65 / 79
第五部 ゴールデンエイジ
六
しおりを挟む 翌朝、管理海域のぎりぎり外にオートマトン漁船が多数集結していた。マザーは監視船団を出した。
「にらめっこかよ」爪でこんこんと画面を叩くと漁船の諸元が表示された。「こんなの信用できるか」
「改造は確実として、どのくらいの力かな」監視船からの画像は安定しているが、人数などの規模や装備まではまだ分からなかった。
「囚人奪還ならかなりのものだろうね」
「それはイリーガル。本土のポリスにまかせよう」
もっともな意見だった。十二名の逮捕は自警組織として当然だし、その後の収容も合法だ。
「けど、それはそれで嫌だな。本土の警察を再上陸させるのか」
ぼくの言葉にウォーデが耳を立て、牙をむいた。
その時、漁船団にもっとも接近した監視船に何かが撃ち込まれた。甲板に飛びこんで転がる。人の腕くらいの筒状の物だった。
オートマトンが調べると外見通りの筒で、中にはなんと巻いた紙が入っていた。
「なんだ、ありゃ」耳が元にもどった。ウォーデにも予想外だったらしい。
さらに驚かされた。それはまさしく本当の紙、植物繊維を漉いたシートで、墨、すなわち炭素の微粒子を主原料とした塗料で字が書かれていた。そんなのを検索するのは初めてだった。
その割に内容は予想通りだった。十二名の速やかなる解放。拘禁への十分な補償。そしてインフィニティ・マザーのコードすべての引き渡し。
「日没までに従わなかったら……、と」ファーリーがかなり癖の強い字と古めかしい言い回しを読みながらつぶやいた。「なんか、若い衆が上陸して暴れるってさ。もったいぶってるけど、要はそう書いてあるよ」
「そりゃまずいな。あの装備とスピードは脅威だ。俺たちじゃ相手にならない」ウォーデはビクタの左腕を見た。
「でも、マザーはビジョンにアタックできるし」
「いや、あの攻撃の仕様を教えてくれないのが気になる。何かあるんじゃないか」ぼくはマザーを呼んだが、反応はなかった。
「あいつ、隠してばっかだね」
「やっぱりポリスに連絡する? これ明らかにインティミデーション。海上で取り押さえてもらえばいい」
「待って、わざわざ昔の言葉なのが気になる。ファーリー、それ今の言葉に解釈しないで書いてある通りに意味をとっても脅迫になる?」
「あ、そっか。いや、難しいね。話し合いましょうってだけだから。引いてある故事で実力行使をほのめかしてるんだ」
ウォーデが鼻で笑った。「そりゃ慎重だな」
「ぼくらの自治権の範囲でなんとかしなくちゃ。それにしてもマザー、なんで無視してる?」ぼくはタップ信号を自動で送り続けるようにセットした。「それと、船内の様子分からない? 人数とか」
みんな口を閉じてそれぞれ監視にもどった。しばらくしてファーリーが画面を叩いた。「ちょっと見て」十秒ほど巻き戻される。船窓に人影が見えた。拡大し、画像を補正する。
そいつは、真っ白い肌をしていた。
「にらめっこかよ」爪でこんこんと画面を叩くと漁船の諸元が表示された。「こんなの信用できるか」
「改造は確実として、どのくらいの力かな」監視船からの画像は安定しているが、人数などの規模や装備まではまだ分からなかった。
「囚人奪還ならかなりのものだろうね」
「それはイリーガル。本土のポリスにまかせよう」
もっともな意見だった。十二名の逮捕は自警組織として当然だし、その後の収容も合法だ。
「けど、それはそれで嫌だな。本土の警察を再上陸させるのか」
ぼくの言葉にウォーデが耳を立て、牙をむいた。
その時、漁船団にもっとも接近した監視船に何かが撃ち込まれた。甲板に飛びこんで転がる。人の腕くらいの筒状の物だった。
オートマトンが調べると外見通りの筒で、中にはなんと巻いた紙が入っていた。
「なんだ、ありゃ」耳が元にもどった。ウォーデにも予想外だったらしい。
さらに驚かされた。それはまさしく本当の紙、植物繊維を漉いたシートで、墨、すなわち炭素の微粒子を主原料とした塗料で字が書かれていた。そんなのを検索するのは初めてだった。
その割に内容は予想通りだった。十二名の速やかなる解放。拘禁への十分な補償。そしてインフィニティ・マザーのコードすべての引き渡し。
「日没までに従わなかったら……、と」ファーリーがかなり癖の強い字と古めかしい言い回しを読みながらつぶやいた。「なんか、若い衆が上陸して暴れるってさ。もったいぶってるけど、要はそう書いてあるよ」
「そりゃまずいな。あの装備とスピードは脅威だ。俺たちじゃ相手にならない」ウォーデはビクタの左腕を見た。
「でも、マザーはビジョンにアタックできるし」
「いや、あの攻撃の仕様を教えてくれないのが気になる。何かあるんじゃないか」ぼくはマザーを呼んだが、反応はなかった。
「あいつ、隠してばっかだね」
「やっぱりポリスに連絡する? これ明らかにインティミデーション。海上で取り押さえてもらえばいい」
「待って、わざわざ昔の言葉なのが気になる。ファーリー、それ今の言葉に解釈しないで書いてある通りに意味をとっても脅迫になる?」
「あ、そっか。いや、難しいね。話し合いましょうってだけだから。引いてある故事で実力行使をほのめかしてるんだ」
ウォーデが鼻で笑った。「そりゃ慎重だな」
「ぼくらの自治権の範囲でなんとかしなくちゃ。それにしてもマザー、なんで無視してる?」ぼくはタップ信号を自動で送り続けるようにセットした。「それと、船内の様子分からない? 人数とか」
みんな口を閉じてそれぞれ監視にもどった。しばらくしてファーリーが画面を叩いた。「ちょっと見て」十秒ほど巻き戻される。船窓に人影が見えた。拡大し、画像を補正する。
そいつは、真っ白い肌をしていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ヒトの世界にて
ぽぽたむ
SF
「Astronaut Peace Hope Seek……それが貴方(お主)の名前なのよ?(なんじゃろ?)」
西暦2132年、人々は道徳のタガが外れた戦争をしていた。
その時代の技術を全て集めたロボットが作られたがそのロボットは戦争に出ること無く封印された。
そのロボットが目覚めると世界は中世時代の様なファンタジーの世界になっており……
SFとファンタジー、その他諸々をごった煮にした冒険物語になります。
ありきたりだけどあまりに混ぜすぎた世界観でのお話です。
どうぞお楽しみ下さい。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
キンメッキ ~金色の感染病~
木岡(もくおか)
SF
ある年のある日を境に世界中で大流行した感染病があった。
突然に現れたその病は非常に強力で、医者や専門家たちが解決策を見つける間もなく広まり、世界中の人間達を死に至らしめていった。
加えてその病には年齢の高いものほど発症しやすいという特徴があり、二か月も経たないうちに世界から大人がいなくなってしまう。
そして残された子供たちは――脅威から逃れた後、広くなった地球でそれぞれの生活を始める――
13歳の少年、エイタは同じ地域で生き残った他の子供達と共同生活を送っていた。感染病の脅威が収まった後に大型の公民館で始まった生活の中、エイタはある悩みを抱えて過ごしていた……。
金色の感染病が再び動き出したときにエイタの運命が大きく動き出す。
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
ワークロボット社
シュレディンガーのうさぎ
SF
舞台は2180年で、人間そっくりなアンドロイドが世界に普及しているという設定です。
そんな世界でアンドロイド業界を支配する会社『ワークロボット社』に秘書(セクレ)として勤めることになった人間、サラがその会社のCEOや従業員たちと絆を深めながら、アンドロイドと人間がどのような関係であるべきかを模索していきます。
*気が向いたら続きを書くという感じになります。
我らの輝かしきとき ~拝啓、坂の上から~
城闕崇華研究所(呼称は「えねこ」でヨロ
歴史・時代
講和内容の骨子は、以下の通りである。
一、日本の朝鮮半島に於ける優越権を認める。
二、日露両国の軍隊は、鉄道警備隊を除いて満州から撤退する。
三、ロシアは樺太を永久に日本へ譲渡する。
四、ロシアは東清鉄道の内、旅順-長春間の南満洲支線と、付属地の炭鉱の租借権を日本へ譲渡する。
五、ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。
六、ロシアは沿海州沿岸の漁業権を日本人に与える。
そして、1907年7月30日のことである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる