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第三章 空はだれの物?
九
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「なに、これ?」
最初に気づいたのはペリジーだった。山道の脇のあちこちにブレード家の紋をつけてまとめられた屋根用の藁や木材、そのほか建築資材と思われるものが積み重ねてあった。
「きのうは暗くて分からなかったが、隠居所用だな」
マールは見まわし、なにか考えている。
「この資材と量じゃ別荘ってわけじゃなさそうだ。庵だな。贅沢な家じゃない。オウルーク・ブレードはほんとに隠居するつもりなんだ。静かにつつましく暮らそうってわけだ」
「もう俺たちの知ったことじゃない。準備しろよ」
ディガンが急かす。クロウは峰に沿って遠くの方を見ていた。
「なんだ、どうした?」
「いや、きのうちょっとだけ鬼の気を感じたんだ。すぐに消えたから放っといたけど」
「そうか。なら出発だ」
建築資材を横目に見て山道を下る。覆いかぶさった木々が日陰を作り、心地よかった。
道の前の方、資材の陰から男が一人出てきて手を上げた。恰好はふつうだったが、きょろきょろしている。
「小僧、本をしまえ、止まるなよ」
後ろからディガンが小声で言い、ペリジーは言われた通りにした。
「いい日和だね。兄さん」
マールがすれ違う前に早めに大声を出した。
「ちょっと乗せてってくれないか。急病人だ」
「兄さんが? 元気そうじゃないか」
「女房だ。待っててくれ。連れてくる」
「悪いが、力になれない。急ぎでな。自分でかついでいきな」
「止まれ!」
もう一人出てきた。女じゃない。さらに気配がしたので振り向くと後ろに三人。挟まれた。
クロウは合図を送り、邪気はないと知らせた。
ディガンがあきれたように頭を振った。
「兄さん方、いまなら見逃してやる。なにもせずに行かせろ」
男たちは予想外の反応に一瞬戸惑ったが、大声をあげて襲ってきた。
その瞬間、後方の三人は顔を焼かれていた。死にはしないが視力を失った。倒れ、痛みにうめいている。
驚き、おびえた前の二人は、その躊躇が命取りとなった。マールとペリジーが駆け寄って太ももを刺し、蹴り転がした。そのまま尋問を行う。
「隊長、こいつらただの賊だぁ。書き付けもなにも持ってなーい」
ペリジーが言い、クロウも同様に言った。
「こっちも小僧とおなじ。未熟な輩だ。楽にしてやりましょう」
ディガンが手を上げると、そいつらの刃物を使って首をはねた。死骸は警告のために道の脇に転がしておく。
「報告はどうします? ここは山だから、王室派遣官?」
報告先は複数考えられるが、だれの領地でもない山の場合、王室が妥当と言えた。
「うん、それがいいだろう。おやじ、頼んだぞ」
「しっかし、どういうつもりだったんだろ。俺たち見りゃ素人じゃないくらい分かるだろうに」
ペリジーが本を取りだし、馬を引きながら言った。マールが答える。
「つもりなんてない。ああいう奴らはああいう生き方しかできねぇのさ」
最初に気づいたのはペリジーだった。山道の脇のあちこちにブレード家の紋をつけてまとめられた屋根用の藁や木材、そのほか建築資材と思われるものが積み重ねてあった。
「きのうは暗くて分からなかったが、隠居所用だな」
マールは見まわし、なにか考えている。
「この資材と量じゃ別荘ってわけじゃなさそうだ。庵だな。贅沢な家じゃない。オウルーク・ブレードはほんとに隠居するつもりなんだ。静かにつつましく暮らそうってわけだ」
「もう俺たちの知ったことじゃない。準備しろよ」
ディガンが急かす。クロウは峰に沿って遠くの方を見ていた。
「なんだ、どうした?」
「いや、きのうちょっとだけ鬼の気を感じたんだ。すぐに消えたから放っといたけど」
「そうか。なら出発だ」
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道の前の方、資材の陰から男が一人出てきて手を上げた。恰好はふつうだったが、きょろきょろしている。
「小僧、本をしまえ、止まるなよ」
後ろからディガンが小声で言い、ペリジーは言われた通りにした。
「いい日和だね。兄さん」
マールがすれ違う前に早めに大声を出した。
「ちょっと乗せてってくれないか。急病人だ」
「兄さんが? 元気そうじゃないか」
「女房だ。待っててくれ。連れてくる」
「悪いが、力になれない。急ぎでな。自分でかついでいきな」
「止まれ!」
もう一人出てきた。女じゃない。さらに気配がしたので振り向くと後ろに三人。挟まれた。
クロウは合図を送り、邪気はないと知らせた。
ディガンがあきれたように頭を振った。
「兄さん方、いまなら見逃してやる。なにもせずに行かせろ」
男たちは予想外の反応に一瞬戸惑ったが、大声をあげて襲ってきた。
その瞬間、後方の三人は顔を焼かれていた。死にはしないが視力を失った。倒れ、痛みにうめいている。
驚き、おびえた前の二人は、その躊躇が命取りとなった。マールとペリジーが駆け寄って太ももを刺し、蹴り転がした。そのまま尋問を行う。
「隊長、こいつらただの賊だぁ。書き付けもなにも持ってなーい」
ペリジーが言い、クロウも同様に言った。
「こっちも小僧とおなじ。未熟な輩だ。楽にしてやりましょう」
ディガンが手を上げると、そいつらの刃物を使って首をはねた。死骸は警告のために道の脇に転がしておく。
「報告はどうします? ここは山だから、王室派遣官?」
報告先は複数考えられるが、だれの領地でもない山の場合、王室が妥当と言えた。
「うん、それがいいだろう。おやじ、頼んだぞ」
「しっかし、どういうつもりだったんだろ。俺たち見りゃ素人じゃないくらい分かるだろうに」
ペリジーが本を取りだし、馬を引きながら言った。マールが答える。
「つもりなんてない。ああいう奴らはああいう生き方しかできねぇのさ」
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