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 王宮には王都の商品関連の会長、商会長がいるそうだ。
 彼に依頼すれば正式な商品として店に流通させることができるらしい。
 しかし、店に出すまでの難易度が非常に高く、今まで何度もここで失敗してきたそうだ。

 エアコンなら大丈夫だろうと私は勝手に思っていた。
 王宮の応接室で待っていると、四十代くらいの男性が入ってきた。

「これはこれはレオルド君でしたか。それから……」
「お初にお目にかかります。レオルド=ミルフィーヌ様の婚約者、ソフィーナと申します」

 一緒に住むようになってから、今まで持っていなかった知識も色々と勉強した。
 特に、挨拶や人と関わるときの言葉遣いは念入りに。
 これもレオルド様が私を自由にさせてくれたおかげだ。

「セバル=グリフォムと申しまして、王都商会会長を務めています」

 グリフォムという仮名にすぐ反応した。
 なにかあったときのために、せめて王都にいる貴族の名前だけでも把握しておいたのだ。
 もちろん一緒に住みはじめてからだ。

「侯爵様……ですか?」
「ほう、知っていたのですね。まだお若いのにしっかりされている」

 セバル様がニコリと微笑んでくれた。
 危なかった……、ちゃんと名前を覚えておいて良かった……。

「今回はなにやらやたらと重そうだが、どのようなものだい?」
「これはエアコンと言いまして、部屋の温度を高くしたり、下げたりさせることができる道具です」
「なんと!?」

 セバル様が大変驚かれていた。これは見込みあるのではないだろうか。

「ここで試してもらっても?」
「承知しました。これは魔力を注ぎ、魔力で温風もしくは冷気を流します。鉄で挟んでいるのは、魔石単体で放置すると危険なため、安全を考慮してのものになります」
「ほう」
「今はまだ魔力を流していない状態のため、今から魔力を流します」

 レオルド様の合図とともに、私が魔力を前回と同じくらいの量を流す。
 そしてレオルド様が魔石に触れ、温風が部屋を暖めていく。
 セバル様が信じられないといった顔をしながら、なぜか私に対して視線を向けていた。

「あ、ありえん……こんなことが……」

 これなら商品化の許可ももらえるだろう。
 私はふうっと安堵のため息を吐いた。

「発想は素晴らしい。性能も文句はない。だが、これでは商品化は無理だ」
「「え!?」」

 意外な返事を受け、私とレオルド様は同時に声を出してしまう。
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