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 ドドンガがここへ来る前に、マラリアさんが私の元へ物凄い勢いで走ってきたのだ。そして謝罪をしてきた。
 事情も全て聞いているし、私が返した指輪が何故かマラリアさんの元に渡ったことも知っている。

 その上でマラリアさんは、みんなが見ている中で、悪役を務めてでもドドンガに仕返しをしたいと言ってきたのだ。
 マラリアさんはそうでもしないと気が済まないらしい。

「ドドンガ! これはローズお嬢様にお渡しした婚約指輪だろう!」
「でも高いモノだし……あとでしっかり名前を刻み直しておけば良いかと思って」
「お下がりの指輪などいりません!」

 マラリアさんの怒声が強烈で、ちょっと恐い。
 それよりもこれだけ言われてもまだヘラヘラしている態度をとっているドドンガの方がもっと恐い。

 呆れ果てたような表情をしているポッカ男爵は、再び私とマラリアさんに顔を向け頭を下げた。

「マラリアお嬢様にローズお嬢様、此度のバカ息子の過ちと行動、いくら詫びても取り返しもつかない程です。この件の賠償と責任は必ず取りたいと思う次第です」
「いえ……ポッカ男爵がそこまで考えなくとも……ドドンガさんの行動を見ていて失礼ながら、私は婚約破棄されて良かったのかなと思っていますし」

 今まで生きてきた中で、初めて皮肉めいた言葉を言ってしまった気がする。
 私だってドドンガの行動と態度は許せないのだ。

 私だけなら良いとしても、こうやって周りの人に迷惑をかけてしまって、元婚約者としてもみんなに謝罪をしなければと思う。

「ドドンガ、今日限りで責任を持ってポッカ家の爵位は返還することにした。妻も同じことを考えるはずだ。お前は当然勘当だ。ローズ様への婚約破棄に関する慰謝料はお前が責任を持つのだ」

 今までヘラヘラしていたドドンガは、ようやく焦り始めたようだ。
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