凡庸魔法使いと超越能力少女のやっかいごと以上この世の終わり未満の冒険

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第二章 歪んだ歯車

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 街に向かう途中だった、とペリジーは口を開く。岩陰に潜んでいてあっという間に囲まれたと話した。くやしそうなのをマールがなだめてから言う。
「さあ、俺たちこれからどうする? 契約上は荷を届けないと、だけどな」
 最初に返事をしたのはクロウだった。
「確かに、ここまで来たら戻るよりそっちの方が早い。とにかく街に入らなきゃ。人目のある方がかえって安全だろう」
 ディガンがトリーンの肩に手を置いて言う。
「そうだな。マールが言ってたが、王室派遣官に訴え出るのがいいだろう。この子も含めて」
 黙ったままただうなずいたのはペリジー。人質にされていたのがまだこたえているようだった。
「で、それはそれとして、なにを聞きだした?」
 目を向けられたディガンはトリーンを見て首を振った。
「後だ」

「いいえ。教えてください。お願いします」
 トリーンが前のめりになった。
「わたしのせいでみなさんを困らせてるから、なんでも知りたいんです」
「お嬢ちゃん、落ち着いて。聞いて楽しい話じゃない。それと、いろいろあったけど君のせいじゃないから」
「ディガン、話してくれ。この子も聞く権利はある」
 そう言った後、クロウはトリーンが自分を見ているのに気づき、目を合わせて安心させるようにほほ笑んだ。
「おじさんたちは自分が一番大事でね。生き残るためには君だって利用する。敵が小僧との交換を持ちかけたらすぐ君の周りに集まっただろ。あれは守ろうってんじゃない。目当てが君ならそばにいれば攻撃される恐れは少ないって踏んだんだ」
 二人はクロウを睨んだ。しかし、それは違う、とは言えなかった。ペリジーは皆の様子を見まわしている。
「そして俺は君の能力を利用した。地中を通したり精密誘導したりと自信なかったからね。この世じゃだれもがだれもを利用してる。だからこそ君は自分について知るべきだと思う。いまのままじゃ君は起きた出来事に振り回されてるだけだ。それはあんまりだからな」

 火傷の痕を掻き、ディガンが話しはじめた。言葉を選びながらなので時間がかかった。
 奴らの目的はトリー。これはまちがいない。でもローテンブレード家の差し金じゃない。ややこしいが、そもそもトリーを飛び領地に移すのはローテンブレード家の計画にあった。でも、こんな形で運び、山中で犬鬼に襲わせ、人質まで取ったのはブレード家の一派だった。そんな内容だった。
「傍系だよ。オウルーク・ブレード」
 マールが口を挟み、血のにじんだ書き付けを出した。クロウが覗き込む。
「これは? ローテンブレード家の紋じゃないか。あ、ケラトゥス・ウィングってのは?」
「よく見ろ、大砲。竜が足りないだろ。それと、そのウィングって奴が俺たちにとってのマダム・マリーだろうな」
「ああ、なるほど。で、なんで傍系がトリーの奪取を指示してるんだ? 意味分からん」
 乾いた笑いを漏らしたのはディガンだった。
「おい、大砲よ、おまえ前にこの子は実戦じゃ役に立たないって言っただろ? それはその通りなんだが、ブレードは使えるようにする方法を考えたんだよ。魔宝具さ。霊じゃなく、魂を込めるつもりだ」
「冗談だろ? 魂を抜くつもりだったのか。なんでそんなむごいことを」
 ディガンによると、ローテンブレードの本家の方はトリーンの能力を使い、お抱えの魔法使いを強化して邪法に覆われた土地を浄化する計画だった。いままで不完全、かつ小規模にしかできなかったが、強化能力の分析により、短期間に広範囲を浄化できると分かったからだった。
「それでいいじゃないか」
 ペリジーがつぶやいた。
「だが、ブレードはあくまで戦力拡充にこだわった。魔王が滅ぼされた後は人間同士の争いになる。豊かな土地がいくらあっても守れなければ意味はない、とな。だからトリーの魂を抜いて魔宝具に封じる計画を立てた。肉体の制限が消えれば、クロウ、おまえの言った欠点はなくなる。魔宝具の影響範囲のすべての魔法使いが強化の恩恵を受けられるだろう」
「そんなの、許されるはずがない。道に背くよ。死による救いのない魂なんてさ」
「小僧の言う通り。まともならこんな計画認めない。だから犬鬼に襲わせた。本当なら俺たちは全滅し、荷は行方不明になってた。トリーは眠ったまま人知れずどこかに運ばれ、新しい魔宝具ができて、ローテンブレード一族の中でのブレードの血統は無視できないものとなる。そういう絵を描いてたようだ」

 クロウは天を仰いだ。

「知ったことじゃない、って言えたら今回の報酬全部あんたにお供えしてもいいぞ」
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