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 「もし、お前の願いが10年後の今もまだ有効だったら…直接お前の口から聞かせてくれないか…?」
 
 えっ…!? 先生の言葉に一瞬耳を疑う。
 
 本当に、本当に言ってもいいの…? 
 正直、まだ少し怖かった。
 でも…ほとんど最後まで手紙を読まれてしまったし、当時の気持ちも知られてしまった。そもそも今日先生に告白するつもりでいたんだ。どんな結果になろうと覚悟を決めていた。
 だから、迷う必要なんてないんだ。

 軽く俯くと胸に手を当て目を閉じて気持ちを落ち着かせると、顔を上げた。
 先生は黙ったままじっと待っている。
 
 私は手紙を開かなかった。だって見なくたって完璧に言えるから。
 頭の中で手紙の続きをなぞりながら、私は口を開いた。

 "もしも…もしも10年後に先生と再会することができたなら…"
 
 「もしも…もしも10年後に先生と再会することができたなら…」

 "もしも私の想いが10年後も変わっていなかったら…"
 
 「もしも私の想いが10年後も変わっていなかったら…」

 "先生に伝えたいことがあるのです。どうか聞いてください。これが私のお願いです"
 
 「先生に伝えたいことがあるのです。どうか聞いてください。これが私のお願いです」

 先生は静かに頷いた。
 私は、フッ…と息を吐くと、
 
 「海堂駿さん」
 
 初めて先生をさん付けで呼んだ。
 その瞬間、先生が目を見開いた。
 少し唇が震えたが、先生から目をそらさずに、想いを込めてゆっくりと告げた。
 
 「10年後の今も…あなたのことが…好きです」 

 目から涙が一筋こぼれた。

 「そして…私がこれまで好きになったのは、ただ1人…。海堂駿さん、あなただけです」


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