蠱惑Ⅱ

壺の蓋政五郎

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蠱惑Ⅱ『変容』

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 色んな女と付き合ってきました。ホストになって習得したことは慣れです。初めは辛かった。先輩から「金持ってるぞ、我慢してやっちゃえ」と私が二十二の時でした。その女は痩せていました。実は私は太った体形が好きで上限はありません。相撲取りのような体形からずっと下げて来て、そうですね、スポーツクラブのコマーシャルで♪デュドンドンデュドンドンとダブダブの腹を揺らしている映像ぐらいまでが下限です。♪チャーンチャチャッチャチャーンチャと勝ち誇ったポーズをしている映像は論外です。本人は満足なんでしょうが私にとっては触れたくもないレベルです。どうして豊かな肉を削げ落して喜んでいるのか不思議でなりません。先輩から勧められた女もすごく痩せていました。齢は三十三と誤魔化していますが四十二ぐらいでしょう。齢を読むのもホストになって習得した勘です。私が利用しているホテルに入りました。受付のおばさんとは顏なじみで利用するたびにチップを上げています。
「ねえ縛って」
 部屋に入るなり痩せた女は言いました。このぐらいは普通に要求されます。封筒には十万入っていました。先輩からこいつの相場はこれぐらいと情報を得ていたのでしょう。確かに店ではいつも下から数えた方が早い貢献度でした。それでも週に三回程度あるご指名で私としては満足が行く生活をしていました。上を見ればキリがない、それが下を見ても底がないぐらい売れないホストもいます。
「シャワーを浴びよう、きれいにしてあげる」
 私はせめて女の身体を洗い流したかった。食器洗いをして濯いでいると油汚れが手に残る、そんな時は二度洗いしなければ気が済まない。舐めなければならない身体の一部をわずかに残る油汚れも擦り落としたかった。
「いいの、あなたの臭いが欲しいの、このまま縛って」
 女の趣味は体臭による刺激と緊縛です。私の一番苦手な相手です。それでも彼女のブラウスをやさしく脱がせました。肌に触れるとピクッと肩が揺れました。
「もっと荒々しくして」
 女はハンドバッグ以外は持っていません。ボタンが取れたら帰りはどうするのでしょう。私はブラジャーをむしり取りました。痩せた体形が好きなら堪らないのでしょうが私にとっては皮に付着した干しブドウ。右側だけが突起しています。私はズボンのベルトを外し女の胸に巻きました。ウエスト68センチ、それをベルト穴が二つまで絞りました。女が嗚咽を漏らしました。私は吐き気を押さえスカートを脱がせます。深紅の細い下着に皺が寄っています。私を刺激するのは喰い込むほどの、ゴムからはみ出した肉が下着に被るような太った体形です。この女から刺激を受けることはありません。十万のお返しに二度、長くても二時間、やり過ごすことを考えています。女を後ろ向きにしてベッドに倒しました。私はおもいきり息を吸いました。一分間息を止めて舌を這わせます。女は身体をくねらせています。蜥蜴が逃げるような恰好です。回転するベッドの縁から頭が出ています。苦しいだろうと思い踝を引っ張って中央に戻します。また息を吸い込む。削げた尻の肉を掴んで抓ってやりました。
「入れて、早く」
 女は我慢の限界のようです。私とすれば早ければ早い方がいい。しかし私自身が反応しないのです。難解な数式を解きながら自慰をしろと言われているのと一緒です。こういう時のために持ち歩いているのがそっくりなジュニアです。私は被せるようにあてがい挿入しました。体液が出ないのが灘です。唾を溜めて掌に吐き溜めました。動きを小刻みにして唾を掌からジュニアに注ぎます。既に女の体液で洪水の様相。
「いいかな」
 女に嘘の興奮を伝えると獣の咆哮が安ホテルの吹き抜け部に飛び出しました。
 
 鳴かず飛ばずのホスト暮らしも十年が過ぎました。もうベテランの域になりましたが店では貢献度が優先です。若い横綱の回しを担ぐベテラン力士のように調子よく愛想を振りまいて過ごしていました。しかしこの長期のパンデミックにより週三の収入源は消え、貯えで節約しながらの生活も限界です。深夜の池袋の公園で炊き出しがあると聞いて並んでいると私によくアドバイスをしてくれていた先輩が列の前方に並んでいました。
「どうしてました?」
 公園の隅で弁当を広げ二人で食べました。
「どうもこうもないな、こんなとこで遇うんだからな。さっきな、ナンバー2が弁当持って帰って行ったよ。女構ってなんぼの俺達だからな、潰しが効かねえな」
「ええ、転職なんて出来ませんね」
 弁当を食い終わりここじゃまずいと別の公園で缶ビールで乾杯しました。
「そういやお前太ったのが好みだな」
「ええ、それが何か。でも今なら骨皮の女でも金さえくれればサービスしますよ。値段もいくらでもいい、言い値で行きますよ、口があるなら紹介してください」
「お前、結婚しないか?」
「なんですかいきなり」
「俺の知り合いから誘いがあったんだ。それこそダボダボの女らしい、それに懸賞付きだ。五百万くれるらしい」
「いいじゃないですかそれ、先輩のブツなら女イチコロでしょ。懸賞だけ受けとってすぐに別れちゃえばいいでしょ。先輩の特技でもある」
「それがよ、俺ダボダボ嫌いだろ。その条件が飲めない」
「何ですか条件て?」
「半年間は実家で親と共同生活して欲しいらしい。可愛くて手放したくないけど、娘に結婚をさせてやりたい。せめて半年間でもいいから一緒にいて欲しいらしい。金は有るぞ、そうやって娘を満足させてやるんだからな。五百万ずつ男を替えてもいいから娘の結婚生活を願ってる」
「だから五百万なんですね。どうも金持ちの割には額が中途半端ですよね。一年で一千万ですか。俺ダボダボ好きだし、先輩その話回して下さいよ。一割回します」
 私の所有する最高級のスーツで決めました。トップから足先まで新品なら百万はする。青梅からバスに乗り終点まで行くと古い大型バスが止まっていました。運転手は真冬だと言うのに半袖の白いオープンシャツを着て学生帽を被っていました。齢は還暦前後、外れても一つか二つ。
「どうぞ、雨が降らないうちに行きましょう」
 運転手に言われるままに大型バスに乗りました。私一人の出迎えにしては大袈裟だと思っていましたらスーツを着た男どもが大勢、補助席まで埋めてひしめき合っていました。私は最前列の若い男の隣に座りました。同業だとすぐに分かりました。
「君達はどこまで行くの?」
 私は隣の若い男に聞きました。今時コンプラのスーツなんて流行らない。男はちらと私を見ましたが口は開きませんでした。しかし乗り合いバスがあそこで終点なのはこの先に広い道路がないからではないでしょうか。このバスが向いている進行方向は靄が掛かり道の両側に柳の木が垂れ下がっています。
「しっぱつしんこう」
 運転手は前方を指差して発車しました。靄は晴れません、前方は全く見えません。フロントガラスに大きな蛙がぶち当たりました。運転手はワイパーでその蛙を弾こうとしましたが足が挟まりました。
「挟まっちまいやがんの」
 運転手はバスを止めて窓から手を出して蛙を取りました。ぴくぴくする大きな蛙の頭をハンドルに叩き付けました。
「あとで弁当のおかず」
 運転手は笑ってピクピクする蛙を保温機能の弁当箱に突っ込みました。今度は大きな蜥蜴です。
「こんちきしょう」
 バスを止めずに蜥蜴を捕まえました。運転手の腕の長さぐらいの大きな蜥蜴です。蜥蜴の喉元に噛み付いて息の根を止めました。
「今夜の焼肉」
 運転手は蜥蜴の首を一捻りして助手席のマットに転がしました。狭い道と言うか柳の葉がバスの両肩を擦りながら走行しています。それも柳の流れからして相当のスピードです。
「飛ばし過ぎじゃないですか?」
 私は運転手に注意しました。
なんだ、なんだ、なんだ、なんだ・・・・
 スーツの男達が私に向かってなんだなんだと騒ぎ始めました。
「やっちゃったよ」
 運転手はミラーで私を睨んで言いました。
「私が何か悪いこと言いました?」
「喋らないで、こいつらいつまでも騒ぐから、大変なんだから、まああんたも明日には」
「明日には何です?」
 運転手は笑いだして私の質問には答えてくれませんでした。大きな段差でしょうかバスは跳ね上がりました。下を噛んでしまい口の中を血の味が拡がりました。
「はいどうぞ」
 バスは停車し私はバスを降りました。ですが私一人で他の男達は降りません。なんだ、なんだと言い続けています。
「彼等は降りないんですか?」
「恥ずかしいのよナンバー1の前では」
 振り返ると太った女が立っていました。尻がやっと隠れるほどの着物をカットしたようなスカートです。顔は異常に小さく口がやけに大きい女です。鼻の頭に白粉を一本筋で塗っています。大きな口には紫の紅を塗り口を開けると前歯がありません。ははあ、この女の特技が分かりました。前歯を抜いたのは男を楽しませる術。
「あんたの小さいでしょ」
 後ろから声がしたので振り返りました。前に立つ女と同じ顔スタイルの女でした。
「私はナンバー1ではありません。いつも下から数えた方が早い位置。小さいのは確かです、ですから道具を使います。あなた方は双子ですか?」
 二人は答えず笑って私の周りを回り始めました。私は気持ち悪くなり二人の間を擦り抜けて走りました。すると大きな墓地に出ました。同じ墓が三列になりずっと遠くまで並んでいます。
「なんだ」
「なんだ」
 墓は大理石ですがそのてっぺんから男が首まで出して言いました。全ての墓から同じように男が飛び出して、なんだ、なんだとそれだけを連呼しています。その中にバスの隣にいた若い男もいます。ふざけているのでしょうか。私を出迎える儀式かなんかで脅かして出迎える、そんなセレモニーだろうと思いました。
「お出迎えありがとうございます。あの家に婿に入る者です。どうぞよろしくお願いします」
 私はなんだ、なんだのコールを背中で聞きながら逃げて来た道を戻りました。さっきの双子はまだ回っています。私はセレモニーと信じ、輪の中に戻りました。着物は開け腹に喰い込む赤い下着は汗で染みています。私の性欲を刺激します。
「我慢出来ない」
 双子は笑って後ろ向きになり尻降りダンスに替えました。左足を半歩ずつ動かして私の周りを左回りしています。尻の肉に食い込んだ赤い下着はもう紐にしか見えません。
「これこれ、婿殿をからかってはいけませんよ」
 茅葺の平屋から老婆が出て来ました。この老婆は双子の姉妹より太っています。真っ赤なムームーを着ています。
「さあ婿殿中に入りなさい。宴の用意が出来ております」
 老婆の後に続きました。双子の姉妹は私の両側にぴたっと寄り添い、私の腕を取って自分の股に入れるのでした。
「やっぱりナンバー1だわ」
「そうやっぱりナンバー1じゃなきゃ」
 双子は私の手を出し入れしながら喜んでいます。私も興奮しています。好みの太った体形、顏には妙な化粧をしていてもそんなことは気になりません。右の子が私のベルトの隙間から太い手を捻じ込みました。左の子も尻の割れ目に沿ってベルトの隙間から腕を捻じ込みました。二人の手が私の肛門で繋がりました。
「それっ、それっ、それっ、それっ」
 双子はその手を押し引き始めました。堪りませんでした、私はズボンの中で果ててしましました。
「さあ、こちらで着替えてください」
 老婆がヒノキの風呂に案内してくれました。
「さあ、ビッキとバッキ、ナンバー1の身体を隅々まで洗って御上げなさい」              
 双子の姉妹はビッキとバッキと呼ばれました。ヒノキの風呂は大きくて蓋がしてあります。双子に服を脱がされると私の股間はまた元気になりました。
「こいつが悪いのかこいつが」
 ビッキが私の一物を握って言いました。
「こいつも悪いのかこいつも」
 バッキが肛門に太い親指を捻じ込みました。二人の手の動きが高速になると私はすのこから足が浮きました。そのまま風呂桶の上に水平移動されると双子は空いた手で風呂の蓋を外しました。湯は緑色です。透き通った入浴剤のような緑ではありません。濁った、そしてとろみがあるように見えます。泡が湧き出ています。二人の手の動きが高速からスピードを緩めて行くと私は足先から湯の中に浸かります。ヌルヌルと何かが動いています。バッキが親指を抜きました。ビッキが手を離しました。私は粘る緑の湯の中に沈んでいきます。首まで沈んでも足が届きません。
「なんだ」
 首まで浸かると男の顔が飛び出しました。
「なんだ」
 もうひとつ。なんだ、なんだと私の回りは首だらけになりました。ビッキがハンマーで出て来る頭を叩いています。もぐら叩きのようですがハンマーが本物なので頭が割れて脳髄が飛び散ります。ビッキが浴槽に飛び込みました。バッキがなんだの頭を引っ張り上げます。すのこに放り出された男は首の下に膝から下が付いています。バッキは頭と膝下だけの男を次々と浴槽から引き揚げてはすのこに放り上げます。男達はなんだ、なんだと外へ逃げ出して行きました。ビッキが「ぷはっ」と言って顔を上げました。
「もう大丈夫ホストはいない」
 ビッキが言いました。
「ホストって?」
「ホストはホストよ、あなたはナンバー1」
 そう言いながらバッキが浴槽に飛び込みました。緑の湯は溢れてすのこに流れ出しました。流れる液体の中にたくさんの虫がいます。腕ほどもあるドジョウがすのこで跳ねたのをビッキが喰い付きました。前歯がないので丸のみです。
「ジュポー」とビッキが何かを吹き上げました。骨だけになったドジョウです。湯の中に落ちると骨のドジョウは潜って行きました。私は湯の中で二人に全身を洗われています。一物の皮をこれほど剥かれたことはありません。どんなに吸うのが好きな女でもここまで剝いたりしません。尻の穴に指が侵入します。指から腕、私の内臓を通り越して指先が口から出ています。その指が奥歯の虫歯に触れています。虫歯と言ってもまだしっかりと根が付いている。指は虫歯を揺らし始めました。グラグラ揺れて染みるような痛みを覚えました。そして一気に引き抜いたのです。差し込まれた腕は肛門から抜け出ました。
「ほら虫だ」
 ビッキがつまんでいる私の奥歯から本当に虫が出て来ました。米粒ほどの大きさですが虫歯には虫がいることを知りました。湯から上がりタオルに包まれました。そして大きな宴会場の上座に座りました。宴席の客は全て太った女達です。ドレス姿もいればあそこに紙切れを張り付けただけの女もいます。
「花嫁登場」
 司会進行の大きな女が太い声で言いました。顔をベールで隠した太い女が私の横まで歩いて来ました。そしてベールを捲りました。私は仰け反りました。その女は出迎えた老婆でした。
「どうしたの?嬉しいの?ナンバー1はいい男」
 両脇に並ぶ宴客が笑っています。
「おおーい酒を持て」
 司会の女が叫ぶと首に膝下が付いた男達が跳ねて出て来ました。宴客一人一人になんだ、なんだと注文を取っています。
「彼等はどうしたんですか?」
 私は老婆に聞きました。
「ナンバー1だよみんな。この客達はみなナンバー1に騙されててここに来たの」
「私はナンバー1じゃありません。ずっと下の方にいたホストです」
「あたしにとってはナンバー1よ。これを覚えているでしょ」
 老婆はドレスを捲り上げて太腿の内に入れたタトューを見せました。覚えています、蛇のタトューです。しかし弛んだ肉が皺を寄せて芋虫に見えたんです。酒のせいもあり、女を立てると言うホストの基本を忘れ、笑って芋虫女と罵ってしまった、まだホストになり一年目のことでした。
「ごめんなさい、まだ子供だったし、礼儀も弁えていなかった」
「それでもあたしはショックだった。でもいいの、ここでこうして会えたから」
 おかしい、どうしてこの女が花嫁なんだ。
「先輩から五百万で半年我慢すればいいって言われて来たんです」
「あいつはホストをここへ呼び寄せることを条件に許してあげてるの。あんたそれに引っ掛かったのよ。ここにいる『なんだ』はみんなそうよ。不景気で五百万に飛び付いた虫けらよ、だから本当の虫にしたの。なんだ虫おいで」
 老婆はなんだ虫を呼び付けました。
「なんだ、なんだ」
「ドンペリとグラス二つ」
 顔の整った男はなんだ、なんだと厨房に戻りました。
「許してください、五百万も要りません、ここから返してください。先輩と同じように新型ウィルスであぶれたホストを騙してここに送ります。この通りです」
 私は花嫁老婆の前で土下座しました。すると老婆は股を広げました。
「みなさん、新郎新婦のキッスです」
 司会が盛り上がっている宴席に声を上げました。客の歓声が大広間に轟きました。
「ほらキッスしろ」
 老婆はドレスを捲り上げ土下座の私の前に立ち上がりました。芋虫タトューが露わです。私の頭髪を掴んで股間に押し付けました。『キッス』の連呼が起きました。私は仕方なく老婆の陰部にキスをしました。酸っぱい、渋い、栗の花の臭いが私の吐き気を誘います。ここで吐いたら殺される。『ディープキッス』の連呼に代わりました。すると全ての客が立ち上がりました。太った女が両側に五十名です。こんな状況でなければ私のハーレムです。女達が立ち上がるとなんだ虫がパタパタパタと、場所が決まっているのでしょうか、ペンギンの子が迷わず親に寄り添う、そんなふうになんだ虫が客の元に着きました。女が立った姿勢のまま足を広げるとその間にさっと潜り込みました。女達のうめき声が大広間に溢れました。私は老婆の股間の中で泣いていました。ホストと言う職を選んで十二年、女を弄んで来た罰が当たったのでしょうか。この老婆は当時まだ還暦を過ぎたばかりでした。金に物を言わせて男を手玉に取っていたつもりでしょうか、私はその裏をかいて、勘違いをさせていたのです。『お金じゃなく、本心であなたにメロメロです』と金のためだけに、苦汁を舐め、肉汁を吸い、もう後戻りの出来ない女達の心を捻じ曲げていたのです。ここに来たのも金目当ての結婚です。五百万いただいてすぐにとんずらを決めるつもりでした。しかし最後の最後に騙されたのは私でした。ここはその女達の駆け込み寺だったのでしょうか。そして復讐を始めたのでしょう。老婆の股間から洪水のように愛液が流れています。居並ぶ客全員もなんだ虫の愛撫に蕩けた表情になっています。私は今がチャンスと逃げることを考えました。すると這いつくばる私の足元にビッキとバッキが私の身体を弄っていました。
「よいしょ」
 ビッキが私の右足を首にはめ込んでいます。バッキが左の足を首に差し込みました。いつの間にか私はなんだ虫になっていたのです。老婆も客も昇天しました。床は愛液で塗れました。川になり流れる先はあの風呂の浴槽でした。
「シャンパン」
 司会の女が言うとなんだ虫は股間から這い出てシャンパングラスをタワーにしました。それぞれのナンバー1、今やなんだ虫がシャンパンを届けます。
「それ、グイグイ、グイグイよし来い」
「グイグイ、グイグイよし来い」
 私等のお株を取られています。宴は朝まで続き、私はもう戻れない身体に変容しました。他のなんだ虫について行くと新しい墓が出来ていました。みんなに倣い足から墓に入りました。誰かが何かに気付くたびに頭を出します。
「なんだ」
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