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しおりを挟む食事が済んだので、ハーブティとチーズケーキをお願いした。
先生はカモミールティーを飲むのは初めてだと言い、カップを顔に近づけると、飲む前にまず香りを堪能していた。
「いい香りだな…。りんごに似た香りがする」
「そうですね。フルーティーな甘い香りですよね。少し苦みや渋みを感じるかもしれませんが、飲みやすいと思いますよ」
先生はカップに口をつけると、香りと味を口の中でじっくりと確かめるようにしながら飲んでいた。
「うん、そんなにクセもなく飲みやすい。それにこの香りと味に癒される気がする…」
「カモミールには、リラックス効果や安眠効果や、高ぶった気持ちを落ち着かせる効果があるんです」
先生が苦笑いしてポツリと何か呟いた。
「今の俺にピッタリのお茶だな…」
「えっ?」
「いや、何でもない。そっちはローズヒップだっけ?」
「はい。これはバラの実のお茶で、少し酸味があって、ビタミンCが多く、美肌効果や免疫力向上の作用があって、食物繊維も豊富なので女性向きのお茶といわれています」
「そうなのか。まあ結城はそれを飲まなくても十分綺麗だが」
さらっと言われたその一言に、心臓を撃ち抜かれたような衝撃を受け、ブワッと顔が赤くなった。咄嗟に俯いてチーズケーキを口に運んだが、味も分からなくなるくらい気が動転した。
すると、先生が静かな口調で言った。
「…結城、後でおまえに伝えたいことがあるんだ。俺の話を聞いてもらえるだろうか…?」
顔を上げると先生が真剣な顔で私を見つめている。余程何か大事な話なのだろうと思い、私は頷いた。
デザートも食べ終わり、店を出る前にメイクを直そうと化粧室に行った。席に戻ると先生がいなかったので、先生もトイレかなと思い、その間に会計を済ませてしまおうとレジに行くと、もう支払いは済んでいて先生は外で待っているとのこと。驚いて慌てて金額を聞いてから「ごちそうさまでした」とあいさつをすると、マスターがカウンターの中から出てきて「ありがとうございました」と言いながらニヤニヤしながら意味ありげにウインクをした。もう、マスター、絶対面白がってる…。
私は先生の元に急いだ。
「お会計をしていただきましてありがとうございました。でも、これは私からのお礼なので全て私に支払わせてください」
と言い、財布からお金を出すと、先生の大きな手が私の手を抑えた。
先生はゆっくりと首を横に振った。
「お礼ならもう十分過ぎるほど貰った。それに、これからお前の手料理をごちそうになるんだから、それはしまっておけ」
そう言うと優しく微笑んだ。その微笑みに何も言えなくなってしまった。それに、こんなところで押し問答したくなかったので、素直にお金を財布に戻した。
「分かりました。ありがとうございます。ごちそうさまでした」
「いや、俺の方こそ本当にありがとう」
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