14 / 27
【別サイド】革命の予感
しおりを挟む
「お忙しいところたびたび申し訳ございません。クラフト陛下に大至急報告が……」
「宰相か、構わぬよ。一体どうしたのだ?」
イデアが強大な結界を展開した日の昼過ぎころ。
聖女のことは当事者たちに任せ、自身の職務を全うするため王室へと戻ったすぐ後のことだった。
「ブラークメリル王国からとんでもない大物がお越しです」
「まさか……ロブリー殿か……?」
「いえ、権力ではなく技術面での大物です。陛下もよくご存知のお方たちですよ!」
「なんと! 王宮に来ているのか!?」
「はい。人数が多いそうで、代表の者たちだけが出向いておりますが」
「すぐ準備し向かう!」
クラフトがイデアの聖女としての資質に驚いてから束の間だった。
またしてもクラフトにとっては驚きの出来事だったのだ。
♢
「よくぞおいでくださった。しかも揃いも揃って……」
「ご無沙汰しておりますクラフト陛下殿。私どものようなブラークメリル王国の集落の端くれの人間を覚えてくださっていて光栄でございます」
「なにを言っている……。其方らの作られた魔道具は素晴らしい。特に音声を記録したり再生できる魔道具は重宝させていただいている」
「もったいなきお言葉……」
ブラークメリル王国で活躍していた技術士たちは、クラフトに向かって一斉に跪く。
「ところで、一体どのような用件で足を運んでくださったのか伺っても?」
「実は……」
「かしら……はっきり言ってやってくだせえ」
「もう俺たちには関係のないことですからっ!」
クラフトは、彼らがなにか言い辛そうなことを聞いてしまったのかと思い、止めようとした。
だが、かしらと言われていた集落の代表であるトムは、勇気を出し発言したのだった。
「ブラークメリル王国で無茶な政策が始まり、もう私どもには生活のしようがなく逃げてきました。大勢で押しかけるような行為をしてしまい誠に申し訳なく……」
「いや、押し掛けとは思っておらぬから気にせんでいい。だが、一体生活もできなくなるような政策とはどういうことだ?」
「ロブリー陛下は経費節約を強く考えておられるようでした。ただ、経費節約を全国民にまで強要させようとして、物品の購入のたびに同額を税として徴収する制度が始まってしまい……」
「無茶苦茶な……」
「それだけでなく、噂では聖女様までも追放されてしまったようで、結界が完全に消えてしまいました」
「あぁ……それは知っている」
クラフトは信じられないような表情をしながら肩を落とす。
ブラークメリル王国に住んでいる人たちがあまりにも過酷な状況になってしまっている。
そうクラフトは思い、なにか民衆の力になれないかとすぐに考えていたのだった。
「私たちの仕事は魔道具の開発です。このままでは開発ができたとしても生活できるほどの販売ができなくなり、やがては集落全員共倒れとなってしまうでしょう。そうならないために、最後の手段としてホワイトラブリー王国に助けを求めて来た次第です」
「ふむ……。むしろ助けて欲しいのは我々の方だが……」
「と、言いますと?」
クラフトは他国の民衆の力にもなりたいとは思っても、自国の運営ですら四苦八苦状態だ。
だからこそトム率いる技術者たちが来てくれたことで、人匙の希望の光が差し込んだような気分だった。
クラフトは恥じたり惜しむこともなく頼むような形で告げた。
「はっきり言って其方らが持つ技術、知恵、人脈は素晴らしいものがある。むしろ望むのであれば、ホワイトラブリー王国でその力を貸していただきたいくらいだ」
「もちろんそのつもりです。ですが、概ね百人の集落に住んでいた者全員をかくまっていただきたく……もちろんそれ相応の恩返しが出来るように魔道具の開発もしっかりと行うつもりです」
クラフトは宰相と顔を一度合わせる。
宰相も微笑みながら、ホワイトラブリー王国が良い方向に変わっていける。
そう期待をせずにはいられなかった。
「全力を持って支援、住居の提供をしよう!」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「なお、聖女イデアは我が国で聖なる力を発動してくれている」
「なんと! では聖女様もホワイトラブリー王国で救われたのですな!」
「むしろ助けられている。外の内側の結界はイデアによって作られたものだ」
トムたちは信じられないような表情で互いの顔を見合わせる。
「あれほどの結界はブラックメリル王国でもみたことがありません」
「おそらく陛下たちに助けられ、能力をより活かせるようになったのでしょうな」
「いやはや、こちらでも聖女様の助けがあると思うと心強いです!」
この後、クラフトの指示により彼らに対して惜しみなく援助金を提供し、魔道具の開発に専念できるような環境を提供することになる。
ホワイトラブリー王国に有能な技術者が来たことによって、状況が大きく変わるのは、まだ先のお話。
「宰相か、構わぬよ。一体どうしたのだ?」
イデアが強大な結界を展開した日の昼過ぎころ。
聖女のことは当事者たちに任せ、自身の職務を全うするため王室へと戻ったすぐ後のことだった。
「ブラークメリル王国からとんでもない大物がお越しです」
「まさか……ロブリー殿か……?」
「いえ、権力ではなく技術面での大物です。陛下もよくご存知のお方たちですよ!」
「なんと! 王宮に来ているのか!?」
「はい。人数が多いそうで、代表の者たちだけが出向いておりますが」
「すぐ準備し向かう!」
クラフトがイデアの聖女としての資質に驚いてから束の間だった。
またしてもクラフトにとっては驚きの出来事だったのだ。
♢
「よくぞおいでくださった。しかも揃いも揃って……」
「ご無沙汰しておりますクラフト陛下殿。私どものようなブラークメリル王国の集落の端くれの人間を覚えてくださっていて光栄でございます」
「なにを言っている……。其方らの作られた魔道具は素晴らしい。特に音声を記録したり再生できる魔道具は重宝させていただいている」
「もったいなきお言葉……」
ブラークメリル王国で活躍していた技術士たちは、クラフトに向かって一斉に跪く。
「ところで、一体どのような用件で足を運んでくださったのか伺っても?」
「実は……」
「かしら……はっきり言ってやってくだせえ」
「もう俺たちには関係のないことですからっ!」
クラフトは、彼らがなにか言い辛そうなことを聞いてしまったのかと思い、止めようとした。
だが、かしらと言われていた集落の代表であるトムは、勇気を出し発言したのだった。
「ブラークメリル王国で無茶な政策が始まり、もう私どもには生活のしようがなく逃げてきました。大勢で押しかけるような行為をしてしまい誠に申し訳なく……」
「いや、押し掛けとは思っておらぬから気にせんでいい。だが、一体生活もできなくなるような政策とはどういうことだ?」
「ロブリー陛下は経費節約を強く考えておられるようでした。ただ、経費節約を全国民にまで強要させようとして、物品の購入のたびに同額を税として徴収する制度が始まってしまい……」
「無茶苦茶な……」
「それだけでなく、噂では聖女様までも追放されてしまったようで、結界が完全に消えてしまいました」
「あぁ……それは知っている」
クラフトは信じられないような表情をしながら肩を落とす。
ブラークメリル王国に住んでいる人たちがあまりにも過酷な状況になってしまっている。
そうクラフトは思い、なにか民衆の力になれないかとすぐに考えていたのだった。
「私たちの仕事は魔道具の開発です。このままでは開発ができたとしても生活できるほどの販売ができなくなり、やがては集落全員共倒れとなってしまうでしょう。そうならないために、最後の手段としてホワイトラブリー王国に助けを求めて来た次第です」
「ふむ……。むしろ助けて欲しいのは我々の方だが……」
「と、言いますと?」
クラフトは他国の民衆の力にもなりたいとは思っても、自国の運営ですら四苦八苦状態だ。
だからこそトム率いる技術者たちが来てくれたことで、人匙の希望の光が差し込んだような気分だった。
クラフトは恥じたり惜しむこともなく頼むような形で告げた。
「はっきり言って其方らが持つ技術、知恵、人脈は素晴らしいものがある。むしろ望むのであれば、ホワイトラブリー王国でその力を貸していただきたいくらいだ」
「もちろんそのつもりです。ですが、概ね百人の集落に住んでいた者全員をかくまっていただきたく……もちろんそれ相応の恩返しが出来るように魔道具の開発もしっかりと行うつもりです」
クラフトは宰相と顔を一度合わせる。
宰相も微笑みながら、ホワイトラブリー王国が良い方向に変わっていける。
そう期待をせずにはいられなかった。
「全力を持って支援、住居の提供をしよう!」
「「「「ありがとうございます!!」」」」
「なお、聖女イデアは我が国で聖なる力を発動してくれている」
「なんと! では聖女様もホワイトラブリー王国で救われたのですな!」
「むしろ助けられている。外の内側の結界はイデアによって作られたものだ」
トムたちは信じられないような表情で互いの顔を見合わせる。
「あれほどの結界はブラックメリル王国でもみたことがありません」
「おそらく陛下たちに助けられ、能力をより活かせるようになったのでしょうな」
「いやはや、こちらでも聖女様の助けがあると思うと心強いです!」
この後、クラフトの指示により彼らに対して惜しみなく援助金を提供し、魔道具の開発に専念できるような環境を提供することになる。
ホワイトラブリー王国に有能な技術者が来たことによって、状況が大きく変わるのは、まだ先のお話。
9
お気に入りに追加
1,162
あなたにおすすめの小説
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
悪役令嬢と呼ばれて追放されましたが、先祖返りの精霊種だったので、神殿で崇められる立場になりました。母国は加護を失いましたが仕方ないですね。
蒼衣翼
恋愛
古くから続く名家の娘、アレリは、古い盟約に従って、王太子の妻となるさだめだった。
しかし、古臭い伝統に反発した王太子によって、ありもしない罪をでっち上げられた挙げ句、国外追放となってしまう。
自分の意思とは関係ないところで、運命を翻弄されたアレリは、憧れだった精霊信仰がさかんな国を目指すことに。
そこで、自然のエネルギーそのものである精霊と語り合うことの出来るアレリは、神殿で聖女と崇められ、優しい青年と巡り合った。
一方、古い盟約を破った故国は、精霊の加護を失い、衰退していくのだった。
※カクヨムさまにも掲載しています。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
妹に裏切られた聖女は娼館で競りにかけられてハーレムに迎えられる~あれ? ハーレムの主人って妹が執心してた相手じゃね?~
サイコちゃん
恋愛
妹に裏切られたアナベルは聖女として娼館で競りにかけられていた。聖女に恨みがある男達は殺気立った様子で競り続ける。そんな中、謎の美青年が驚くべき値段でアナベルを身請けした。彼はアナベルをハーレムへ迎えると言い、船に乗せて隣国へと運んだ。そこで出会ったのは妹が執心してた隣国の王子――彼がこのハーレムの主人だったのだ。外交と称して、隣国の王子を落とそうとやってきた妹は彼の寵姫となった姉を見て、気も狂わんばかりに怒り散らす……それを見詰める王子の目に軽蔑の色が浮かんでいることに気付かぬまま――
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!
近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。
「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」
声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています。
殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?
星ふくろう
恋愛
聖女認定の儀式をするから王宮に来いと招聘された、クルード女公爵ハーミア。
数人の聖女候補がいる中、次期皇帝のエミリオ皇太子と婚約している彼女。
周囲から最有力候補とみられていたらしい。
未亡人の自分でも役に立てるならば、とその命令を受けたのだった。
そして、聖女認定の日、登城した彼女を待っていたのは借金取りのザイール大公。
女癖の悪い、極悪なヤクザ貴族だ。
その一週間前、ポーカーで負けた殿下は婚約者を賭けの対象にしていて負けていた。
ハーミアは借金のカタにザイール大公に取り押さえられたのだ。
そして、放蕩息子のエミリオ皇太子はハーミアに宣言する。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
平然と婚約破棄をするエミリオ皇太子とその横でほくそ笑むカーラ。
聖女認定どころではなく、ハーミアは怒り大公とその場を後にする。
そして、聖女は選ばれなかった.
ハーミアはヤクザ大公から債権を回収し、魔王へとそれを売り飛ばす。
魔王とハーミアは共謀して帝国から債権回収をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる