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第八章 貴き血の義務
七
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交通安全部特務隊とエランデューア家の技術開発班で交互に働いているとさまざまな噂を耳にする。大半はたわいないでたらめだが、わずかに真実が含まれている。トリーンはその見分けがつくようになってきた。
とは言っても判断のつかないものもあった。技術開発班の行く先もそうだった。エランデューア家は王室に移譲するつもりだという。トリーンは加わらないが、休憩時などはよるとさわるとその話をしていた。
「……この間お忍びで見学に来たの、王室の方らしいよ……」
「……報告書、中央にも提出されてるらしい……」
「……主任、最近顔見せないだろ。エランデューア城に呼ばれてるからだって……」
だれかが咳払いをすると話が止んだ。その主任がやってきたのだった。助手に巻いた書類をもたせている。納まりが悪く、両腕からこぼれそうだった。
「休憩中済まないが、全員注目。いろいろ噂話があるようだが、技術開発班の今後と、それに伴う諸君の所属について話がある。ちょっと時間をくれ」
真面目くさった物言いで移譲が伝えられた。だれも驚かなかった。噂はこのために意図的に流されたんじゃないかと思うほど内容に予想外の事実はなかった。
助手の抱えていた書類は王室からの命令書だった。開発班そのものが帝国大学付属になり、設備もろとも帝国首都オウグルーム市に引っ越すので、所属と勤務地変更を命令していた。一応拒否できるようになってはいたが、あまりに不利になるので全員変更を了承して受け取った。
「トリーン、君の処遇だが、王室は今後兼務を認めない。どうする? このまま特務隊員か研究所の民間人協力者か」
「選べるんですか」
主任は首を振った。この緑の瞳は苦手だ。
「ではなぜお聞きに?」
「済まない。わたしが知りたかった。君の心はどちらにあるんだろうって」
「それにはなんとありますか」
巻き癖のついた書類には帝国大学の紋が押されていた。
「分かりました。わたしにとっては前いたところに戻るだけです。お受けします」
とは言っても判断のつかないものもあった。技術開発班の行く先もそうだった。エランデューア家は王室に移譲するつもりだという。トリーンは加わらないが、休憩時などはよるとさわるとその話をしていた。
「……この間お忍びで見学に来たの、王室の方らしいよ……」
「……報告書、中央にも提出されてるらしい……」
「……主任、最近顔見せないだろ。エランデューア城に呼ばれてるからだって……」
だれかが咳払いをすると話が止んだ。その主任がやってきたのだった。助手に巻いた書類をもたせている。納まりが悪く、両腕からこぼれそうだった。
「休憩中済まないが、全員注目。いろいろ噂話があるようだが、技術開発班の今後と、それに伴う諸君の所属について話がある。ちょっと時間をくれ」
真面目くさった物言いで移譲が伝えられた。だれも驚かなかった。噂はこのために意図的に流されたんじゃないかと思うほど内容に予想外の事実はなかった。
助手の抱えていた書類は王室からの命令書だった。開発班そのものが帝国大学付属になり、設備もろとも帝国首都オウグルーム市に引っ越すので、所属と勤務地変更を命令していた。一応拒否できるようになってはいたが、あまりに不利になるので全員変更を了承して受け取った。
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「選べるんですか」
主任は首を振った。この緑の瞳は苦手だ。
「ではなぜお聞きに?」
「済まない。わたしが知りたかった。君の心はどちらにあるんだろうって」
「それにはなんとありますか」
巻き癖のついた書類には帝国大学の紋が押されていた。
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