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【別サイド】革命の予感

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「お忙しいところたびたび申し訳ございません。クラフト陛下に大至急報告が……」
「宰相か、構わぬよ。一体どうしたのだ?」

 イデアが強大な結界を展開した日の昼過ぎころ。
 聖女のことは当事者たちに任せ、自身の職務を全うするため王室へと戻ったすぐ後のことだった。

「ブラークメリル王国からとんでもない大物がお越しです」
「まさか……ロブリー殿か……?」

「いえ、権力ではなく技術面での大物です。陛下もよくご存知のお方たちですよ!」
「なんと! 王宮に来ているのか!?」
「はい。人数が多いそうで、代表の者たちだけが出向いておりますが」
「すぐ準備し向かう!」

 クラフトがイデアの聖女としての資質に驚いてから束の間だった。
 またしてもクラフトにとっては驚きの出来事だったのだ。



「よくぞおいでくださった。しかも揃いも揃って……」
「ご無沙汰しておりますクラフト陛下殿。私どものようなブラークメリル王国の集落の端くれの人間を覚えてくださっていて光栄でございます」

「なにを言っている……。其方らの作られた魔道具は素晴らしい。特に音声を記録したり再生できる魔道具は重宝させていただいている」
「もったいなきお言葉……」

 ブラークメリル王国で活躍していた技術士たちは、クラフトに向かって一斉に跪く。

「ところで、一体どのような用件で足を運んでくださったのか伺っても?」
「実は……」

「かしら……はっきり言ってやってくだせえ」
「もう俺たちには関係のないことですからっ!」

 クラフトは、彼らがなにか言い辛そうなことを聞いてしまったのかと思い、止めようとした。
 だが、かしらと言われていた集落の代表であるトムは、勇気を出し発言したのだった。

「ブラークメリル王国で無茶な政策が始まり、もう私どもには生活のしようがなく逃げてきました。大勢で押しかけるような行為をしてしまい誠に申し訳なく……」

「いや、押し掛けとは思っておらぬから気にせんでいい。だが、一体生活もできなくなるような政策とはどういうことだ?」

「ロブリー陛下は経費節約を強く考えておられるようでした。ただ、経費節約を全国民にまで強要させようとして、物品の購入のたびに同額を税として徴収する制度が始まってしまい……」
「無茶苦茶な……」

「それだけでなく、噂では聖女様までも追放されてしまったようで、結界が完全に消えてしまいました」
「あぁ……それは知っている」

 クラフトは信じられないような表情をしながら肩を落とす。
 ブラークメリル王国に住んでいる人たちがあまりにも過酷な状況になってしまっている。
 そうクラフトは思い、なにか民衆の力になれないかとすぐに考えていたのだった。

「私たちの仕事は魔道具の開発です。このままでは開発ができたとしても生活できるほどの販売ができなくなり、やがては集落全員共倒れとなってしまうでしょう。そうならないために、最後の手段としてホワイトラブリー王国に助けを求めて来た次第です」

「ふむ……。むしろ助けて欲しいのは我々の方だが……」
「と、言いますと?」

 クラフトは他国の民衆の力にもなりたいとは思っても、自国の運営ですら四苦八苦状態だ。
 だからこそトム率いる技術者たちが来てくれたことで、人匙の希望の光が差し込んだような気分だった。
 クラフトは恥じたり惜しむこともなく頼むような形で告げた。

「はっきり言って其方らが持つ技術、知恵、人脈は素晴らしいものがある。むしろ望むのであれば、ホワイトラブリー王国でその力を貸していただきたいくらいだ」
「もちろんそのつもりです。ですが、概ね百人の集落に住んでいた者全員をかくまっていただきたく……もちろんそれ相応の恩返しが出来るように魔道具の開発もしっかりと行うつもりです」

 クラフトは宰相と顔を一度合わせる。
 宰相も微笑みながら、ホワイトラブリー王国が良い方向に変わっていける。
 そう期待をせずにはいられなかった。

「全力を持って支援、住居の提供をしよう!」

「「「「ありがとうございます!!」」」」

「なお、聖女イデアは我が国で聖なる力を発動してくれている」
「なんと! では聖女様もホワイトラブリー王国で救われたのですな!」
「むしろ助けられている。外の内側の結界はイデアによって作られたものだ」

 トムたちは信じられないような表情で互いの顔を見合わせる。

「あれほどの結界はブラックメリル王国でもみたことがありません」
「おそらく陛下たちに助けられ、能力をより活かせるようになったのでしょうな」
「いやはや、こちらでも聖女様の助けがあると思うと心強いです!」

 この後、クラフトの指示により彼らに対して惜しみなく援助金を提供し、魔道具の開発に専念できるような環境を提供することになる。
 ホワイトラブリー王国に有能な技術者が来たことによって、状況が大きく変わるのは、まだ先のお話。
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