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【前書き】
この話から登場する【魔力量】が数値化されますが、これに限りはアラビア数字を使わさせていただきます。
普段数字も漢数字で書いていますが、これに関しては漢字だとめちゃくちゃ読み辛いので、あえて1234567890にさせていただきます。ご理解よろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーーーーー
プリドラ学園の受験日。
私は魔法学科で、レオルド様は学問学科で受験するため、門を潜ったあとにひとまず別れる。
国王陛下とレオルド様曰く、私の魔力量なら絶対に首席になれると太鼓判を押されているが、油断はしない。
念のために昨日は魔法鍛錬以外での魔力は使っていないし、昨晩もしっかりと寝たし、健康状態もバッチリだ。
「魔法学科受験の生徒は中央広場に集まってください」
魔法学科は主に魔法関連の実技で試験が行われる。
実技と言っても、なにかの固有魔法を使えるわけではないし少し心配だ。
「あら、どこかで見たことがあるかと思ったら……。ソフィーナじゃないの」
どこかで聞いたことのある声のするほうへ振り向くと、クスクスと笑っていたヴィーネ義姉様だ。
「お久しぶりです」
「庶民の血が混じっているくせに男爵になんかなってしまわれて……。どういうインチキをしたらそうなるのかしら?」
「インチキ……」
こればかりはなにも言い返せない。
確かに魔力量が人よりちょっとあるだけで今後の活躍の期待を込めて爵位を叙爵された。
私がなにか実績を残しているわけではないのに男爵になったのだ。
貴族としての給金だって戴いている。
「ほら、なにも言えないのでしょう? まったく……。ところで、ここにいるということはソフィーナも魔法学科を受けるので?」
「は、はい。学問学科は知識がありませんし、騎士学科は論外でしたので」
「まったく……。インチキで貴族になったからって、給金で受験するなんて最低よね。民衆から集めたお金を私利私欲に使うなんてありえないわ」
「あ、いえ。首席で合格するつもりで受験しています。首席なら受験も授業も全額免除だと知りましたので」
私が自信なさげで言うと、ヴィーネはクスクスと笑って絶対に無理だというような顔を向けてきた。
「ふぅん……。まぁいいわ。だったら今回の受験で、ソフィーナと私がどれだけ魔力の格の違いがあるかを証明してあげましょう。覚悟しておきなさい」
満足そうにしながらヴィーネは先に中央広場へ向かっていった。
本当に首席で受かるかどうか、そもそも受験に合格できるかどうかも不安になってしまったな……。
♢
「魔法学科の受験生諸君には、今から魔力量測定と、魔法を使える者は実技試験も追加で受けてもらう」
「じ……実技試験?」
ますます不安になってきた。
首席を取るためには実技ができないとダメなのではないだろうか。
女性試験官の細かい説明がはじまった。
「まず魔力量測定だが、持っている魔力のギリギリまで、この学園製魔力測定器に注いでもらう。注いでもらった魔力は学園中のライトや照明、その他様々な用途に使わさせてもらうから、頑張って注いでくれたまえ。ちなみに、魔力測定のみで合格する概ねの基準は80以上だ。なお、受験生過去最大の記録は3500だ。この者は後に王宮直属魔導士へ進んだ」
首席をとるためには、おそらく3000くらいは必要なのかもしれないな。
私は実技はできないし、本気の本気で全力で魔力を注いでなんとか3000以上を出さなきゃだ。
嫌がらせのように私の横にいるヴィーネ義姉様が、緊張している私を見て嘲笑ってきた。
「ソフィーナなんかせいぜい5がいいところよ。ゴミね……。私は事前にこの訓練をさせてもらっているし、魔力測定だけでも合格は確実ね。まぁ実技もするし、首席は私のものよ」
「は、はぁ……」
これは困った。
ヴィーネ義姉様が自信を持っているということは、過去最大記録をも超えないとダメなのかもしれない。
ますます緊張してきた。
「はぁぁぁぁあっっっ!!」
ヴィーネ義姉様の番で、ものすごい気合で魔力測定器に手を充てて魔力を流している。
試験管も驚いていた。
「すごいわね。3000近くまで伸びたわ。これで実技も受ければ首席は間違いないでしょうね」
「へっへーーーん!」
ヴィーネ義姉様は真っ先に私を見ながら自慢げにしている。
だが、3000もの数字が出たらしいのに、どうしてだろうか。
ヴィーネ義姉様が注いだ魔力量って言うほど多くなかったような気がしてしまったのは……。
「250、321、121、557、はい、最後、あなたよ!」
私は他の受験生の魔力は見ずに、目を瞑り魔力の循環をよくするための瞑想をしていた。私の番だということに気がつかず、試験管に呼ばれてしまった。
しまった、つい真剣になっていたものだから……。
「すみませんでした」
「さぁ、持てる力で全力で注ぎなさい」
私は魔力測定器に手を充てる。
ここで一つ疑問がでた。
「あの、試験管。この測定器は最大でどのくらいまで測定できるのですか?」
「え? あなたはなにを言っているの? そうね……たしか10000くらいまでなら測れたはずよ。それ以上は壊れてしまうそうだけど安心しなさい。そんな魔力の持ち主の子供なんてこの世にいないから」
「は、はい! では!」
試験管も大丈夫と言っているし、私は遠慮なくいきなり全力で魔力を注いだ。
絶対に首席を取らなければならない。
その気持ちだけで、持てるだけの魔力を全て魔力測定器にぶつけたのだ。
そして……。
この話から登場する【魔力量】が数値化されますが、これに限りはアラビア数字を使わさせていただきます。
普段数字も漢数字で書いていますが、これに関しては漢字だとめちゃくちゃ読み辛いので、あえて1234567890にさせていただきます。ご理解よろしくお願いいたします。
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プリドラ学園の受験日。
私は魔法学科で、レオルド様は学問学科で受験するため、門を潜ったあとにひとまず別れる。
国王陛下とレオルド様曰く、私の魔力量なら絶対に首席になれると太鼓判を押されているが、油断はしない。
念のために昨日は魔法鍛錬以外での魔力は使っていないし、昨晩もしっかりと寝たし、健康状態もバッチリだ。
「魔法学科受験の生徒は中央広場に集まってください」
魔法学科は主に魔法関連の実技で試験が行われる。
実技と言っても、なにかの固有魔法を使えるわけではないし少し心配だ。
「あら、どこかで見たことがあるかと思ったら……。ソフィーナじゃないの」
どこかで聞いたことのある声のするほうへ振り向くと、クスクスと笑っていたヴィーネ義姉様だ。
「お久しぶりです」
「庶民の血が混じっているくせに男爵になんかなってしまわれて……。どういうインチキをしたらそうなるのかしら?」
「インチキ……」
こればかりはなにも言い返せない。
確かに魔力量が人よりちょっとあるだけで今後の活躍の期待を込めて爵位を叙爵された。
私がなにか実績を残しているわけではないのに男爵になったのだ。
貴族としての給金だって戴いている。
「ほら、なにも言えないのでしょう? まったく……。ところで、ここにいるということはソフィーナも魔法学科を受けるので?」
「は、はい。学問学科は知識がありませんし、騎士学科は論外でしたので」
「まったく……。インチキで貴族になったからって、給金で受験するなんて最低よね。民衆から集めたお金を私利私欲に使うなんてありえないわ」
「あ、いえ。首席で合格するつもりで受験しています。首席なら受験も授業も全額免除だと知りましたので」
私が自信なさげで言うと、ヴィーネはクスクスと笑って絶対に無理だというような顔を向けてきた。
「ふぅん……。まぁいいわ。だったら今回の受験で、ソフィーナと私がどれだけ魔力の格の違いがあるかを証明してあげましょう。覚悟しておきなさい」
満足そうにしながらヴィーネは先に中央広場へ向かっていった。
本当に首席で受かるかどうか、そもそも受験に合格できるかどうかも不安になってしまったな……。
♢
「魔法学科の受験生諸君には、今から魔力量測定と、魔法を使える者は実技試験も追加で受けてもらう」
「じ……実技試験?」
ますます不安になってきた。
首席を取るためには実技ができないとダメなのではないだろうか。
女性試験官の細かい説明がはじまった。
「まず魔力量測定だが、持っている魔力のギリギリまで、この学園製魔力測定器に注いでもらう。注いでもらった魔力は学園中のライトや照明、その他様々な用途に使わさせてもらうから、頑張って注いでくれたまえ。ちなみに、魔力測定のみで合格する概ねの基準は80以上だ。なお、受験生過去最大の記録は3500だ。この者は後に王宮直属魔導士へ進んだ」
首席をとるためには、おそらく3000くらいは必要なのかもしれないな。
私は実技はできないし、本気の本気で全力で魔力を注いでなんとか3000以上を出さなきゃだ。
嫌がらせのように私の横にいるヴィーネ義姉様が、緊張している私を見て嘲笑ってきた。
「ソフィーナなんかせいぜい5がいいところよ。ゴミね……。私は事前にこの訓練をさせてもらっているし、魔力測定だけでも合格は確実ね。まぁ実技もするし、首席は私のものよ」
「は、はぁ……」
これは困った。
ヴィーネ義姉様が自信を持っているということは、過去最大記録をも超えないとダメなのかもしれない。
ますます緊張してきた。
「はぁぁぁぁあっっっ!!」
ヴィーネ義姉様の番で、ものすごい気合で魔力測定器に手を充てて魔力を流している。
試験管も驚いていた。
「すごいわね。3000近くまで伸びたわ。これで実技も受ければ首席は間違いないでしょうね」
「へっへーーーん!」
ヴィーネ義姉様は真っ先に私を見ながら自慢げにしている。
だが、3000もの数字が出たらしいのに、どうしてだろうか。
ヴィーネ義姉様が注いだ魔力量って言うほど多くなかったような気がしてしまったのは……。
「250、321、121、557、はい、最後、あなたよ!」
私は他の受験生の魔力は見ずに、目を瞑り魔力の循環をよくするための瞑想をしていた。私の番だということに気がつかず、試験管に呼ばれてしまった。
しまった、つい真剣になっていたものだから……。
「すみませんでした」
「さぁ、持てる力で全力で注ぎなさい」
私は魔力測定器に手を充てる。
ここで一つ疑問がでた。
「あの、試験管。この測定器は最大でどのくらいまで測定できるのですか?」
「え? あなたはなにを言っているの? そうね……たしか10000くらいまでなら測れたはずよ。それ以上は壊れてしまうそうだけど安心しなさい。そんな魔力の持ち主の子供なんてこの世にいないから」
「は、はい! では!」
試験管も大丈夫と言っているし、私は遠慮なくいきなり全力で魔力を注いだ。
絶対に首席を取らなければならない。
その気持ちだけで、持てるだけの魔力を全て魔力測定器にぶつけたのだ。
そして……。
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