎士様。ハッ! 存在が嫌味だろ、あれ」
「なら、エリィはこれから、ハイドフェルト様のこと、どうすんの?」
さて、どうしたものか。
どうやら、ハイドフェルト様は、信頼を易々と踏みにじるような俺の言動に嫌悪感を覚えながらも、並々ならぬ好意と執着を抱いている様子。
ただ好きなだけならば、あるいは嫌いなだけだったなら、いくら麻薬でおかしくなっていたって、男の排泄器官に自分の急所をぶちこんで、前後不覚になるほど貪りはしないだろ。
「野郎に付き合うつもりは更々ねえ……が、上手く利用して、ズタズタに引き裂いてやるのも悪くはないか、とも思ってる」
「エリィったら悪い顔ぉ。なら、まだまだメルヒェン野郎たちを弄ぶつもりなんだ?」
「さてな」
善意と言う名の刃を振るう加害者を、引きずり下ろして嘲笑いたい気持ちはある。何より、まだまだ弄ぶ余地がある。
これまで、お嬢様の言う通りに進んでいたが、本来のヒロインは呆気なく退場した。元々が、物語通りに進んでいる訳でもなかったので、おかしな話でもない。
相違点のひとつは、隣国の第二王子殿下だ。確か、お嬢様の話だと、既に留学して来られていなければならないが、実際に第二王子が来られるのは半年後の予定だったか。誤差と言い切るには、時間が開きすぎている。
もう一つは、宰相のとこの嫡男、クリストフ・キルシュフェルトだ。
攻略対象であり、我が国の宰相の息子であるキルシュフェルト様が、今回の一件に一切関わらなかった理由。実に単純な話なのだが、キルシュフェルト様は今季の頭から、隣国に留学していらっしゃる。
万が一、殿下とハイドフェルト様がポンコツになった場合の保険として、キルシュフェルト様には国外に出てもらっていた。無論、キルシュフェルト様は何も知らない。
これに関しては、俺が裏でこそこそ動いた結果の、作為的な相違点ではある。
そして、最大の相違点は、イルゼ・コースフェルトだろう。
子供の頃から我が儘三昧だった彼女は、婚約者に近付くアリシアに腹を立て、あの手この手で排除しようと画策する。
攻略相手によって結末は変わるが、公爵家は没落する結末が大半らしい。
それが、どうだ。退場したのはアリシア・プリムローズで、イルゼ・コースフェルトは殿下の婚約者のまま。
誰も予想していなかっただろう、神が紡いだシナリオとやらを破綻させてやった。こんなにも痛快なことがあるだろうか。
「でもねえ、エリィ。俺は思うんだけど」
「あ?」
今さら取り繕うものなどないので、シガレットケースから出した煙草を咥える。
ツェルが妙に手慣れた手付きで、火を着けてきて、何だか妙な心地になった。
ヴェンツェル・グリニコフが、ただの親切で動く筈がない。こいつ、まだ何か企んでんのか。
「悪辣で下道なエリィを、高潔な騎士の象徴のようなハイドフェルト様が、本当に好きになるとは到底思えないんだけど」
「さては喧嘩売ってンな? 高く買い取ってやんぞ」
「もしもすべてを覚悟の上でエリィを求めたのだとしたら、それは、相当な厄介なことになりそうだねぇ?」
「…………おぞましいことを言うんじゃねえよ」
ツェルの言葉を否定しようとして、ふと脳裏に過った男の顔。
何の遠慮もなく胎を穿った姿のどこが誇り高く、清廉潔白な騎士か。
あの時、本当に喰われるかと思った。麻薬で頭がおかしくなっていたことを差し引いても、ハイドフェルト様があんな目を、何もかもを貪り喰らってやろうという目をするなんて。
昨晩、無理やり刻まれた快楽の残火が、奥底で小さく爆ぜたような気がして、はっと短く息を吐いた。
頬に突き刺さる視線が痛い。うるせえ。言いたいことがあるなら、さっさと言いやがれ。
「エリィ、エリィ。好きの反対って、嫌いじゃなくて、無関心なんだと俺は思うんだけど、エリィはどう思う?」
「やかましい」
昨晩の名残と苛立ちを誤魔化すように、ツェルの顔面へと煙草の煙を吹き掛けてやった。
途端にこんこんと咳き込むツェルに、少しだけ溜飲が下がる。花煙草っつっても煙草は煙草だからな。そりゃあ煙たいだろ。
一頻り咳き込んで、涙を浮かべて唇を尖らせる奴の顔は、どことなくあどけなく見えたから、さらに気分が良くなった。ざまあみろ。
「もう! 誘うんならもっと可愛く誘ってよぉ!」
「寝惚けたこと言ってんじゃねえよ。テメェの口を灰皿にすんぞ」
「あーあ、エリィに弄ばれちゃってるぅ……ベッドじゃなくても、面白い遊びをするなら誘ってね~?」
俺に弄ばれてる、だァ? どの口が言うんだか。それが弄ばれている男の顔かよ、と喉奥でくつりと嗤う。
弧を描いた唇から覗く赤い舌が、何故だか蛇のように見えた。悪意を煽り立て、唆し、堕ちた獲物を丸飲みする、蛇のような男。
もしも俺がこの男の手を取ったら、あの誇り高い騎士様はどんな顔をするだろう。
俺にとっては甘露のような、ハイドフェルト様にとっては悪夢のような筋書きを描き、しかし目蓋の下にそっと隠す。
俺は、ツェルにだって手の内をすべて明かす気はない。代わりに、花煙を吐いた。思惑などは煙に巻き、そして、悪辣に嗤う。
「――――さてな」
人を欺くための、ひそかなたくらみごと
斯くして、アリシア・プリムローズ、ならびにプリムローズ伯爵はコルデーを入手した罪で捕縛された。伯爵邸からは、相当数のコルデーが押収されたと聞くが、一つ余さず国が処分したらしい。
プリムローズ嬢は、意中の男をお茶に誘い、アニマを用いて、前後不覚になった相手の上に跨がり、既成事実を作っていた。娼婦も真っ青な手練手管だ。
中毒性が少ないとは言え、麻薬は麻薬。多用すれば中毒症状を起こす。多感な年頃の青少年たちは、それを恋だと誤認しても仕方がないのかもしれない。
とはいえ、一人の犯罪者に現を抜かし、学園に混乱をもたらした事実は取り消しようもなく、貴族子息たちはそれぞれ親に引きずられて領地に帰って行った。以降、領地から出て来ることはないだろう。
さて、王太子殿下と、そしてイルゼお嬢様についてだが。
「あの子が、僕に好意を抱いていることはすぐに分かったから、上手く利用できないかな、と思ったんだよ」
事件から一夜明け、俺とお嬢様は殿下に登城するよう命じられ、学園を休んで、王城へとやって来ていた。
王妃が好んでいるリアの花が咲き誇る中庭は、思わず感嘆の息がこぼれるほどに美しい。
これだけリアの花があったら、花煙草何本分になるだろうなァ……。
しばし紅茶と菓子で舌を楽しませてから、明日の天気を告げるような気軽さで、殿下は言った。
利用とは、随分と穏やかではない。あの犯罪者に利用できるような価値があったとも思えず、殿下の言葉の真意を図りかねていると、殿下が悪戯っ子のように笑う。
「ほら、イルゼは僕と結婚したくないようだったから」
「ど、どうしてそれをッ!?」
「分かるよ。僕は、イルゼの婚約者だもの」
驚きのあまり、ぽかんと口を開くお嬢様。必死に隠してきていたお嬢様を思えば、気持ちは分からないでもないが、その顔はいただけない。
貴族令嬢としてあるまじきお顔を許せる訳もなく、咳払いを一つして諌める。
慌てて口を覆い隠すお嬢様に、殿下はクスクスと肩を揺らした。
「僕は、国の為になるなら相手は誰でも構わないんだ。それが王族の務めだからね。でも、僕との結婚が嫌なのに、無理強いさせるのも申し訳がなくて。かといって、理由もなく破棄できるものでもないだろう?」
イルゼの評判にも瑕が付くしね、と殿下は眉を下げた。
なるほど、だからアリシア・プリムローズの想いを利用しようとしたのか。
殿下は、言葉は悪いが、相手が国内の有力貴族であれば、誰でも良かった。
そんなところに現れたのが、あの女だ。見目はそれなりに良く、小細工を用いる程度には小賢しい。
何より、あの女は殿下に恋をしていた。手段を選ばないほどに想いを募らせているなら、厳しい王妃教育も堪えられるだろう。
ある意味、殿下にとって、彼女の存在は渡りに船だったのだ。
「……とは言え、彼女はほら、随分と奔放に過ごしていただろう。今時、処女性なんて重視されていないけれど、物には限度があるじゃない?」
「殿下。僭越ながら、未婚の女性の前では言葉をお選びください」
「ただ、彼女の男に取り入る才能はずば抜けていたし、股も緩そうなくらいには経験豊富に思えたし、高級娼婦として使うのもありかな、と考えていたところだったんだ」
「殿下」
お嬢様は頬をほんのり赤らめ、殿下は面白くて仕方ないとばかりに、にこにこと笑っている。
当然、わざとだ。おい、なんで俺が殿下を諌めなきゃならねえんだよ。ハイドフェルト様はどこで遊んでやがる。
「シルヴェリオなら、今日は外してあるよ。ほら、お互いに気まずいだろう?」
「…………お心遣い、痛み入ります」
人の心を読むんじゃねえよ。この人、存外にイイ性格をしてらっしゃる。王族ならば然もありなん、だと思うが。
「そういう訳だから、イルゼ」
「は、はい!」
「まだしばらく、僕の婚約者でいてくれるかい? 正式に婚姻を結ぶ前には、君に悪いようにならないよう、僕の方から破棄しようと思っているから」
「――――はい。殿下の御心のままに」
微笑むイルゼお嬢様は、花のように可憐で、同時に頼りげがない。
殿下は、イルゼお嬢様の為に破棄をする、と口にしたが、果たして言葉の通りに受け取って良いものか。
伏魔殿を取り仕切る主の一人としての才が足りない、と見なされた可能性もある。
何でもかんでも口にしろ、顔に出せ、とは間違っても言えないが、本当に大事なことも言えないようでは、とても正妃など務まるとは思えない。前途多難だな、と誰にも気付かれないよう、小さく溜息をついた。
◇
コースフェルト邸に戻り、今回の一件に使用した金額の確認の為、息をつく間もなくグリニコフ商会へと向かった。俺のケツを労る暇もありゃしねえ。
商会本部の奥、案内された応接間のソファは、公爵家のそれと遜色ない品質だったが、いかんせんケツが開通工事明けだった為、身体の動きがぎこちなく見えたのだろう。
残念なことに、俺の取引相手は失態を見逃してくれるほど、甘い人間ではない。
「気怠そうだねぇ、エリィ。次期護衛騎士筆頭、シルヴェリオ・ハイドフェルト卿に抱かれたご感想は?」
めちゃくちゃ楽しそうな顔をして、対面ではなくすぐ横に腰掛けたツェルが繰り出す、手心なぞ一切ない問い。
いや、この男が手加減する訳はないんだが、口に出すのも憚られるような場所に痛みと違和感を覚えて、顔を青くしている俺に、そんなこと訊くか? どういう神経してんだ、こいつ?
こいつに比べたら、俺はまだまだ善良な人間だわ。
「…………尻の違和感がやべえ」
「ついに出口が出入口になっちゃったかぁ」
出入口言うんじゃねえよ。こんなもん、事故だ事故。今後も俺の尻は一方通行だよくそったれ。
大体、俺が尻にイチモツ咥え込む羽目になったのは、まず間違いなくツェルの所為だ。
俺をぶち犯す前のハイドフェルト様は、ツェルの名を口にした。おそらく、こいつに煽られたか、唆されたのだろう。
「お前、なんでハイドフェルト様にちょっかい出した?」
「面白そうだったから。後、俺なりにちょっと心配だったんだよ?」
「心配ぃ?」
「あの紅茶に、コルデーが盛られてたらどうするつもりだったの?」
心配していたからハイドフェルト様を唆すって、心配の方向性が斜め上を行っている。
俺の身は確かに無事だが、尻が無事じゃねえ時点で、その気遣いはどう考えても意味がない。
「その可能性は著しく低かったし、万が一に備えてはいただろうが」
「そうだけどさぁ。わざわざ自分から罠にかかりに行くのは、危ない橋だったと思うなぁ」
「媚薬程度なら、どうにでもなるし、どうにかするつもりだったんだよ。あッの絶倫野郎……!」
あの豚箱直送女の親が、コルデーを入手したことは、早々に分かっていた。
予想外だったのは、騎士団が思ったよりも早く動いたことだ。
おかげで、予定を早める必要が出て、しかも余計な仕事まで増えた。
加えて、ハイドフェルト様を誤魔化す為の茶番を演じ、尻までくれてやる始末。
「俺が貰っても良かったかなぁ。今回、色々お手伝いしてあげたじゃない?」
「あ?」
「だって、騎士団の目を掻い潜って、コルデーの解毒薬を融通してあげたし、別ルートで仕入れたコルデーを、あの雌豚ちゃんのポケットに忍ばせてあげたよねぇ?」
口許こそ笑んではいるが、ツェルの目に宿る光は、刃のように冷ややかだ。
危ない橋を渡ったのは、何も俺だけではない。目の前の男にも、随分と手伝ってもらった。
アリシア・プリムローズは男を籠絡する為に麻薬を用いていたが、さすがに王太子殿下に使う度胸はなかったらしい。
代わりに、殿下の婚約者であるお嬢様を排除しようと、父親に毒薬を入手してほしいと頼み込んだ。女って怖え。
で、上手いこと手に入れた後は、使う機会をうかがうだけ。後生大事に机の中に仕舞っていることは、買収した学園付の使用人から聞いていた。
「入手したこと自体に嘘はない。俺たちが捏造した証拠だって、全部が全部作り物って訳でもない」
「『机に仕舞っていた筈なのにぃ!』って言い分も、取り調べる側にしてみたら『はいはい言い訳ご苦労様』って印象だろうねぇ」
「使いまくった経費は、ハイドフェルト様との契約の対価で補填できるから、金の流れを怪しまれることもない」
学園付使用人たちを買収した分。グリニコフ商会から仕入れた分。加えて色をつけた分。
必要経費だったとは言え、随分と使い込んでしまったから、どう誤魔化すかが難題だったが、ハイドフェルト様と結んだ一時的な協力関係のおかげで、補填の目処は立った。
仮に、財務官共に突付かれても、ハイドフェルト公爵子息からの見舞金と言って押し通すつもりだ。何の見舞金かは訊くんじゃねえぞ。
「その上、迷惑料代わりにプリムローズ伯爵の取引をごっそり奪って、コースフェルト公爵はご満悦なんでしょ」
「ああ。ウチにばかり上手い話が転がり込んだと、不審に思われる可能性もあるが……婚約者に蔑ろにされた公爵令嬢、主人のために身体を張った使用人と、同情を誘う話には事欠かない」
「公爵家の不興を買うくらいなら目を瞑る、かぁ……尻穴あげた甲斐あって良かったねぇ?」
「やかましい。その減らず口、叩けねえようにされたいなら素直に言えよ」
「えっ? えっ? キスしてくれるの?」
「床としてろ」
不満げに唇を尖らせるツェルに、かなりいらっときたが、これ以上相手をするのも疲れるので、無視することにした。
こいつには世話になっているが、自分の身体を安売りするつもりはない。第一、ハイドフェルト様と寝たのだって想定外だっての。
「あのさあ、もう一個訊きたいんだけど……今回、なんでそこまで身体張ったワケ?」
「お嬢様がお可哀想だったから」
「それ、素面で言ってんなら、エリィこそ床とキスした方良くない? 正気に戻って?」
随分な言われようだ、とわざとらしく肩を竦める。
確かに、俺は可哀想なんて理由で動くほど、お人好しではない。
だが、実のところ、利益と合理性だけを行動理由にしている訳でもないのだ。
「……お綺麗な顔をしてるメルヒェン野郎を、ぐちゃぐちゃにしてやりたかったんだよ」
「シルヴェリオくんのこと?」
「ハイドフェルト様に限らず、イルゼお嬢様も、王太子殿下も、ついでにあのバカ女と取り巻き共、皆だ」
この世には綺麗であたたかいものがいっぱいだと信じている連中を、ヘドロの中に引きずり落としてやりたかった。
恋い焦がれてやまない男に裏切られたら、女はどんな絶望を味わうだろうか。
愛した女が、誰にでも股を開くような女と知ったら、男はどれほど衝撃を受けるだろうか。
忠義を立てた相手が、婚約者を蔑ろにし、誰にでも股を開く女に現を抜かすようになったら、男はどんな顔をするだろうか。
この世には、どうにもならないほどの理不尽や絶望が吐いて捨てるほどある。
お貴族様は、知ってはいても、実感したことはほとんどない。故に、いつまでも善意を振りかざしていられる。
「使用人を人間扱いするのは結構だが、それで責め立てられるのは、俺たち使用人なのだと、騎士様はご存知ないのだから、やってらんねえよなァ?」
「そんなにシルヴェリオくんが嫌い?」
「この世で一番嫌いだな。お綺麗でお優しく、何もかもを兼ね備えた騎士様。ハッ! 存在が嫌味だろ、あれ」
「なら、エリィはこれから、ハイドフェルト様のこと、どうすんの?」
さて、どうしたものか。
どうやら、ハイドフェルト様は、信頼を易々と踏みにじるような俺の言動に嫌悪感を覚えながらも、並々ならぬ好意と執着を抱いている様子。
ただ好きなだけならば、あるいは嫌いなだけだったなら、いくら麻薬でおかしくなっていたって、男の排泄器官に自分の急所をぶちこんで、前後不覚になるほど貪りはしないだろ。
「野郎に付き合うつもりは更々ねえ……が、上手く利用して、ズタズタに引き裂いてやるのも悪くはないか、とも思ってる」
「エリィったら悪い顔ぉ。なら、まだまだメルヒェン野郎たちを弄ぶつもりなんだ?」
「さてな」
善意と言う名の刃を振るう加害者を、引きずり下ろして嘲笑いたい気持ちはある。何より、まだまだ弄ぶ余地がある。
これまで、お嬢様の言う通りに進んでいたが、本来のヒロインは呆気なく退場した。元々が、物語通りに進んでいる訳でもなかったので、おかしな話でもない。
相違点のひとつは、隣国の第二王子殿下だ。確か、お嬢様の話だと、既に留学して来られていなければならないが、実際に第二王子が来られるのは半年後の予定だったか。誤差と言い切るには、時間が開きすぎている。
もう一つは、宰相のとこの嫡男、クリストフ・キルシュフェルトだ。
攻略対象であり、我が国の宰相の息子であるキルシュフェルト様が、今回の一件に一切関わらなかった理由。実に単純な話なのだが、キルシュフェルト様は今季の頭から、隣国に留学していらっしゃる。
万が一、殿下とハイドフェルト様がポンコツになった場合の保険として、キルシュフェルト様には国外に出てもらっていた。無論、キルシュフェルト様は何も知らない。
これに関しては、俺が裏でこそこそ動いた結果の、作為的な相違点ではある。
そして、最大の相違点は、イルゼ・コースフェルトだろう。
子供の頃から我が儘三昧だった彼女は、婚約者に近付くアリシアに腹を立て、あの手この手で排除しようと画策する。
攻略相手によって結末は変わるが、公爵家は没落する結末が大半らしい。
それが、どうだ。退場したのはアリシア・プリムローズで、イルゼ・コースフェルトは殿下の婚約者のまま。
誰も予想していなかっただろう、神が紡いだシナリオとやらを破綻させてやった。こんなにも痛快なことがあるだろうか。
「でもねえ、エリィ。俺は思うんだけど」
「あ?」
今さら取り繕うものなどないので、シガレットケースから出した煙草を咥える。
ツェルが妙に手慣れた手付きで、火を着けてきて、何だか妙な心地になった。
ヴェンツェル・グリニコフが、ただの親切で動く筈がない。こいつ、まだ何か企んでんのか。
「悪辣で下道なエリィを、高潔な騎士の象徴のようなハイドフェルト様が、本当に好きになるとは到底思えないんだけど」
「さては喧嘩売ってンな? 高く買い取ってやんぞ」
「もしもすべてを覚悟の上でエリィを求めたのだとしたら、それは、相当な厄介なことになりそうだねぇ?」
「…………おぞましいことを言うんじゃねえよ」
ツェルの言葉を否定しようとして、ふと脳裏に過った男の顔。
何の遠慮もなく胎を穿った姿のどこが誇り高く、清廉潔白な騎士か。
あの時、本当に喰われるかと思った。麻薬で頭がおかしくなっていたことを差し引いても、ハイドフェルト様があんな目を、何もかもを貪り喰らってやろうという目をするなんて。
昨晩、無理やり刻まれた快楽の残火が、奥底で小さく爆ぜたような気がして、はっと短く息を吐いた。
頬に突き刺さる視線が痛い。うるせえ。言いたいことがあるなら、さっさと言いやがれ。
「エリィ、エリィ。好きの反対って、嫌いじゃなくて、無関心なんだと俺は思うんだけど、エリィはどう思う?」
「やかましい」
昨晩の名残と苛立ちを誤魔化すように、ツェルの顔面へと煙草の煙を吹き掛けてやった。
途端にこんこんと咳き込むツェルに、少しだけ溜飲が下がる。花煙草っつっても煙草は煙草だからな。そりゃあ煙たいだろ。
一頻り咳き込んで、涙を浮かべて唇を尖らせる奴の顔は、どことなくあどけなく見えたから、さらに気分が良くなった。ざまあみろ。
「もう! 誘うんならもっと可愛く誘ってよぉ!」
「寝惚けたこと言ってんじゃねえよ。テメェの口を灰皿にすんぞ」
「あーあ、エリィに弄ばれちゃってるぅ……ベッドじゃなくても、面白い遊びをするなら誘ってね~?」
俺に弄ばれてる、だァ? どの口が言うんだか。それが弄ばれている男の顔かよ、と喉奥でくつりと嗤う。
弧を描いた唇から覗く赤い舌が、何故だか蛇のように見えた。悪意を煽り立て、唆し、堕ちた獲物を丸飲みする、蛇のような男。
もしも俺がこの男の手を取ったら、あの誇り高い騎士様はどんな顔をするだろう。
俺にとっては甘露のような、ハイドフェルト様にとっては悪夢のような筋書きを描き、しかし目蓋の下にそっと隠す。
俺は、ツェルにだって手の内をすべて明かす気はない。代わりに、花煙を吐いた。思惑などは煙に巻き、そして、悪辣に嗤う。
「――――さてな」
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