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成人の儀、その夜
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ランスロットの成人の儀が行われる日が来ました。
気に入らないことがあるとすぐ仏頂面になるランスロットですが、今日この日はとても穏やかです。用意された礼服もよく似合い、眩いばかりの輝きを放っています。すらりとした佇まいに流れるような豊かな栗色の髪。容姿端麗な彼の頭上には、神官より授かった宝珠の冠がよく映えています。
ランスロットは祝宴の最中でも上機嫌でした。普段なら相手にしない姫君とのダンスも華麗に舞い、また諸国の王侯貴族からの祝辞も和やかな笑顔で受け取っていたのです。その様子には父王もご満悦です。もちろん、警護にあたっていたシルヴィも安堵の表情を浮かべていたのです。
そして、夜。この儀式の最後の締めくくりとなる『清らかな乙女』が登場します。寝間着に着替えたランスロットが、女官長と一緒に寝室の前までやってきました。
「なんでお前はここにいるのだ?」
寝室の前で警護をしていたシルヴィに、ランスロットは怪訝な顔を浮かべます。
「俺の厄災を断ち切る瞬間に、お前はなぜ部屋の外にいるのだ?どんな人間が俺を狙っているのかわからないのだぞ」
と、寝室の中に入るようシルヴィを即すのです。困ったシルヴィは付き添っていた女官長に相談しました。王太子の思し召しであることを踏まえ部屋の中のカーテンの隅に隠れ、警護にあたることにしたのです。
(何てマヌケな姿なんだ…)
シルヴィは剣に手を掛けたまま、心の中で自身の状態を嘆いておりました。ランスロットはその様子に満足し、ベッドに座ってその時を待っていました。
すると、数人の足音と共に扉が開き、1人の女性が部屋に入ってきました。彼女こそが『清らかな乙女』なのです。ランスロットはその女性を見て
「あなたでしたか、シャルロット姫」
と、穏やかに話しかけるのです。
シャルロットと呼ばれた娘はとても緊張しており、少し震えています。透けた純白のレースの寝間着を身につけており、たわわな乳房や果実のような尻など、弾けんばかりの若い娘の体を誇張していました。
「ラーク公の息女であられるあなたが選ばれたのですね」
シャルロットの身体は固まってしまい、ランスロットの問いに頷くことしかできません。また、隠れていたシルヴィにもこの会話が聞こえ、『清らかな乙女』が、自分の知っているシャルロットであることに気付くのです。
「シャルロット、落ち着いて聞いてください。私はあなたと一緒に夜を過ごすことはありません」
ランスロットの意外な一言に、シャルロットは涙目になってしまいました。拒絶されたと思ったのです。
「シャルロット、この慣わしは時代錯誤もいいところ、女性を軽視した儀式であると私は思っています。男ならば堂々と告白して、その女性の愛を勝ち取るべきです」
ランスロットの女性を思いやる言葉に、シャルロットも「まぁ…!」と柔らかい表情になりました。
「あなたに女性としての魅力は十分にあります。『清らかな乙女』としてではなく、1人の女性としてです。今夜は隣の寝室でおやすみなさい。女官には私から上手く伝えておきます。何の心配もいりません。さぁ、どうぞ」
ランスロットの手にエスコートされたシャルロットは、別室へと案内されました。思いもよらない展開に、隠れていたシルヴィも脱力してしまいます。
戻ってきたランスロットは、ベッドに座り込んでしまいました。
「ご英断でございました」
シルヴィはカーテンから出てきて、ランスロットに声を掛けました。
「あとは、明日神官に真実を伝えることのみ。私も一緒に参りましょう」
と、ランスロットを慰めるシルヴィでしたが、急にランスロットがシルヴィの左手を引っ張り、ベッドに押し倒してしまいました。何をされたのかさっぱりわからないシルヴィは、呆然としています。そして、ランスロットはシルヴィが帯剣していた長剣を鞘ごと外し寝室の奥の方へ放り投げ、シルヴィの軍服のボタンを上から強引に開けていくのです。
「殿下、何をされて…!」
ランスロットを止めようとするシルヴィですが、王太子である彼に手を出すこともできず、必死に身体をよじって逃げようとしています。しかし、ランスロットの力も強く、また上に乗られてしまったため、身動きが取れなくなってしまったのです。
「知ってるか、シルヴィ。『夜這い』という習慣は、男が好きな女の部屋に行くのだが、その愛を受け取るかどうかは女側に決定権があるのだ。拒否された男は帰るしかない。わかりやすいと思わないか」
ランスロットの意図が読めないシルヴィには、なんのことやらさっぱりわかりません。衣服はすでに脱がされ、上半身は下着のみになっています。ズボンの腰紐も緩んでいます。
「お前はどっちだ?」
ランスロットの言葉に「何を…で…しょう…?」と、途切れ途切れに応えるシルヴィ。すると、馬乗りになったランスロットの動きが止まり、シルヴィの顔をじっと見つめます。その宝石のような碧の瞳に、シルヴィは吸い込まれてしまいました。ランスロットは着ていた寝間着を脱いで裸になっています。厚く筋肉がついた逞しい身体がシルヴィの視界に入り、その彫刻のような美しい身体に熱っぽさを感じたシルヴィは、顔を赤らめてしまいます。
「お前は処女か?」
まっすぐ見つめたまま質問を投げるランスロット。突拍子もない彼の質問に、答えることができないシルヴィ。両腕はランスロットに捕まったまま。
痛いほどの握力でベッドの上に拘束されているまま、夜は深まっていくのでした。
気に入らないことがあるとすぐ仏頂面になるランスロットですが、今日この日はとても穏やかです。用意された礼服もよく似合い、眩いばかりの輝きを放っています。すらりとした佇まいに流れるような豊かな栗色の髪。容姿端麗な彼の頭上には、神官より授かった宝珠の冠がよく映えています。
ランスロットは祝宴の最中でも上機嫌でした。普段なら相手にしない姫君とのダンスも華麗に舞い、また諸国の王侯貴族からの祝辞も和やかな笑顔で受け取っていたのです。その様子には父王もご満悦です。もちろん、警護にあたっていたシルヴィも安堵の表情を浮かべていたのです。
そして、夜。この儀式の最後の締めくくりとなる『清らかな乙女』が登場します。寝間着に着替えたランスロットが、女官長と一緒に寝室の前までやってきました。
「なんでお前はここにいるのだ?」
寝室の前で警護をしていたシルヴィに、ランスロットは怪訝な顔を浮かべます。
「俺の厄災を断ち切る瞬間に、お前はなぜ部屋の外にいるのだ?どんな人間が俺を狙っているのかわからないのだぞ」
と、寝室の中に入るようシルヴィを即すのです。困ったシルヴィは付き添っていた女官長に相談しました。王太子の思し召しであることを踏まえ部屋の中のカーテンの隅に隠れ、警護にあたることにしたのです。
(何てマヌケな姿なんだ…)
シルヴィは剣に手を掛けたまま、心の中で自身の状態を嘆いておりました。ランスロットはその様子に満足し、ベッドに座ってその時を待っていました。
すると、数人の足音と共に扉が開き、1人の女性が部屋に入ってきました。彼女こそが『清らかな乙女』なのです。ランスロットはその女性を見て
「あなたでしたか、シャルロット姫」
と、穏やかに話しかけるのです。
シャルロットと呼ばれた娘はとても緊張しており、少し震えています。透けた純白のレースの寝間着を身につけており、たわわな乳房や果実のような尻など、弾けんばかりの若い娘の体を誇張していました。
「ラーク公の息女であられるあなたが選ばれたのですね」
シャルロットの身体は固まってしまい、ランスロットの問いに頷くことしかできません。また、隠れていたシルヴィにもこの会話が聞こえ、『清らかな乙女』が、自分の知っているシャルロットであることに気付くのです。
「シャルロット、落ち着いて聞いてください。私はあなたと一緒に夜を過ごすことはありません」
ランスロットの意外な一言に、シャルロットは涙目になってしまいました。拒絶されたと思ったのです。
「シャルロット、この慣わしは時代錯誤もいいところ、女性を軽視した儀式であると私は思っています。男ならば堂々と告白して、その女性の愛を勝ち取るべきです」
ランスロットの女性を思いやる言葉に、シャルロットも「まぁ…!」と柔らかい表情になりました。
「あなたに女性としての魅力は十分にあります。『清らかな乙女』としてではなく、1人の女性としてです。今夜は隣の寝室でおやすみなさい。女官には私から上手く伝えておきます。何の心配もいりません。さぁ、どうぞ」
ランスロットの手にエスコートされたシャルロットは、別室へと案内されました。思いもよらない展開に、隠れていたシルヴィも脱力してしまいます。
戻ってきたランスロットは、ベッドに座り込んでしまいました。
「ご英断でございました」
シルヴィはカーテンから出てきて、ランスロットに声を掛けました。
「あとは、明日神官に真実を伝えることのみ。私も一緒に参りましょう」
と、ランスロットを慰めるシルヴィでしたが、急にランスロットがシルヴィの左手を引っ張り、ベッドに押し倒してしまいました。何をされたのかさっぱりわからないシルヴィは、呆然としています。そして、ランスロットはシルヴィが帯剣していた長剣を鞘ごと外し寝室の奥の方へ放り投げ、シルヴィの軍服のボタンを上から強引に開けていくのです。
「殿下、何をされて…!」
ランスロットを止めようとするシルヴィですが、王太子である彼に手を出すこともできず、必死に身体をよじって逃げようとしています。しかし、ランスロットの力も強く、また上に乗られてしまったため、身動きが取れなくなってしまったのです。
「知ってるか、シルヴィ。『夜這い』という習慣は、男が好きな女の部屋に行くのだが、その愛を受け取るかどうかは女側に決定権があるのだ。拒否された男は帰るしかない。わかりやすいと思わないか」
ランスロットの意図が読めないシルヴィには、なんのことやらさっぱりわかりません。衣服はすでに脱がされ、上半身は下着のみになっています。ズボンの腰紐も緩んでいます。
「お前はどっちだ?」
ランスロットの言葉に「何を…で…しょう…?」と、途切れ途切れに応えるシルヴィ。すると、馬乗りになったランスロットの動きが止まり、シルヴィの顔をじっと見つめます。その宝石のような碧の瞳に、シルヴィは吸い込まれてしまいました。ランスロットは着ていた寝間着を脱いで裸になっています。厚く筋肉がついた逞しい身体がシルヴィの視界に入り、その彫刻のような美しい身体に熱っぽさを感じたシルヴィは、顔を赤らめてしまいます。
「お前は処女か?」
まっすぐ見つめたまま質問を投げるランスロット。突拍子もない彼の質問に、答えることができないシルヴィ。両腕はランスロットに捕まったまま。
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