凡庸魔法使いと超越能力少女のやっかいごと以上この世の終わり未満の冒険

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第三章 空はだれの物?

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「なに、これ?」
 最初に気づいたのはペリジーだった。山道の脇のあちこちにブレード家の紋をつけてまとめられた屋根用の藁や木材、そのほか建築資材と思われるものが積み重ねてあった。
「きのうは暗くて分からなかったが、隠居所用だな」
 マールは見まわし、なにか考えている。
「この資材と量じゃ別荘ってわけじゃなさそうだ。庵だな。贅沢な家じゃない。オウルーク・ブレードはほんとに隠居するつもりなんだ。静かにつつましく暮らそうってわけだ」
「もう俺たちの知ったことじゃない。準備しろよ」
 ディガンが急かす。クロウは峰に沿って遠くの方を見ていた。
「なんだ、どうした?」
「いや、きのうちょっとだけ鬼の気を感じたんだ。すぐに消えたから放っといたけど」
「そうか。なら出発だ」

 建築資材を横目に見て山道を下る。覆いかぶさった木々が日陰を作り、心地よかった。
 道の前の方、資材の陰から男が一人出てきて手を上げた。恰好はふつうだったが、きょろきょろしている。
「小僧、本をしまえ、止まるなよ」
 後ろからディガンが小声で言い、ペリジーは言われた通りにした。
「いい日和だね。兄さん」
 マールがすれ違う前に早めに大声を出した。
「ちょっと乗せてってくれないか。急病人だ」
「兄さんが? 元気そうじゃないか」
「女房だ。待っててくれ。連れてくる」
「悪いが、力になれない。急ぎでな。自分でかついでいきな」
「止まれ!」
 もう一人出てきた。女じゃない。さらに気配がしたので振り向くと後ろに三人。挟まれた。
 クロウは合図を送り、邪気はないと知らせた。
 ディガンがあきれたように頭を振った。
「兄さん方、いまなら見逃してやる。なにもせずに行かせろ」
 男たちは予想外の反応に一瞬戸惑ったが、大声をあげて襲ってきた。

 その瞬間、後方の三人は顔を焼かれていた。死にはしないが視力を失った。倒れ、痛みにうめいている。
 驚き、おびえた前の二人は、その躊躇が命取りとなった。マールとペリジーが駆け寄って太ももを刺し、蹴り転がした。そのまま尋問を行う。

「隊長、こいつらただの賊だぁ。書き付けもなにも持ってなーい」
 ペリジーが言い、クロウも同様に言った。
「こっちも小僧とおなじ。未熟な輩だ。楽にしてやりましょう」
 ディガンが手を上げると、そいつらの刃物を使って首をはねた。死骸は警告のために道の脇に転がしておく。
「報告はどうします? ここは山だから、王室派遣官?」
 報告先は複数考えられるが、だれの領地でもない山の場合、王室が妥当と言えた。
「うん、それがいいだろう。おやじ、頼んだぞ」

「しっかし、どういうつもりだったんだろ。俺たち見りゃ素人じゃないくらい分かるだろうに」
 ペリジーが本を取りだし、馬を引きながら言った。マールが答える。
「つもりなんてない。ああいう奴らはああいう生き方しかできねぇのさ」
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