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2 王子殿下からの縁談
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「ヒマリよ、その顔はどうしたのだ? ついに顔まで腐ったか?」
「何でもありませんわ。それにしても相変わらず発言がひどくありませんか?」
「酷くはない。当然のことを言ったまでだ。それに今日は大事な話がある」
家に帰ったら、玄関先で出迎えてくれたのはお父様だった。
ハッキリ言ってお父様お母様ともに私との仲が悪い。
レンとの交際で何度も喧嘩をしていた。
強情を張った私に対して、渋々結婚は認めてくれたものの、以降私のことはゴミのように扱われるようになってしまった。
「たかが騎士相手と交際などしおって……。相手が王宮直属の騎士になった以上、子爵家としては婚約を断るわけにもいかなくなってしまった。だが状況が変わった。ヒマリよ、ジェイムスなどとは結婚を辞めるのだ。婚約破綻を告げてこい」
どうして私の恋の邪魔ばかりするのだろうか。
だが、今回ばかりは反抗する気にもなれなかった。
既に私がレンとの結婚がそもそもダメだったのかもしれないと、少しずつ考えるようになってしまったからだ。
それでも弱々しく反論はしておく。
「何故です?」
「恋ごっこはおしまいにするのだ。何故ならば、聞いて驚け! ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談のお話を受けたのだ」
「え!? あの王子からですか!?」
流石に私も驚いてしまった。
縁談のお話をしたいということは、十中八九婚約を申し込むと言っているのと同じことだろう。
しかも、王族が子爵家の人間に縁談を申し込むことなど滅多にない。
お父様が興奮して大喜びしているのも理解はできる。
「良いかヒマリよ! 王子殿下には既に二人の婚約者がいるのは知っているだろう? お前が第三王妃にでもなれれば大出世間違いなしだ。さすがに言っている意味は分かるな?」
「レンと別れてギャレット王子殿下と結婚しろと……?」
「そう言うことだ。お前の幸せにも繋がるだろうよ」
幸せって何だろう。
好きでもない相手と結婚して子孫を残し、良い家柄を守ることがそんなに大事なのだろうか。
それとも子爵家でありながら破天荒に生きてきた私の脳内がポンコツなの?
「何か考えているようだが、既に申し込みは受理した。明日、王子殿下と会ってくるのだ」
「どうしてそんな勝手なことを!?」
「当然のことだろう。こんな千載一遇のチャンスを絶対に逃すなよ?」
今までの私だったらそれでも断ったと思う。
だが、レンからあのような酷いことを言われたばかりだったので、冷静に考えることができなかった。
「わかりましたよ……。そのかわり、婚約の申し込みじゃなかったとしても文句は言わないでくださいよ」
「どこまでも強情な娘だ。ジェイムス家には上手く伝えておくから安心しろ」
「明日の対談までは待ってください」
「いいだろう……」
まだ望みがある。
そもそも私と王子殿下とは接点がない。
ならば婚約の申し込みでない可能性だってあるだろう。
もしそうであれば、流石にレンとの件も逃してなるものかと態度を改め、お父様たちも味方にすることできるかもしれない。
だが、もしも本当に王子殿下からの用件が婚約だとしたら……、断らないかもしれない。
レンからは捨てられてしまったし、私も子爵家としての任務をするべきなのかもしれないと少しだけ考えていた。
全くもって嬉しくもないし望まぬ結婚になってしまうが。
はぁ、爵位なんていらないから好きな人と一緒にいたい。
「何でもありませんわ。それにしても相変わらず発言がひどくありませんか?」
「酷くはない。当然のことを言ったまでだ。それに今日は大事な話がある」
家に帰ったら、玄関先で出迎えてくれたのはお父様だった。
ハッキリ言ってお父様お母様ともに私との仲が悪い。
レンとの交際で何度も喧嘩をしていた。
強情を張った私に対して、渋々結婚は認めてくれたものの、以降私のことはゴミのように扱われるようになってしまった。
「たかが騎士相手と交際などしおって……。相手が王宮直属の騎士になった以上、子爵家としては婚約を断るわけにもいかなくなってしまった。だが状況が変わった。ヒマリよ、ジェイムスなどとは結婚を辞めるのだ。婚約破綻を告げてこい」
どうして私の恋の邪魔ばかりするのだろうか。
だが、今回ばかりは反抗する気にもなれなかった。
既に私がレンとの結婚がそもそもダメだったのかもしれないと、少しずつ考えるようになってしまったからだ。
それでも弱々しく反論はしておく。
「何故です?」
「恋ごっこはおしまいにするのだ。何故ならば、聞いて驚け! ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談のお話を受けたのだ」
「え!? あの王子からですか!?」
流石に私も驚いてしまった。
縁談のお話をしたいということは、十中八九婚約を申し込むと言っているのと同じことだろう。
しかも、王族が子爵家の人間に縁談を申し込むことなど滅多にない。
お父様が興奮して大喜びしているのも理解はできる。
「良いかヒマリよ! 王子殿下には既に二人の婚約者がいるのは知っているだろう? お前が第三王妃にでもなれれば大出世間違いなしだ。さすがに言っている意味は分かるな?」
「レンと別れてギャレット王子殿下と結婚しろと……?」
「そう言うことだ。お前の幸せにも繋がるだろうよ」
幸せって何だろう。
好きでもない相手と結婚して子孫を残し、良い家柄を守ることがそんなに大事なのだろうか。
それとも子爵家でありながら破天荒に生きてきた私の脳内がポンコツなの?
「何か考えているようだが、既に申し込みは受理した。明日、王子殿下と会ってくるのだ」
「どうしてそんな勝手なことを!?」
「当然のことだろう。こんな千載一遇のチャンスを絶対に逃すなよ?」
今までの私だったらそれでも断ったと思う。
だが、レンからあのような酷いことを言われたばかりだったので、冷静に考えることができなかった。
「わかりましたよ……。そのかわり、婚約の申し込みじゃなかったとしても文句は言わないでくださいよ」
「どこまでも強情な娘だ。ジェイムス家には上手く伝えておくから安心しろ」
「明日の対談までは待ってください」
「いいだろう……」
まだ望みがある。
そもそも私と王子殿下とは接点がない。
ならば婚約の申し込みでない可能性だってあるだろう。
もしそうであれば、流石にレンとの件も逃してなるものかと態度を改め、お父様たちも味方にすることできるかもしれない。
だが、もしも本当に王子殿下からの用件が婚約だとしたら……、断らないかもしれない。
レンからは捨てられてしまったし、私も子爵家としての任務をするべきなのかもしれないと少しだけ考えていた。
全くもって嬉しくもないし望まぬ結婚になってしまうが。
はぁ、爵位なんていらないから好きな人と一緒にいたい。
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