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第三章 空はだれの物?
十
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帝国大学の暮らしは規則正しく、決まりごとは多い。午前は勉強、午後は超越能力の実験に協力。服はもらえるし、寝床は暖かくてきれいで乾いている。食事は塩を惜しみなく使い、肉や魚がたくさん。
でも、いつも一人だった。
それに、大学の敷地から出てはいけない。出てもなぜかすぐに気づかれ、やさしく、しかし断固として連れ戻される。
トリーンは空を見上げ、あの四人とのごく短い経験を思い出していた。特に、焚き火を囲んだ食事を。
この前の手紙でペリジーさんは自分の勉強の進み具合を教えてくれた。よその国から伝わってきた最新式の簿記を学ばせてもらっているらしい。借方とか貸方とか訳が分からないとぼやいていた。トリーンは比の計算がよく分からない。なに対なに、なんて想像できない。
それと、トリストゥルムについても分からない。大学でそう名乗った時、係の人は妙な顔をしてほかの人たちと相談し、もうそれは使わない方がいいと言った。だからいまではトリーンとしか名乗らないようにしている。
ペリジーさんやみんなのことを思い出す。別れるとき、クロウさんがした手振りをやってみる。あの時はなんのことやら、だったけれど、こっちに来て軍人さんが似た手振りをやっていたので聞いたら万事順調の意味とのことだった。
そして、言ってくれた言葉を口調もそのままに思い出した。この世じゃだれもがだれもを利用してる。だからこそ君は自分について知るべきだと思う。いまのままじゃ君は起きた出来事に振り回されてるだけだ。それはあんまりだからな
知るべき、という部分にトリーンはすがっている。毎日起きる物事を見て聞いて考えている。そうすれば振りまわされる日々が変わるかもしれない。
肩まで伸びた髪を払う。世話をしてくれる人は、もうちょっと伸ばしてお嬢ちゃんらしく編みましょう、と言う。それがいまの楽しみだった。
また空を見上げる。このおなじ空の下で、あのおじさんたちも暮らしている。この世のどんな人も、王様だって空の下だ。
なら、空はだれの物なんだろう?
でも、いつも一人だった。
それに、大学の敷地から出てはいけない。出てもなぜかすぐに気づかれ、やさしく、しかし断固として連れ戻される。
トリーンは空を見上げ、あの四人とのごく短い経験を思い出していた。特に、焚き火を囲んだ食事を。
この前の手紙でペリジーさんは自分の勉強の進み具合を教えてくれた。よその国から伝わってきた最新式の簿記を学ばせてもらっているらしい。借方とか貸方とか訳が分からないとぼやいていた。トリーンは比の計算がよく分からない。なに対なに、なんて想像できない。
それと、トリストゥルムについても分からない。大学でそう名乗った時、係の人は妙な顔をしてほかの人たちと相談し、もうそれは使わない方がいいと言った。だからいまではトリーンとしか名乗らないようにしている。
ペリジーさんやみんなのことを思い出す。別れるとき、クロウさんがした手振りをやってみる。あの時はなんのことやら、だったけれど、こっちに来て軍人さんが似た手振りをやっていたので聞いたら万事順調の意味とのことだった。
そして、言ってくれた言葉を口調もそのままに思い出した。この世じゃだれもがだれもを利用してる。だからこそ君は自分について知るべきだと思う。いまのままじゃ君は起きた出来事に振り回されてるだけだ。それはあんまりだからな
知るべき、という部分にトリーンはすがっている。毎日起きる物事を見て聞いて考えている。そうすれば振りまわされる日々が変わるかもしれない。
肩まで伸びた髪を払う。世話をしてくれる人は、もうちょっと伸ばしてお嬢ちゃんらしく編みましょう、と言う。それがいまの楽しみだった。
また空を見上げる。このおなじ空の下で、あのおじさんたちも暮らしている。この世のどんな人も、王様だって空の下だ。
なら、空はだれの物なんだろう?
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