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「ひとつ聞く。レオルド君が魔力を流した場合、このエアコンという道具は動いたか?」
「いえ……。私の魔力は元々少ないため、動かせません」
「仮に私が魔力を流したとしても発動できないだろう」
「え!? セバル様はかなりの魔力をお持ちだと聞いたことがありますが……」
「そちらのソフィーナ嬢と言ったな。今彼女が注いだ魔力量がとんでもなく多い量だったのだ。学園で授業をしてきた者ならわかることだから、レオルド君が気がつかないのも無理はないだろう」
そんなにたくさんの魔力を入れたつもりはなかったため、私が驚いてしまった。
「本来、道具に魔力を通すのは大変難易度が高いのだ。トイレや灯りなどは、一流の職人が制作し、少ない魔力量でも使えるように開発しているのだよ。だが、風や熱を伴う系統の開発は実のところ研究されている。しかし、うまく完成しないのが現状だ」
「と、いうことは、エアコンのようなものの研究はされているのですか?」
「そういうことだ」
レオルド様が大きくため息をはいた。
今までずっと頑張ってきたのに、すでに似たような物が研究されていたのだからショックもあるだろう。
しかし、ため息をはいたあと、すぐにどういうわけか笑みを浮かべていた。
「やっと……王都で研究している方々と同じようなものを試作できていたのですね……! 大変光栄です」
「そうだな。レオルド君もようやく可能性が見えてきたと思う。ずっと頑張ってきたものな。それに、この魔石というものを魔力の源にするという発想は素晴らしいよ」
「ありがとうございます! これもセバル様がずっと見てくださりアドバイスもいただけたおかげです。そして、ソフィーナもありがとうございます!」
「え? 私もですか?」
「あなたのおかげで私のやる気が何倍にもなったのです。そしてエアコンの制作に集中できるよう、家のことはすべてやってくれた。ソフィーナがいなかったらここまでできませんでしたよ」
応援したくなるくらい、レオルド様が一生懸命だったからだ。
そして今、ますますレオルド様のことが好きになった。
一生懸命頑張って作っていたものが商品化できなくても、凹むわけでもなく前を向いていた姿を見て、私は泣きそうにすらなってしまったのだ。
それはどうやらセバル様も同じだったようで……。
「商品化は難しい。だが、このエアコンを王宮で買い取ることはできないだろうか?」
「良いのですか!?」
「研究しているものよりも、レオルド君が作ってきたものの方が魔法の伝導性は高そうだ。それに、ソフィーナ嬢の魔力を注いだエアコンであれば、機能としても申し分なく使えるだろう。これを陛下の部屋に設置し使わせてもらおうかと思うのだが」
「なっ!?」
レオルド様が驚きの声と同時に、笑顔が絶えなかった。
「もちろん、ソフィーナ嬢がさらに魔力を注いでもらう必要があるのだが……」
「私は問題ありません」
「そ、そうか……。まったく信じられんほどの魔力を……。一応聞くが、先ほど注いだ魔力で疲れたり目眩を起こしたりしていないのか?」
「いえ、全く。あと同じことを百回繰り返しても大丈夫かとは思います。エアコンでは試したことはありませんが……」
「な!?」
毎日欠かさずに鍛錬していたときのことを考えると、多分一日に二百回は流せると思う。
念のために絶対に大丈夫そうな回数を伝えておいたのだが、それでもセバル様は驚かれていた。
どうして驚いているのかが、私には良くわからなかった。
エアコンを渡してから数日後、王宮から手紙と共に金貨が送られてきた。
しかも国王陛下直筆のうえ、とんでもない枚数だったのである……。
「いえ……。私の魔力は元々少ないため、動かせません」
「仮に私が魔力を流したとしても発動できないだろう」
「え!? セバル様はかなりの魔力をお持ちだと聞いたことがありますが……」
「そちらのソフィーナ嬢と言ったな。今彼女が注いだ魔力量がとんでもなく多い量だったのだ。学園で授業をしてきた者ならわかることだから、レオルド君が気がつかないのも無理はないだろう」
そんなにたくさんの魔力を入れたつもりはなかったため、私が驚いてしまった。
「本来、道具に魔力を通すのは大変難易度が高いのだ。トイレや灯りなどは、一流の職人が制作し、少ない魔力量でも使えるように開発しているのだよ。だが、風や熱を伴う系統の開発は実のところ研究されている。しかし、うまく完成しないのが現状だ」
「と、いうことは、エアコンのようなものの研究はされているのですか?」
「そういうことだ」
レオルド様が大きくため息をはいた。
今までずっと頑張ってきたのに、すでに似たような物が研究されていたのだからショックもあるだろう。
しかし、ため息をはいたあと、すぐにどういうわけか笑みを浮かべていた。
「やっと……王都で研究している方々と同じようなものを試作できていたのですね……! 大変光栄です」
「そうだな。レオルド君もようやく可能性が見えてきたと思う。ずっと頑張ってきたものな。それに、この魔石というものを魔力の源にするという発想は素晴らしいよ」
「ありがとうございます! これもセバル様がずっと見てくださりアドバイスもいただけたおかげです。そして、ソフィーナもありがとうございます!」
「え? 私もですか?」
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応援したくなるくらい、レオルド様が一生懸命だったからだ。
そして今、ますますレオルド様のことが好きになった。
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それはどうやらセバル様も同じだったようで……。
「商品化は難しい。だが、このエアコンを王宮で買い取ることはできないだろうか?」
「良いのですか!?」
「研究しているものよりも、レオルド君が作ってきたものの方が魔法の伝導性は高そうだ。それに、ソフィーナ嬢の魔力を注いだエアコンであれば、機能としても申し分なく使えるだろう。これを陛下の部屋に設置し使わせてもらおうかと思うのだが」
「なっ!?」
レオルド様が驚きの声と同時に、笑顔が絶えなかった。
「もちろん、ソフィーナ嬢がさらに魔力を注いでもらう必要があるのだが……」
「私は問題ありません」
「そ、そうか……。まったく信じられんほどの魔力を……。一応聞くが、先ほど注いだ魔力で疲れたり目眩を起こしたりしていないのか?」
「いえ、全く。あと同じことを百回繰り返しても大丈夫かとは思います。エアコンでは試したことはありませんが……」
「な!?」
毎日欠かさずに鍛錬していたときのことを考えると、多分一日に二百回は流せると思う。
念のために絶対に大丈夫そうな回数を伝えておいたのだが、それでもセバル様は驚かれていた。
どうして驚いているのかが、私には良くわからなかった。
エアコンを渡してから数日後、王宮から手紙と共に金貨が送られてきた。
しかも国王陛下直筆のうえ、とんでもない枚数だったのである……。
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