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取引の真実(前)
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「聖女を我が国に引き取るような話は聞いていない」
「「え!?」」
第二王子のジオン殿下が不思議そうな表情をしながら頬を掻いていた。
私とアメリはしばらく放心状態になってしまい、固まってしまう。
「だが、アメリが嘘を言うような者ではないことも知っている。詳しい事情は兄上も交え、王宮内で聞くことにしよう。それに長旅で疲れているだろう? ついてきたまえ」
「あ、ありがとうございます」
「ジオン様、恐れ入ります」
お礼を言った後、ジオン殿下は馬車に戻り動き出す。
私たちの乗っている馬車もそれに続き、しばらく進むと王宮の入り口に到着した。
馬車から降りて、改めてジオン殿下にお辞儀をする。
「疑うような態度ですまない。なにしろ聖女ともあろうお方がいきなり訪問してくるのを信じろと言うのも本来は難しいところでな……」
「お気になさらないでください。突然の訪問になってしまい度々ではありますが申し訳──」
「いや、俺としてはアメリと再会できて嬉しいからむしろ君には感謝している」
「はい?」
「積もる話は後だ。中へ入りたまえ」
すこぶる早足でジオン殿下が王宮の奥へと進んでいく。
道中、兵士たちがこちらを見ては深くお辞儀をしてくれるので、私は全員にお辞儀をしていたため所々駆け足で遅れを取り戻す。
ちょっと動いただけで息がかなり上がってしまっている。
さすがに雑草や木のみ、キノコだけで食を繋いでいたためか体力が落ちてしまったらしい。
ちょっと目眩もするが、もう少しがんばれ私!
♢
「……ふむ、では君が聖女イデアとだと……?」
ジオン殿下がまず国王陛下に簡単に私が取引で買われて来たということを話してくれた。
私はすぐに深々と頭を下げる。
「お初にお目にかかります。イデアと申します」
「クラフト=ホワイトラブリーだ。新米だが国王を務めさせてもらっている」
ジオン殿下も相当な男前だが、クラフト陛下は更にその上をいく。
一瞬見ただけで魅了させてしまうであろう容姿、整った青色の伸びた髪、私よりも顔一つ分高い高身長、陛下という威厳というよりも、穏やかそうな表情をしたお顔。
うっかり一目惚れしそうになるほどだった。
「イデアと言ったな。単刀直入に言わせてもらうが、君を取引で買い取った覚えはない」
「そうですか……」
ロブリー陛下はお金に関しては煩いけれど、人を騙すようなことはしないはずだ。
しかも、王金貨五十枚の件をやたらと自信満々に語っていた。
だからこそ、私は困惑している。
「いや、待てよ……。ジオンよ、確か例の魔道具で以前ロブリー殿と対談した時の会話は録音していたよな?」
「はい。ブラークメリル王国の技術士から買い取った魔道具のことですな? 確かに記録したはずです」
「今持っているか?」
「はい、ここに」
ジオン殿下は胸ポケットから小さな金属のようなものを取り出した。
「「え!?」」
第二王子のジオン殿下が不思議そうな表情をしながら頬を掻いていた。
私とアメリはしばらく放心状態になってしまい、固まってしまう。
「だが、アメリが嘘を言うような者ではないことも知っている。詳しい事情は兄上も交え、王宮内で聞くことにしよう。それに長旅で疲れているだろう? ついてきたまえ」
「あ、ありがとうございます」
「ジオン様、恐れ入ります」
お礼を言った後、ジオン殿下は馬車に戻り動き出す。
私たちの乗っている馬車もそれに続き、しばらく進むと王宮の入り口に到着した。
馬車から降りて、改めてジオン殿下にお辞儀をする。
「疑うような態度ですまない。なにしろ聖女ともあろうお方がいきなり訪問してくるのを信じろと言うのも本来は難しいところでな……」
「お気になさらないでください。突然の訪問になってしまい度々ではありますが申し訳──」
「いや、俺としてはアメリと再会できて嬉しいからむしろ君には感謝している」
「はい?」
「積もる話は後だ。中へ入りたまえ」
すこぶる早足でジオン殿下が王宮の奥へと進んでいく。
道中、兵士たちがこちらを見ては深くお辞儀をしてくれるので、私は全員にお辞儀をしていたため所々駆け足で遅れを取り戻す。
ちょっと動いただけで息がかなり上がってしまっている。
さすがに雑草や木のみ、キノコだけで食を繋いでいたためか体力が落ちてしまったらしい。
ちょっと目眩もするが、もう少しがんばれ私!
♢
「……ふむ、では君が聖女イデアとだと……?」
ジオン殿下がまず国王陛下に簡単に私が取引で買われて来たということを話してくれた。
私はすぐに深々と頭を下げる。
「お初にお目にかかります。イデアと申します」
「クラフト=ホワイトラブリーだ。新米だが国王を務めさせてもらっている」
ジオン殿下も相当な男前だが、クラフト陛下は更にその上をいく。
一瞬見ただけで魅了させてしまうであろう容姿、整った青色の伸びた髪、私よりも顔一つ分高い高身長、陛下という威厳というよりも、穏やかそうな表情をしたお顔。
うっかり一目惚れしそうになるほどだった。
「イデアと言ったな。単刀直入に言わせてもらうが、君を取引で買い取った覚えはない」
「そうですか……」
ロブリー陛下はお金に関しては煩いけれど、人を騙すようなことはしないはずだ。
しかも、王金貨五十枚の件をやたらと自信満々に語っていた。
だからこそ、私は困惑している。
「いや、待てよ……。ジオンよ、確か例の魔道具で以前ロブリー殿と対談した時の会話は録音していたよな?」
「はい。ブラークメリル王国の技術士から買い取った魔道具のことですな? 確かに記録したはずです」
「今持っているか?」
「はい、ここに」
ジオン殿下は胸ポケットから小さな金属のようなものを取り出した。
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