秘められた願い～もしも10年後にまた会えたなら～

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　夜８時過ぎ、この時間なら大丈夫かなと思い、先生の電話番号をタップしようとしたその時、メールの受信音が鳴った。驚いて、スマホを落としそうになった。恐る恐る画面を見ると…先生からだ！ 待ちに待った返事がやっと来た…！　　
　一度深呼吸をして心を落ち着かせてから、メールを開いた。

　『海堂です。返信が遅くなって申し訳ない。　　
　　捻挫が治って安心した。よかった。
　　今週の土曜日なら特に予定は入っていないので
　　この日でよければ大丈夫だ』　　

　飛び跳ねてしまいそうなくらい嬉しかった。今週の土曜日…！ もちろん大丈夫だ。
　どうしよう、ドキドキしちゃう…！ 先生とデート…いやいや、勘違いしちゃダメ、ただお礼のプレゼントを渡すだけなんだから！
　
　すぐにでも返信したかったが、あまりにも早すぎるといかにも「待ってました！」という感じで恥ずかしかったので、少し時間を置いてからにした。　

　『結城です。お忙しいところご返信いただきましてありがとうございます。
　　私も土曜日で大丈夫です。
　　先生のご都合に合わせますので、ご希望のお時間をお知らせください』

　その後、何度かやり取りが続き、土曜日の11時に駅で待ち合わせをして、ランチをすることに決まった。
　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　
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　ああ…とうとう返信をしてしまった。もう後戻りできない。
　
　直前まで俺は悩みに悩んだ。
　もう結城に対する気持ちはハッキリしている。この想いを消すことはできなくなっていた。だが、これ以上あいつを好きになってまた辛い思いをするくらいなら、会わない方がいいのではないかとも思っていた。何も始まっていない今ならまだ引き返せると…。
　だが、結局、また会いたいという気持ちにどうしても抗うことができなかった。あいつと一緒にいる心地よさをまた味わいたかった。
　
　あいつはこれまで付き合ってきた女性たちとは明らかに違う。
　この前、10年ぶりに再会して久しぶりに話した時から感じていた。まだ20代前半なのに落ち着いていて、しっかりとした考えを持ち、知性的で、彼女の話はどれも俺の知的好奇心を満たすものばかりだった。もちろん当時の思い出話もたくさんしたが、もう元教え子という感覚は薄れていて、対等の大人同士のように思っている。それに内面だけじゃなく、20代の若い女の子らしい可愛さや可憐さも十分にあって…。俺にとって理想的な女性が結城だったのだ。彼女以上に素晴らしい女性に今後巡り逢えるとは思えなかった。
　
　考え抜いて、土曜日に自分の想いを伝えようと決めた。彼女が受け入れてくれるかどうか分からないが、とにかくケリをつけようと思った。