秘められた願い~もしも10年後にまた会えたなら~

宮里澄玲

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 あぁ…体がダル重い…。
 疲労感を抱えながらやっと自分の部屋に着くと、荷物をドサッと床に置いてその場に座り込んだ。
 はぁ、これから料理をするのはちょっとしんどいかも…。もう、こうなったのも全部駿さんのせいなんだから!
 
 
 あの後、私の返事に大感激した駿さんに息が詰まるほどきつく抱きしめられて激しく唇を貪られると、サッと抱え上げられてベッドに運ばれ、抵抗する間もなく服をあっという間に脱がされて、たっぷりと愛されてしまったのだ。
 嘘つき…何が「次からは少々抑えるようにする」よ…。終わった後に平謝りされたが、またクタクタになって横たわっていた私とは逆に、駿さんは活気が漲っているように見えて、とても上機嫌に鼻歌交じりで仕事の準備をしていた…。
 駿さんが出かけるまでの間、少し話し合いをした。とりあえず先に入籍だけして、式などは落ち着いてからということでお互いに意見が一致した。そして入籍は、12月24日の土曜日に決まった。今年はカレンダーの日の並びがよく、学校は23日の金曜日が終業式なのだそうだ。年末までに2日間ほど勤務があるが、24日は完全にお休みとのこと。クリスマスイブだし、私も休みなので異論はなかった。
 新居は、いい物件が見つかるまではとりあえず駿さんの部屋に住むことになった。ファミリー向けの1LDKなので、キッチンやバスがゆったりした造りだし収納も多い。私の方は元々家具類や物が少なく、唯一多いのは本だけだが、全部ここに持ってきても大丈夫だと言われた。急に引っ越しをさせることになって本当に申し訳ないと謝られたが、私の部屋に2人で住むのはさすがに無理だ。住んでまだ1年も経っていなかったが、すぐに不動産屋さんに連絡をして事情を説明して退去することを伝えた。引っ越し屋さんの手配などは後にしよう。
 お互いの両親への報告だが、私の両親には駿さんがまた出向いて報告をすることになったが、駿さんのご両親にはまだお会いすることすらしていない…。
 「美沙絵、急で悪いが、明日のご両親の都合を聞いてもらえないか」と言うなり駿さんはどこかに電話をかけ始めたので、私も実家に電話をした。お父さんが出たので、明日駿さんと一緒に家に行ってもいいか確認したら大丈夫と言われたので、時間などはまた後で連絡すると言って電話を切った。駿さんもどうやらご両親と話をしているようだ。
 「…うん、ああ、分かった。今聞いてみるからちょっと待って」と言うと私の方を見た。
 「ご両親の都合はどうだった?」
 「明日、大丈夫だそうです。時間はまた後で連絡すると伝えました」
 頷いた駿さんはまた話し始めた。
 「もしもし、あちらは大丈夫だそうだ。…うん、ああ、そうだな…11時までにマンションに来てくれる? …ああ、それはそっちに任せるから。…うん、分かった、言っておく。じゃあ、明日よろしくお願いします」
 電話を終えると駿さんが言った。
 「明日、俺の両親も一緒にご挨拶に伺うことになったが構わないか? その前にここに寄って先に美沙絵に会いたいって」
 「えっ!?」
 「だから、ご両親の家に行く前に俺の両親と会ってくれないか? ここで落ち合ってどこかで昼を一緒に食べようと言っていた」 
 「…分かりました。では、実家に行くのはまた14時頃になりますか」
 「そうだな。あ、俺からご両親に伝えたいから番号を教えてほしい」
 実家の番号を教えると、すぐに電話をかけた。
 「おはようございます、海堂です。先日はお時間をいただきまして誠にありがとうございました。…はい、実はご報告したいことがありまして…」
 それから本題に移った。しばらく話をした後、電話を切った。
 「お父さんと話をした。俺の両親も一緒と聞いて驚いていたが、それで何となく察したみたいだ。でも大丈夫だったよ。お母さんにも言っておくって」
 「ありがとうございました。それよりも、どうしよう…もう既に緊張しています、駿さんのご両親にお会いするの…」
 駿さんが微笑みながら私の頭を撫でた。
 「大丈夫だ。昨日も話した通り、反対なんてしていない。ただ顔合わせをするだけだ。特におふくろが美沙絵に会えるのを楽しみだって、さっきも言っていたよ。だから心配するな」   
 「…そうですか…分かりました。よろしくお願いします」

 駿さんが車で家まで送ると言ってくれたが、学校に行く時間が迫っていたのと、スーパーに寄って買い物をしなければならなかったので、マンションのエントランスで別れた。

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