【完結】物作りを頑張っている婚約者にベタ惚れしてしまったので、応援していたらなぜか爵位が上がっていきます

よどら文鳥

文字の大きさ
上 下
36 / 50

36

しおりを挟む
「うーん……」
「どうされましたか?」
「どうも身体がずっと怠い日が続いているんですよね……」

 おそらく精神的な問題なんだと思う。
 ブルクシア様に手を握られた少しあとくらいからか。
 身体の調子が悪い気がするのだ。
 レオルド様には手を握られてしまったことを深く謝罪したのだが、相手が真実を知らないのだから仕方がないと、許してくれた。
 されてしまった行為も気にしないでおこうと思っていたのだが、身体の怠さがあってどうしても引きずってしまっている。

「今日の謁見はやめておきましょうか?」
「いえ。動けないような怠さではないのです。ただ……、なんとなくほんの少しだけ怠いという感覚が続いているというか……」
「うーん。私は医師ではありませんからね。王宮に行くついでに、陛下にお願いして王宮直属主治医に診てもらうとか」
「さすがにそこまでしていただくわけにはいきませんよ」
「でも、怠いなら診てもらったほうが良いと思います」

 レオルド様は私のことを本気で心配してくれている。
 このまま心配させたままでは悪いし、素直にそうしてもらおうかと思う。
 もちろん、かなりの出費になってしまうとは思うが、自分でなんとかしたい。
 幸い、学費が全額免除になったからそのお金で支払うことができる。

「ところで、やはりその判定用紙を商品化させるのですね」
「えぇ。何回か試した結果、不備はありませんでしたし。これを使えば、今後ソフィーナのような不遇を受ける者を減らせるんじゃないかと思いましてね」
「レオルド様の発明は、国を救ってくれそうですね」
「よしてください。そこまでのことはしていませんからね」

 本当だったらここで微笑んでいる。
 だが、どうしても体調が気になってしまい、心の底から笑うことができなかった。
 精神的に病んでしまったのかな私……。

 ♢

 いつもどおり、応接室でセバル侯爵様と新商品の販売許可の対談をしている。
 そのあとで国王陛下と謁見が待っているため大忙しだ。

 セバル侯爵様は、判定用紙の説明と、実際の実験を何回か行い、大変驚かれていた。

「これはまたレオルド君はとんでもない物を作ってきたな……」
「市販というよりも、これは魔法医療関連に販売になるかと思いますが、どうでしょうか?」
「たしかに。需要としては一部の者にしか該当しないだろう。医療限定で販売し、検査として使うのが望ましいかもしれない。これに関しては、もうしばらく時間をもらいたい。王宮の魔導士や主治医にも見せることになるが構わないか?」
「もちろんです」

 判定用紙の商品かも前向きに進んでいるようで良かった。
 今日は、ボーッとしながら話を聞いていて、なかなか頭に入ってこないのが残念だ。

「今日のソフィーナ嬢はどうした? 体調が悪そうだが」
「いえ……。少々心に傷を負ってしまっただけのようで……」

 セバル侯爵様にまで心配をかけさせてしまって本当に申しわけない気持ちでいっぱいだ。
 しばらくセバル侯爵様は私のことを見ながら心配そうな表情をしていた。

「少し待っていろ」
「あ……」

 そう言って、応接室を出てしまった。
 数分後、セバル様の他に二人の男性を連れて戻ってきた。

「王宮直属の魔導士と主治医だ。ソフィーナ嬢は色々と規格外なところもあるから、念のために魔法のなにか病気かもしれないから診てもらったほうがいい」
「申しわけございません」

 徐々に怠さも増しているため、ここは甘えることにした。

 二人に同時に診てもらう。
 念のため、私は怠くなってしまった原因も話した。
 一応、ブルクシア様の名前は伏せつつで。

 だが、私が説明すると、魔導士は顔を青ざめながら慌てて私の握られた手をじっくりと観察してきた。
 なななな……なにかマズいことでも……⁉︎
 私もレオルド様も、さらにセバル侯爵様まで心配していた。

「もしかしたら、魔力を半永久的に奪い取る呪いをかけられた可能性があるかもしれませんよ!」
「「「「え⁉︎」」」」

 いったいどう言うことなのかわけがわからず、慌ててしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

望まれない結婚〜相手は前妻を忘れられない初恋の人でした

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【忘れるな、憎い君と結婚するのは亡き妻の遺言だということを】 男爵家令嬢、ジェニファーは薄幸な少女だった。両親を早くに亡くし、意地悪な叔母と叔父に育てられた彼女には忘れられない初恋があった。それは少女時代、病弱な従姉妹の話し相手として滞在した避暑地で偶然出会った少年。年が近かった2人は頻繁に会っては楽しい日々を過ごしているうちに、ジェニファーは少年に好意を抱くようになっていった。 少年に恋したジェニファーは今の生活が長く続くことを祈った。 けれど従姉妹の体調が悪化し、遠くの病院に入院することになり、ジェニファーの役目は終わった。 少年に別れを告げる事もできずに、元の生活に戻ることになってしまったのだ。 それから十数年の時が流れ、音信不通になっていた従姉妹が自分の初恋の男性と結婚したことを知る。その事実にショックを受けたものの、ジェニファーは2人の結婚を心から祝うことにした。 その2年後、従姉妹は病で亡くなってしまう。それから1年の歳月が流れ、突然彼から求婚状が届けられた。ずっと彼のことが忘れられなかったジェニファーは、喜んで後妻に入ることにしたのだが……。 そこには残酷な現実が待っていた―― *他サイトでも投稿中

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します

nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。 イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。 「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」 すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。

処理中です...