30 / 50
30
しおりを挟む
「おい、結局魔力測定はどうだったんだよ?」
「あ……。すみません、ある程度の魔力がありましたので次席のままです」
翌日、クラスの同級生から質問攻めを受けた。
嘘はついていない。
魔力がそこそこ計測されて、形状は次席として学園に通う。
首席と同等の扱いを受けていることは黙っておくけれども。
この質問攻めを嘲笑いながらやってきたのはヴィーネ義姉様だった。
「みなさん。彼女がかわいそうでしょう。そのくらいにしてあげなさいな」
「良いのかよ? 反則して受かったかもしれないんだぜ?」
「魔法学科に相応しくない魔力量だったら、すぐにボロが出ますよ。心配しなくても大丈夫ですよ。私が証明してあげますから。ソフィーナがいかに魔力がなさすぎてボロが出るところを」
同級生たちがゲラゲラと笑い出した。
私は、すでにクラス内で嫌われ者になってしまっていた。
その発端はヴィーネ義姉様で、試験のときに魔力測定器をなんらかの方法で壊し、私の魔力が測定不能だと思い込ませたと言いふらしていたのだ。
だが、たとえクラスに溶け込めなくても、私がやりたいことは別にある。
魔法の知識をたくさん覚えて、レオルド様の役にたちたい。
楽しい学園ライフという夢は難しいかもしれないが、贅沢は言っていられない。
「席につきなさい。今日は生活に欠かせない魔法の実践をしてもらう」
トイレの水を流すための水魔法、夜に明かりを灯す光魔法のライト、火を起こして料理する炎魔法。
どれもすでにレオルド様と一緒に住み始めてからは日常的にやっている。
「この魔法を覚えることによって、将来様々な家庭もしくは貴族邸から魔法の使用依頼が来る可能性がグンと上がる。諸君らのように気軽に魔法を何度も使える者は少ないからだ」
レオルド様は、トイレで使う水魔法を一日一度が限界だと言っていた。しかも、魔法を使ったあとは魔力切れで倒れることもしばしばあるのだとか。
だからこそ、レオルド様が作った魔力を貯めることができる魔力測定器が重宝していく気がする。
「実践の前に……。ソフィーナ君」
「はい」
「今まで生活魔法を使ったことは?」
「最近は毎日使っていますよ」
普通に返答しただけだった。
しかし、教室からどよめきの声が上がる。
「もう魔法使えるのかよあいつ」
「魔力が俺たちよりもないくせにか?」
「いや、どうせ口だけだろ。実際にやっていたとしても、水がコップ一杯分だけでトイレに流してんじゃね?」
「きったねーな。あいつの家はきっとくっせーぞ」
とことん嫌われているのが良くわかった。特に男子たちから。
女子からは特に騒がれることもなかった。
それは、セドム先生にも聞こえるくらいの声量であったため、先生の顔色がおっかなくなっていく。
「まずは、ソフィーナ君に実践してもらおう」
「良いのですか?」
「あくまで生活で使っているような魔法をみんなに見せれば良い。むしろ見せてあげなさい。次席……の魔力をね」
セドム先生がニヤリと微笑んだ。
これに対して、同級生たちも騒ぎ立てた。
「良いぞ良いぞもっと言ってやれ」
「先生もソフィーナの魔力を疑ってんじゃん。あいつ、終わったな」
「美しいヴィーネ様の首席の座を脅かした罰だ。さっさとコップ一杯のちんけな水で魔力切れして倒れちまえ」
「静かにしたまえ!」
セドム先生の怒声で教室が静かになる。
こほんと咳払いをして、魔力測定器から供給されているライトのスイッチを切った。
「ますはライトからだ。やってみたまえ。くれぐれも壊さないようにな!」
「はい。では……」
私は無言で天井に手を向けて魔力をほんの少しだけ流した。
消えていた灯りが再び灯される。少しやらかしてしまったかな。さっきよりも明るくなってしまった。
「「「「「「「「「「え……?」」」」」」」」」」
今度は全員が信じられないと言ったような表情をしながら私を見てきた。
セドム先生も一緒に……。
「ソフィーナ君? 今、無言だったな……?」
「え、なにか失敗してしまいましたか?」
「こほん。ライトを魔法で明るくする際、詠唱が必要なのだが……。もちろん、水の具現化や炎もそうなのだよ」
そう言われてみれば、魔法の本には詠唱がどうとか書いてあった。
だが、初めて実践してみたとき、詠唱するまえに勝手にライトの魔法が発動してくれたし、トイレの水もいっぱい流れてくれた。
詠唱がなくてもできるんだと思い込んで、それを当たりまえにして過ごしてしまったっけ……。
「おいおいどうなってんだよ。無言で魔法って使えんのか?」
「聞いたことねーよ。でも今のは明らかにあいつが放って灯りを灯したよな……?」
「魔力がほとんどない奴がこんなことできんのか?」
「み、水や炎も見ればわかんじゃね⁉︎」
さっきまでの暴言とは少し違う反応のような気がした。
むしろ、私に興味を示してくるような視線に変わっているような……。
変わったと言えば、ヴィーネ義姉様の機嫌がどんどん悪くなっているような気がした。
「水魔法はここでは危険なのでな。全員でグラウンドに設置しているプールサイドへ向かう」
「せ、セドム先生……。トイレで実践すれば良いのでは……」
「ソフィーナ君。もしものときのためだよ……」
「は、はい……」
どうやら、またやらかすのではないかと心配されているようだ。
でも大丈夫!
トイレで使う水魔法は日常的に使っているし、間違ってもプールいっぱいになるほどの水を具現化することはない。絶対にない。
ここで先生からの信頼もしっかりともらおう。
私は張り切っていた。
「あ……。すみません、ある程度の魔力がありましたので次席のままです」
翌日、クラスの同級生から質問攻めを受けた。
嘘はついていない。
魔力がそこそこ計測されて、形状は次席として学園に通う。
首席と同等の扱いを受けていることは黙っておくけれども。
この質問攻めを嘲笑いながらやってきたのはヴィーネ義姉様だった。
「みなさん。彼女がかわいそうでしょう。そのくらいにしてあげなさいな」
「良いのかよ? 反則して受かったかもしれないんだぜ?」
「魔法学科に相応しくない魔力量だったら、すぐにボロが出ますよ。心配しなくても大丈夫ですよ。私が証明してあげますから。ソフィーナがいかに魔力がなさすぎてボロが出るところを」
同級生たちがゲラゲラと笑い出した。
私は、すでにクラス内で嫌われ者になってしまっていた。
その発端はヴィーネ義姉様で、試験のときに魔力測定器をなんらかの方法で壊し、私の魔力が測定不能だと思い込ませたと言いふらしていたのだ。
だが、たとえクラスに溶け込めなくても、私がやりたいことは別にある。
魔法の知識をたくさん覚えて、レオルド様の役にたちたい。
楽しい学園ライフという夢は難しいかもしれないが、贅沢は言っていられない。
「席につきなさい。今日は生活に欠かせない魔法の実践をしてもらう」
トイレの水を流すための水魔法、夜に明かりを灯す光魔法のライト、火を起こして料理する炎魔法。
どれもすでにレオルド様と一緒に住み始めてからは日常的にやっている。
「この魔法を覚えることによって、将来様々な家庭もしくは貴族邸から魔法の使用依頼が来る可能性がグンと上がる。諸君らのように気軽に魔法を何度も使える者は少ないからだ」
レオルド様は、トイレで使う水魔法を一日一度が限界だと言っていた。しかも、魔法を使ったあとは魔力切れで倒れることもしばしばあるのだとか。
だからこそ、レオルド様が作った魔力を貯めることができる魔力測定器が重宝していく気がする。
「実践の前に……。ソフィーナ君」
「はい」
「今まで生活魔法を使ったことは?」
「最近は毎日使っていますよ」
普通に返答しただけだった。
しかし、教室からどよめきの声が上がる。
「もう魔法使えるのかよあいつ」
「魔力が俺たちよりもないくせにか?」
「いや、どうせ口だけだろ。実際にやっていたとしても、水がコップ一杯分だけでトイレに流してんじゃね?」
「きったねーな。あいつの家はきっとくっせーぞ」
とことん嫌われているのが良くわかった。特に男子たちから。
女子からは特に騒がれることもなかった。
それは、セドム先生にも聞こえるくらいの声量であったため、先生の顔色がおっかなくなっていく。
「まずは、ソフィーナ君に実践してもらおう」
「良いのですか?」
「あくまで生活で使っているような魔法をみんなに見せれば良い。むしろ見せてあげなさい。次席……の魔力をね」
セドム先生がニヤリと微笑んだ。
これに対して、同級生たちも騒ぎ立てた。
「良いぞ良いぞもっと言ってやれ」
「先生もソフィーナの魔力を疑ってんじゃん。あいつ、終わったな」
「美しいヴィーネ様の首席の座を脅かした罰だ。さっさとコップ一杯のちんけな水で魔力切れして倒れちまえ」
「静かにしたまえ!」
セドム先生の怒声で教室が静かになる。
こほんと咳払いをして、魔力測定器から供給されているライトのスイッチを切った。
「ますはライトからだ。やってみたまえ。くれぐれも壊さないようにな!」
「はい。では……」
私は無言で天井に手を向けて魔力をほんの少しだけ流した。
消えていた灯りが再び灯される。少しやらかしてしまったかな。さっきよりも明るくなってしまった。
「「「「「「「「「「え……?」」」」」」」」」」
今度は全員が信じられないと言ったような表情をしながら私を見てきた。
セドム先生も一緒に……。
「ソフィーナ君? 今、無言だったな……?」
「え、なにか失敗してしまいましたか?」
「こほん。ライトを魔法で明るくする際、詠唱が必要なのだが……。もちろん、水の具現化や炎もそうなのだよ」
そう言われてみれば、魔法の本には詠唱がどうとか書いてあった。
だが、初めて実践してみたとき、詠唱するまえに勝手にライトの魔法が発動してくれたし、トイレの水もいっぱい流れてくれた。
詠唱がなくてもできるんだと思い込んで、それを当たりまえにして過ごしてしまったっけ……。
「おいおいどうなってんだよ。無言で魔法って使えんのか?」
「聞いたことねーよ。でも今のは明らかにあいつが放って灯りを灯したよな……?」
「魔力がほとんどない奴がこんなことできんのか?」
「み、水や炎も見ればわかんじゃね⁉︎」
さっきまでの暴言とは少し違う反応のような気がした。
むしろ、私に興味を示してくるような視線に変わっているような……。
変わったと言えば、ヴィーネ義姉様の機嫌がどんどん悪くなっているような気がした。
「水魔法はここでは危険なのでな。全員でグラウンドに設置しているプールサイドへ向かう」
「せ、セドム先生……。トイレで実践すれば良いのでは……」
「ソフィーナ君。もしものときのためだよ……」
「は、はい……」
どうやら、またやらかすのではないかと心配されているようだ。
でも大丈夫!
トイレで使う水魔法は日常的に使っているし、間違ってもプールいっぱいになるほどの水を具現化することはない。絶対にない。
ここで先生からの信頼もしっかりともらおう。
私は張り切っていた。
48
お気に入りに追加
2,005
あなたにおすすめの小説

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。
待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。
妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。
……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。
けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します!
自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。
ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。
こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。
(本編、番外編、完結しました)

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

政略結婚で「新興国の王女のくせに」と馬鹿にされたので反撃します
nanahi
恋愛
政略結婚により新興国クリューガーから因習漂う隣国に嫁いだ王女イーリス。王宮に上がったその日から「子爵上がりの王が作った新興国風情が」と揶揄される。さらに側妃の陰謀で王との夜も邪魔され続け、次第に身の危険を感じるようになる。
イーリスが邪険にされる理由は父が王と交わした婚姻の条件にあった。財政難で困窮している隣国の王は巨万の富を得たイーリスの父の財に目をつけ、婚姻を打診してきたのだ。資金援助と引き換えに父が提示した条件がこれだ。
「娘イーリスが王子を産んだ場合、その子を王太子とすること」
すでに二人の側妃の間にそれぞれ王子がいるにも関わらずだ。こうしてイーリスの輿入れは王宮に波乱をもたらすことになる。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

次は絶対に幸せになって見せます!
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢マリアは、熾烈な王妃争いを勝ち抜き、大好きな王太子、ヒューゴと結婚したものの、結婚後6年間、一度も会いに来てはくれなかった。孤独に胸が張り裂けそうになるマリア。
“もしもう一度人生をやり直すことが出来たら、今度は私だけを愛してくれる人と結ばれたい…”
そう願いながら眠りについたのだった。
翌日、目が覚めると懐かしい侯爵家の自分の部屋が目に飛び込んできた。どうやら14歳のデビュータントの日に戻った様だ。
もう二度とあんな孤独で寂しい思いをしない様に、絶対にヒューゴ様には近づかない。そして、素敵な殿方を見つけて、今度こそ幸せになる!
そう決意したマリアだったが、なぜかヒューゴに気に入られてしまい…
恋愛に不器用な男女のすれ違い?ラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる