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魔道具のリスク
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「「「「「「「ご教授ありがとうございました!!」」」」」」」
聖女たちへの聖なる力を向上させる訓練が終了した。
とは言っても、私は基礎っぽいことしか教えていないし、そこまで感謝されるほどのことはしていない。
むしろ、聖女たちが私以外に七人もいることが心強くて、むしろ力が上がったら心強い。
「でも、やっぱりイデア様のような規格外の力には到底追いつけそうにありませんね……」
「ご教授の際に見せてもらった力は想像以上でした……」
「あの力を常に放出していたのですよね……?」
「まるで、全力ダッシュで走る行為を何年間も継続するような感じですよね。到底私たちにはできませんよ……」
「むしろ、そんな過酷な状況でよく従ってこれたなぁと……」
今まで社畜だったことに気がつくこともできなかったから仕方がなかった。
同じことを強要されたら断れると思う。
むしろ、そのことを聖女たちに教えてもらえて感謝している。
「私もみんなから色々と教えてもらえてためになったよ」
私の今後の仕事は、ホワイトラブリー王国で聖なる力を無理なく解放することだ。
聖女として強制的に働くという感覚から、聖女として進んで国の力になりたいと思えるような心境に変化した。
仕事ではあるが、やっていて楽しい。
これは聖女たちと一緒に関わってきたおかげである。
アメリが毎日楽しんで仕事ができていると言っていたが、その意味が私もようやく理解できた。
「ところでこれだけ聖女が集まっていれば、基礎だけでも十分だとは思うんだけれど、もっと強い力があったほうがいいの?」
「「「「「「「はい」」」」」」」
即答か。
だが、私は警告をしたほうがいいかと思った。
強い力は便利ではあるが、コントロールを謝ると、身体に大きな負担がかかってしまう。
「実はね、ホワイトラブリー王国に魔道具を作れる技師さんたちが来ていたの。そこで、聖なる力を向上させる魔道具を技師さんたちに作ってもらおうか相談したんだけどね……」
「どうしてためらうんですかぁ~?」
「私も教えてもらって知ったんだけど、その魔道具って、体内に眠っている聖なる力と空気中に流れている魔素っていう力を無理やり融合させるんだって。一度成功すれば強い力を手に入れることができるらしいんだけど、失敗したときの代償もものすごいらしくて……」
「え!? どうなるんですか?」
「最悪の場合、聖なる力が二度と使えなくなる、もしくは力が全て空気中に流れて使用者がずっと眠ったままになってしまうらしくて……。ただ、理論上の失敗する確率は五十回に一度くらいらしいんだけど」
聖女たちは無言になった。
無理もない。
技師さんが言うには、七人の聖女が全員無事に成功する確率は約八十七パーセント弱だと言っていた。
つまり、リスクが高過ぎるらしい。
「どうしてそんなに危険なことを聖女様は……?」
「私の場合は強制的に使えってそのときの陛下から言われたから知らなかったのよね。まさかそんなにリスクのある魔道具だとはしらなかった。しかも、向上できる力って持っている力の二割くらい上昇できる程度だとか……」
「と、いうことはやっぱりイデア様が元々持っていた聖なる力が規格外だったんですね~」
基礎訓練を毎日して上昇したことは間違いない。
だから、みんなも毎日訓練を欠かさなければもっと強い力を得ることはできるはずだ。
だが、知らなかったとはいえ魔道具に期待を持たせてしまったのは私である。
これは各個人の意見を尊重するしかないかと思っていた。
「私は基礎訓練で磨いていきたいと思います」
「私もです」
「同じく」
「同意」
「みんないれば無理することもありませんし」
「それに、イデア様も来たことだし怖いものなんてありませんしね」
「私はどうしようかなぁ~」
「え? マリアは使うか検討中なの!?」
「いえ、やっぱりやめておきますよ~。魔道具を使うよりもイデア様に教えてもらったほうがそれ以上の効果がありそうだなって実感ありましたからね」
みんなの意見が一致してホッとした。
♢
このあと、技師たちには申し訳ないが、聖女の魔道具は作ってもらうのをやめてもらった。
「そうか、むしろ作ってくれって言われなくて助かったぜ」
技師のトムさんは嬉しそうにしていた。
「どうしてそんなに喜んでいるのです?」
「誰も身体に異変がでないから安心したってことさ。だってよ、俺たちが作った魔道具で人が不幸になっちまったら辛いもんがある。ブラークメリルではバカ陛下が強引に作れって言うもんだから仕方なくだな……。ま、その魔道具を知っている聖女様がまた作って欲しいって言ってきたときは驚いちまったが……」
「申し訳ありません。まさか、そんなリスクがあるなんて知らなかったので」
「俺は陛下にしっかりとリスクのことも説明させた上で使わせてくれって頼んだんだがな。まぁ、どのみち作らなくて済んでよかったぜ」
「お手数おかけしました」
「だがよ、必ずもっと改良版になるよう研究して、リスクがなく聖女のために役に立ちそうな魔道具を作るからな!」
「ありがとうございます! 楽しみにしていますね!」
「まかせろ。なにしろホワイトラブリー王国では魔道具の開発のために国側から多額の支援を出してくださった。しかも集落の仲間全員分の住まいと、別の仕事まで……。おまけに無理せず開発してくれなんて言われちゃあ絶対に良いもん作らなきゃってなったぜ」
しかも、クラフト陛下が直々にそう告げてきたらしい。
聖女だけでもなく、民衆たちだけでもない。
他国からの移民の人たちにまで無理なくさせようとしてくれるのだ。
心遣いがあるクラフト陛下と知り合えて、本当に良かったと思っている。
私も、はじめてのんびりした生活ができるようになったのだ。
クラフト陛下にお礼を言わなければ。
そう思っていたのだが、この次にクラフト陛下に会ったとき、とんでもないことを宣言されてしまったのだった。
聖女たちへの聖なる力を向上させる訓練が終了した。
とは言っても、私は基礎っぽいことしか教えていないし、そこまで感謝されるほどのことはしていない。
むしろ、聖女たちが私以外に七人もいることが心強くて、むしろ力が上がったら心強い。
「でも、やっぱりイデア様のような規格外の力には到底追いつけそうにありませんね……」
「ご教授の際に見せてもらった力は想像以上でした……」
「あの力を常に放出していたのですよね……?」
「まるで、全力ダッシュで走る行為を何年間も継続するような感じですよね。到底私たちにはできませんよ……」
「むしろ、そんな過酷な状況でよく従ってこれたなぁと……」
今まで社畜だったことに気がつくこともできなかったから仕方がなかった。
同じことを強要されたら断れると思う。
むしろ、そのことを聖女たちに教えてもらえて感謝している。
「私もみんなから色々と教えてもらえてためになったよ」
私の今後の仕事は、ホワイトラブリー王国で聖なる力を無理なく解放することだ。
聖女として強制的に働くという感覚から、聖女として進んで国の力になりたいと思えるような心境に変化した。
仕事ではあるが、やっていて楽しい。
これは聖女たちと一緒に関わってきたおかげである。
アメリが毎日楽しんで仕事ができていると言っていたが、その意味が私もようやく理解できた。
「ところでこれだけ聖女が集まっていれば、基礎だけでも十分だとは思うんだけれど、もっと強い力があったほうがいいの?」
「「「「「「「はい」」」」」」」
即答か。
だが、私は警告をしたほうがいいかと思った。
強い力は便利ではあるが、コントロールを謝ると、身体に大きな負担がかかってしまう。
「実はね、ホワイトラブリー王国に魔道具を作れる技師さんたちが来ていたの。そこで、聖なる力を向上させる魔道具を技師さんたちに作ってもらおうか相談したんだけどね……」
「どうしてためらうんですかぁ~?」
「私も教えてもらって知ったんだけど、その魔道具って、体内に眠っている聖なる力と空気中に流れている魔素っていう力を無理やり融合させるんだって。一度成功すれば強い力を手に入れることができるらしいんだけど、失敗したときの代償もものすごいらしくて……」
「え!? どうなるんですか?」
「最悪の場合、聖なる力が二度と使えなくなる、もしくは力が全て空気中に流れて使用者がずっと眠ったままになってしまうらしくて……。ただ、理論上の失敗する確率は五十回に一度くらいらしいんだけど」
聖女たちは無言になった。
無理もない。
技師さんが言うには、七人の聖女が全員無事に成功する確率は約八十七パーセント弱だと言っていた。
つまり、リスクが高過ぎるらしい。
「どうしてそんなに危険なことを聖女様は……?」
「私の場合は強制的に使えってそのときの陛下から言われたから知らなかったのよね。まさかそんなにリスクのある魔道具だとはしらなかった。しかも、向上できる力って持っている力の二割くらい上昇できる程度だとか……」
「と、いうことはやっぱりイデア様が元々持っていた聖なる力が規格外だったんですね~」
基礎訓練を毎日して上昇したことは間違いない。
だから、みんなも毎日訓練を欠かさなければもっと強い力を得ることはできるはずだ。
だが、知らなかったとはいえ魔道具に期待を持たせてしまったのは私である。
これは各個人の意見を尊重するしかないかと思っていた。
「私は基礎訓練で磨いていきたいと思います」
「私もです」
「同じく」
「同意」
「みんないれば無理することもありませんし」
「それに、イデア様も来たことだし怖いものなんてありませんしね」
「私はどうしようかなぁ~」
「え? マリアは使うか検討中なの!?」
「いえ、やっぱりやめておきますよ~。魔道具を使うよりもイデア様に教えてもらったほうがそれ以上の効果がありそうだなって実感ありましたからね」
みんなの意見が一致してホッとした。
♢
このあと、技師たちには申し訳ないが、聖女の魔道具は作ってもらうのをやめてもらった。
「そうか、むしろ作ってくれって言われなくて助かったぜ」
技師のトムさんは嬉しそうにしていた。
「どうしてそんなに喜んでいるのです?」
「誰も身体に異変がでないから安心したってことさ。だってよ、俺たちが作った魔道具で人が不幸になっちまったら辛いもんがある。ブラークメリルではバカ陛下が強引に作れって言うもんだから仕方なくだな……。ま、その魔道具を知っている聖女様がまた作って欲しいって言ってきたときは驚いちまったが……」
「申し訳ありません。まさか、そんなリスクがあるなんて知らなかったので」
「俺は陛下にしっかりとリスクのことも説明させた上で使わせてくれって頼んだんだがな。まぁ、どのみち作らなくて済んでよかったぜ」
「お手数おかけしました」
「だがよ、必ずもっと改良版になるよう研究して、リスクがなく聖女のために役に立ちそうな魔道具を作るからな!」
「ありがとうございます! 楽しみにしていますね!」
「まかせろ。なにしろホワイトラブリー王国では魔道具の開発のために国側から多額の支援を出してくださった。しかも集落の仲間全員分の住まいと、別の仕事まで……。おまけに無理せず開発してくれなんて言われちゃあ絶対に良いもん作らなきゃってなったぜ」
しかも、クラフト陛下が直々にそう告げてきたらしい。
聖女だけでもなく、民衆たちだけでもない。
他国からの移民の人たちにまで無理なくさせようとしてくれるのだ。
心遣いがあるクラフト陛下と知り合えて、本当に良かったと思っている。
私も、はじめてのんびりした生活ができるようになったのだ。
クラフト陛下にお礼を言わなければ。
そう思っていたのだが、この次にクラフト陛下に会ったとき、とんでもないことを宣言されてしまったのだった。
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