36 / 90
第四章 錆色に染まる道
六
しおりを挟む
トリーンは字がうまくなった。筆記体は流れるようだ。先生もほめてくれる。
みなさんお元気ですか。こちらは変わりありません。べんきょうして、町江津農力(むずかしいつづりです。あってますか?)についてしらべられる毎日です。
べんきょうはだんだん面白くなってきました。このあいだ、さんすうのしけんで満点だったのでごほうびとして夕食にお菓子がつきました。あまくてふんわりしていてとてもおいしかったです。みんなで食べたらもっとおいしかったと思います。
でも、しらべられるのはあまりいいきもちではありません。じろじろ見られて、あれこれ聞かれて、まじめな顔ばかりで、みなさんみたいにわらいません。
さて、いつも聞かれるトリストゥルム、という名前についてですが、すこしわかりました。ずっとむかしの神様につかえていた人か鳥のまもののことみたいです。でも、わたしにつけた意味はわかりません。もうちょっとしらべてみようと思います。
ペリジーさん、会毛意(つづりあってますか?)のべんきょう進んでいるとのこと。がんばってください。おみせをもてるといいですね。
マールさん、いつもやさしい言葉をありがとう。文字で読んでいるのにこえが聞こえてくるようです。なぞ、わからなくてごめんなさい。人に聞いてもあまりしらべてくれないし、としょかんの本はむずかしいのです。
ディガンさん、まえのお手紙でわるものを退治したことを書いてくれましたが、わたしにはこわく感じられました。もっとあんぜんな、まちのなかのお仕事はないのでしょうか。みなさんもそうしてくれればいいと思います。
クロウさん、言ってくれたこと、すこしづつわかるようになってきました。これもべんきょうのおかげです。もっとべんきょうしてじぶんでかんがえて動けるようになったらここを出たいです。そして、わたしの力を帝国のために役立てたいと思います。
それではみなさん、おなかをこわしたり、かぜをひいたりしないように、夜はちゃんと暖かくしてください。
道行きのご安全を
トリーン(・トリストゥルム)
もう一度読み返し、日付を入れて封をした。宛先はもう書きなれて指が覚えている。大学の事務所に出しておけばほかの手紙とおなじように配達される。返事が来るのは月がもう一巡りする頃だろうか。
トリーンは空を見上げた。青い空に白い雲が刷毛で乱暴になすったように筋を引いている。両腕を上げて羽ばたいてみた。飛べたらいいのにな。
そうやっている自分が急に恥ずかしくなった。だれも見てないけど、こどもっぽすぎる。上げた手を頭にやる。編んでもらった髪を、歪んでもいないのに直すようになでた。
みなさんお元気ですか。こちらは変わりありません。べんきょうして、町江津農力(むずかしいつづりです。あってますか?)についてしらべられる毎日です。
べんきょうはだんだん面白くなってきました。このあいだ、さんすうのしけんで満点だったのでごほうびとして夕食にお菓子がつきました。あまくてふんわりしていてとてもおいしかったです。みんなで食べたらもっとおいしかったと思います。
でも、しらべられるのはあまりいいきもちではありません。じろじろ見られて、あれこれ聞かれて、まじめな顔ばかりで、みなさんみたいにわらいません。
さて、いつも聞かれるトリストゥルム、という名前についてですが、すこしわかりました。ずっとむかしの神様につかえていた人か鳥のまもののことみたいです。でも、わたしにつけた意味はわかりません。もうちょっとしらべてみようと思います。
ペリジーさん、会毛意(つづりあってますか?)のべんきょう進んでいるとのこと。がんばってください。おみせをもてるといいですね。
マールさん、いつもやさしい言葉をありがとう。文字で読んでいるのにこえが聞こえてくるようです。なぞ、わからなくてごめんなさい。人に聞いてもあまりしらべてくれないし、としょかんの本はむずかしいのです。
ディガンさん、まえのお手紙でわるものを退治したことを書いてくれましたが、わたしにはこわく感じられました。もっとあんぜんな、まちのなかのお仕事はないのでしょうか。みなさんもそうしてくれればいいと思います。
クロウさん、言ってくれたこと、すこしづつわかるようになってきました。これもべんきょうのおかげです。もっとべんきょうしてじぶんでかんがえて動けるようになったらここを出たいです。そして、わたしの力を帝国のために役立てたいと思います。
それではみなさん、おなかをこわしたり、かぜをひいたりしないように、夜はちゃんと暖かくしてください。
道行きのご安全を
トリーン(・トリストゥルム)
もう一度読み返し、日付を入れて封をした。宛先はもう書きなれて指が覚えている。大学の事務所に出しておけばほかの手紙とおなじように配達される。返事が来るのは月がもう一巡りする頃だろうか。
トリーンは空を見上げた。青い空に白い雲が刷毛で乱暴になすったように筋を引いている。両腕を上げて羽ばたいてみた。飛べたらいいのにな。
そうやっている自分が急に恥ずかしくなった。だれも見てないけど、こどもっぽすぎる。上げた手を頭にやる。編んでもらった髪を、歪んでもいないのに直すようになでた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる