上 下
9 / 12

9 ドラゴンと対峙

しおりを挟む
「こんなところで小型ドラゴンタイプに遭遇するとは想定外ですね」

 近くに村があるのにモンスターがいるとは……。
 しかも人を好んで食べるタイプの肉食系の小型ドラゴンタイプだ。
 小型と言っても四メートルほどの身長があるので、一般人が戦って勝てる相手ではない。

「シャーリー殿よ、危険だから下がっていたまえ」
「は!? サイバー団長は何を言っているのですか?」

 どうも最近の団長はおかしい。
 馬車に乗ってからか。

 今までだったら一緒に行くぞと言って戦うんだが……。

「シャーリー殿が怪我をしてはたまったものではないからな。俺が倒す」
「いえ、さすがにこいつ相手に団長一人では危険かと……」

『ギャーーーゴオオオ!!』

 揉めている間に私の方へと牙を向けてきた。
 どうやらこの小型ドラゴンは雄らしい。
 人間の性別を見分けて食べる習性があるのだ。

 久しぶりに剣を抜いてドラゴンに向かう。

「よせシャーリー!」

 ん、今私のことを名前だけで呼んだような気がした。
 お構いなくいつも通りに難なくバッサリと敵の弱点を見抜いて急所に剣を刺す。

『ゴギャアアアアアッ!!』

 さすが小型ドラゴンだ。
 一撃で倒せなかったので、何度も切り刻んで討伐した。

「サイバー団長、一体どうしたというのですか? 最近のサイバー団長はおかしいですよ……」
「怪我はないか!? 大丈夫か!?」
「いえ、あまりからかわないでいただけますか? 私がこの程度のモンスターを相手にやられるとでも?」
「い、いや、すまん……」

 妙に私のことを心配しすぎているような気がする。
 今までこんなことなかったので、流石に不思議だ。

「せめて、モンスターの肉や骨は俺が始末しておこう……」
「ありがとうございます、助かります」

 騎士は討伐と同時に、素材になる部位を回収する作業も行う。
 正直言って私はこの類が一番苦手だ。
 逆に団長はこの作業が一番優れている。

 私と団長でコンビを組んだら良い騎士団チームになれるんだけどな。

「さきほどはすまなかった……。わかってはいるんだが、シャーリー殿が怪我をしてしまったらどうしようかと……」
「いつも訓練でだってそれなりに怪我はしますし、他の者だって怪我は当たり前なんですけれど……」
「そ、それはわかっている。本来騎士団全員でかからないと倒せないような小型ドラゴンも一人で討伐できる実力を持っていることだって重々承知している。だが……今の俺はただただ心配になってしまっているんだ。許せ」

 深々と頭を下げてきた。
 団長らしくもない。

「一体なぜ!?」
「いや……それは……」
「なぜですか!?」

 流石に何日も一緒にいるので、心配なのだ。
 変な毒キノコでも食べて気がおかしくなってしまったんじゃないだろうか。

「怒らないか?」
「言わないと怒ります」
「わかった……コイツを片付けてから話す」
「わかりました」

 そんなにかしこまるような悩みでも抱えているのだろうか。
 汚れた剣を磨きながら団長の作業が終えるのをゆっくりと待っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました

日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」  公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。  それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。  そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。  ※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。

【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない 

堀 和三盆
恋愛
 一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。  信じられなかった。  母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。  そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。  日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。

【完結】私の婚約者は妹のおさがりです

葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」 サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。 ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。 そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……? 妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。 「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」 リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。 小説家になろう様でも別名義にて連載しています。 ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください

迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。 アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。 断るに断れない状況での婚姻の申し込み。 仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。 優しい人。 貞節と名高い人。 一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。 細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。 私も愛しております。 そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。 「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」 そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。 優しかったアナタは幻ですか? どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

彼の過ちと彼女の選択

浅海 景
恋愛
伯爵令嬢として育てられていたアンナだが、両親の死によって伯爵家を継いだ伯父家族に虐げられる日々を送っていた。義兄となったクロードはかつて優しい従兄だったが、アンナに対して冷淡な態度を取るようになる。 そんな中16歳の誕生日を迎えたアンナには縁談の話が持ち上がると、クロードは突然アンナとの婚約を宣言する。何を考えているか分からないクロードの言動に不安を募らせるアンナは、クロードのある一言をきっかけにパニックに陥りベランダから転落。 一方、トラックに衝突したはずの杏奈が目を覚ますと見知らぬ男性が傍にいた。同じ名前の少女と中身が入れ替わってしまったと悟る。正直に話せば追い出されるか病院行きだと考えた杏奈は記憶喪失の振りをするが……。

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

処理中です...