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第六章 夢覺ませ
八
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見張りを置いて兵たちは眠った。闘ったその場での休息は避けたかったが、ここは森が途切れた草地になっており、地面も平らだった。疲労の極みに達した兵たちにはもう移動する気力がなかった。
夜中、マールが見張りを交替した。水を一口飲み、ふやかしておいた乾燥麦餅を夜食にする。ちょっと寝ただけだが疲れはだいぶましになっていた。草地に寝転がる隊の皆を見渡し、月明りで透かすように森を見、耳をすませたが、夜の生き物の気配以外感じられなかった。
草地の外れの木にもたれる。なにかが心に引っかかっていた。母茸を倒したというのに見落としがある気がしてならない。
また麦餅と水を一口。闘いを反芻する。まさかいま頃になって母茸を退治するとは思っていなかった。前の時もそうだったが、核を破壊するときの手ごたえは悪くない。細かく思い返してみても倒し方や後処理に問題はない。あれで再生するんなら俺にはどうしようもない。灰からの復活なんて神話かおとぎ話だ。
ならなにが気になるんだろう。見上げると月が白く浮かんでいた。他人は青味がかってるとか、緑がかってるなどと言うが、マールにとって月は白く輝く天の城だった。
白、が頭のなかで結びつく。母茸の体液にまみれた兵の手でつかみ上げられたサンダル。右足だった。どこで食われたんだろう。そもそもあんなサンダルで旅はあり得ない。隊を組んでいたのは確実だが、噂すら伝わってないんだから全滅したんだろう。でも、サンダル以外の残り物はなかった。鬼が食ってしまった? いや、母茸を差し置いてそれはない。
サンダル履きで、自分は歩かず荷馬車にでも乗っていたところを襲われた? あれ、右?
翌朝、クロウに話すと、あの兵を探してサンダルを持ってきてくれた。
「確かにトリーンははだしだった。右。でもこのサンダルかどうかまでは覚えてない」
それからディガン、ペリジーと拡がり、全員が知る所となった。クロウはサンダルを返しながら言う。
「これはトリーンの物である可能性があります。経緯はまったく不明ですが見てもらったほうがいいでしょう」
「分かりました。隊長と相談します」
結果、ディガンたちが持っていった方が説明もできるので、一時任務をはずれ、サンダルを持って帰還することとなり、その旨の臨時命令書が作られた。
「ではお願いします」
渡されたサンダルと書類を背嚢に入れ、ディガンはうなずいた。四人はすぐ行動に移った。
夜中、マールが見張りを交替した。水を一口飲み、ふやかしておいた乾燥麦餅を夜食にする。ちょっと寝ただけだが疲れはだいぶましになっていた。草地に寝転がる隊の皆を見渡し、月明りで透かすように森を見、耳をすませたが、夜の生き物の気配以外感じられなかった。
草地の外れの木にもたれる。なにかが心に引っかかっていた。母茸を倒したというのに見落としがある気がしてならない。
また麦餅と水を一口。闘いを反芻する。まさかいま頃になって母茸を退治するとは思っていなかった。前の時もそうだったが、核を破壊するときの手ごたえは悪くない。細かく思い返してみても倒し方や後処理に問題はない。あれで再生するんなら俺にはどうしようもない。灰からの復活なんて神話かおとぎ話だ。
ならなにが気になるんだろう。見上げると月が白く浮かんでいた。他人は青味がかってるとか、緑がかってるなどと言うが、マールにとって月は白く輝く天の城だった。
白、が頭のなかで結びつく。母茸の体液にまみれた兵の手でつかみ上げられたサンダル。右足だった。どこで食われたんだろう。そもそもあんなサンダルで旅はあり得ない。隊を組んでいたのは確実だが、噂すら伝わってないんだから全滅したんだろう。でも、サンダル以外の残り物はなかった。鬼が食ってしまった? いや、母茸を差し置いてそれはない。
サンダル履きで、自分は歩かず荷馬車にでも乗っていたところを襲われた? あれ、右?
翌朝、クロウに話すと、あの兵を探してサンダルを持ってきてくれた。
「確かにトリーンははだしだった。右。でもこのサンダルかどうかまでは覚えてない」
それからディガン、ペリジーと拡がり、全員が知る所となった。クロウはサンダルを返しながら言う。
「これはトリーンの物である可能性があります。経緯はまったく不明ですが見てもらったほうがいいでしょう」
「分かりました。隊長と相談します」
結果、ディガンたちが持っていった方が説明もできるので、一時任務をはずれ、サンダルを持って帰還することとなり、その旨の臨時命令書が作られた。
「ではお願いします」
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