秘められた願い~もしも10年後にまた会えたなら~

宮里澄玲

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 12月に入リ、街がクリスマスムード一色の中、本格的に引っ越しの作業に取り掛かった。
 マンションの契約は一応今月末までだが、早めに引き渡しをする予定だ。
 
 先日の家族の顔合わせの時に駿さんが合鍵をくれて、俺が留守の時でも自由に出入りしていいからと言われたので、それ以降自分で運べる荷物を少しずつ駿さんのところに運んでいる。
 今日は有休を取ったので1日時間が使える。まずは、持って行く本の選別作業だ。全部持ってこいと駿さんは言ってくれたが、さすがに多すぎる。本当に手元に残しておきたいもの以外は処分するか、実家に置かせてもらうことにした。本棚は駿さんの本も入れられるので持って行くことにし、他の家具類や電化製品などは必要なもの以外は全てリサイクル店に引き取ってもらう。
 
 1時間以上かかって、持って行くもの、処分するもの、実家行のものをそれぞれ段ボールに詰め終えて作業終了。
 コーヒーを淹れて一休みをしていると、駿さんからメールが来た。今日は珍しく早めに帰れそうなのでここに来てくれるという。しかも、泊まりたいって…。嬉しいけど、ずっと忙しかったので疲れてるんじゃ…。『今日は自宅でゆっくり休んでください』と返信するとすぐに『俺が会いたくてたまらないんだ、美沙絵は俺に会いたくないのか…迷惑か…』と返ってきたので慌てて『迷惑なんかじゃありません! 待ってます』と返してしまった。
 実は、最後に会ったのが2週間ほど前で、時間もほんの1時間ほど。私だって会いたくてたまらない…。無理してほしくないが、やっぱり嬉しさが込み上げてくる。
  
 18時頃に駿さんが来た。スーツ姿が相変わらずカッコいい…。
 「おかえりなさい。お仕事お疲れ様でした」
 中に入るなりギュッと抱きしめられた。
 「ただいま。ああ…やっと抱きしめられる…美沙絵が足りなくて飢え死にしそうだったよ…」
 「私も会いたかったです…」
 駿さんが私の首筋に鼻を近づけた。
 「…あの香水の香りだ…」
 「はい、毎日欠かさずつけています。駿さんと一緒にいられるような気がして…あ…っん…!」
 鼻先で首筋を撫でられた後に舌で同じところをなぞられ、声が出てしまった。
 「ダメです…! 今日は色々作業をして汚れていますし…」
 必死で抵抗すると駿さんが渋々体を離した。 
 「仕方ないな。もっと味わいたかったのに…」
 
 先にお風呂に入ってもらって、その間に作っておいた夕飯を温め直したり、仕上げをしたりした。
 部屋着姿で出てきた駿さんが背後から私を包み込んだ。
 「お先にありがとな。おかげで冷えた体が温まったよ」
 駿さんから私が使っているシャンプーやボディソープの香りがして何だか幸せな気分になった。
  
 時間があまりなかったので品数が多く作れなかったが、それでも駿さんは喜んで全部きれいに平らげてくれた。
 それから、後片付けをしておくから風呂に入ってこい、と言われたのでお言葉に甘えてそうさせてもらった。  
 
 お風呂から上がると駿さんは持参のノートパソコンで何か作業をしていた。
 「お待たせしました。まだお仕事残ってるんですか?」
 私の声に顔を上げて微笑むとパソコンを閉じて立ち上がった。
 「いや、ちょっと確認をしてただけだ。大丈夫だよ」
 それから部屋を改めて見渡した。
 「引っ越しの準備はどうだ? 見たところ随分進んでるみたいだが、全然手伝えなくて本当に申し訳ないな」
 「いいんですよ、もうすぐ終わりますし、駿さんは気にせずに学校の方に集中してください」
 「…ありがとう。でも今夜は美沙絵に集中するから」
 駿さんの手が私の頭を引き寄せると唇が重なった。ああ…久しぶりのキス…唇の感触にうっとりする…。 
 私の背中に回った手が中に入り、素肌を優しく撫でられると吐息が漏れた。唇が離れると、熱い眼差しにぶつかりドキッとする。その目は「私が欲しい」と訴えていた。
 私も、あなたが欲しい、と目に力を込めると、息を呑むような切羽詰まったような表情に変わった駿さんが私をサッと抱き上げ、べッドへ向かった。

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