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デインゲル王国
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「やはりルビーは速いな! 馬で移動してた頃は何日もかけなければデインゲル王国へ辿り着けなかった。二時間もかかっていないだろう……」
ルビーが急成長したおかげだ。
今までだとこんな遠くまで来たら、カサラス王国で発動している加護だって一時的に解けていた。
だが、全くその感覚がない。
「ところで、本当にこのまま王宮へ向かってしまって良いのですか?」
「構わない。事前にこうなる可能性があることを伝えていたからな」
一体いつから伝えていたのだろうか。
カルム様の指示どおり、デインゲル王国の王都、中心部にある大きな王宮へ到着した。
実は、私はここへ来るのは二回目である。
幼い頃、何かのパーティーでラファエルに連れて来られたことがあったのだ。
当時の記憶が曖昧で、そのことしか覚えていないが。
王宮へ到着すると、周りにいた兵士たちがひどく慌てた様子でこちらへ近づいてきた。
「な……、なにものだ?」
「突然の訪問を許してほしい。私はカルム=カサラスで、こちらは聖女リリアである」
「では、あなたが噂の聖女様で⁉︎」
「噂……?」
「大変失礼いたしました! どうぞお通りください」
チェックとかしなくていいのだろうか。
カルム様も、「うむ」とだけ言って王宮の中へ入っていこうとした。
「カルム様、そんなにアッサリと他国の王宮へ入っちゃって良いのですか?」
「この国ではすでにリリアの噂で持ちきりだと聞いている。故にリリアが名を名乗った瞬間に兵士の態度も変わったであろう」
「いつの間に……」
未だに状況がよくわからない。
ともあれ、本来は何度も身分のチェックをしなければ通過できないような王宮にすんなりと入れたし、良しとしておく。
王宮の中心部、王座の間で待っていたのは……。
「よくぞ来てくださった‼︎ 心から歓迎しますぞ‼︎」
「ご無沙汰しておりますカイエン陛下。なかなかご挨拶に来れず申し訳ない」
「いやいや、貴国は無理なさらずとも……。だが、ここまで来たということは、やはり聖女様のお力が」
「そうです。ようやく我が国もこちらリリアの活躍により活気が出てきましたよ。貴国には今までのお礼をどうしても言いたかったので」
「ご丁寧に。さすがカルム殿ですな。相変わらずのご配慮嬉しく思います」
カイエンと呼んでいたお方は、私の方をじっと見てきた。
「リリア様、この度は我が国に再びお越しくださりありがとうございます。成長されて最初はわかりませんでしたよ」
どうしよう。
私はカイエン陛下のことを覚えていない。
これはとんでもなく失礼なことになってしまいそうだ。
言葉に悩む。
「はっはっは、リリア様よ。そう焦ることもありませぬ。私のことを初対面と思っているのでしょう?」
「も……申し訳ありません。実は昔ここへ来たことだけは覚えているのですが、それ以外の記憶が曖昧で……」
「な……⁉︎ それは誠か?」
「はい……」
なぜかカルム様がひどく驚いているようだった。
カイエン様は、特に驚くこともなく平然としている。
「無理もないでしょうな。リリア様の側近にいた王子が、リリア様に対して記憶を抹消する魔道具を与えていたのですから……」
「え⁉︎ ラファエル……さまがですか⁉︎」
ルビーが急成長したおかげだ。
今までだとこんな遠くまで来たら、カサラス王国で発動している加護だって一時的に解けていた。
だが、全くその感覚がない。
「ところで、本当にこのまま王宮へ向かってしまって良いのですか?」
「構わない。事前にこうなる可能性があることを伝えていたからな」
一体いつから伝えていたのだろうか。
カルム様の指示どおり、デインゲル王国の王都、中心部にある大きな王宮へ到着した。
実は、私はここへ来るのは二回目である。
幼い頃、何かのパーティーでラファエルに連れて来られたことがあったのだ。
当時の記憶が曖昧で、そのことしか覚えていないが。
王宮へ到着すると、周りにいた兵士たちがひどく慌てた様子でこちらへ近づいてきた。
「な……、なにものだ?」
「突然の訪問を許してほしい。私はカルム=カサラスで、こちらは聖女リリアである」
「では、あなたが噂の聖女様で⁉︎」
「噂……?」
「大変失礼いたしました! どうぞお通りください」
チェックとかしなくていいのだろうか。
カルム様も、「うむ」とだけ言って王宮の中へ入っていこうとした。
「カルム様、そんなにアッサリと他国の王宮へ入っちゃって良いのですか?」
「この国ではすでにリリアの噂で持ちきりだと聞いている。故にリリアが名を名乗った瞬間に兵士の態度も変わったであろう」
「いつの間に……」
未だに状況がよくわからない。
ともあれ、本来は何度も身分のチェックをしなければ通過できないような王宮にすんなりと入れたし、良しとしておく。
王宮の中心部、王座の間で待っていたのは……。
「よくぞ来てくださった‼︎ 心から歓迎しますぞ‼︎」
「ご無沙汰しておりますカイエン陛下。なかなかご挨拶に来れず申し訳ない」
「いやいや、貴国は無理なさらずとも……。だが、ここまで来たということは、やはり聖女様のお力が」
「そうです。ようやく我が国もこちらリリアの活躍により活気が出てきましたよ。貴国には今までのお礼をどうしても言いたかったので」
「ご丁寧に。さすがカルム殿ですな。相変わらずのご配慮嬉しく思います」
カイエンと呼んでいたお方は、私の方をじっと見てきた。
「リリア様、この度は我が国に再びお越しくださりありがとうございます。成長されて最初はわかりませんでしたよ」
どうしよう。
私はカイエン陛下のことを覚えていない。
これはとんでもなく失礼なことになってしまいそうだ。
言葉に悩む。
「はっはっは、リリア様よ。そう焦ることもありませぬ。私のことを初対面と思っているのでしょう?」
「も……申し訳ありません。実は昔ここへ来たことだけは覚えているのですが、それ以外の記憶が曖昧で……」
「な……⁉︎ それは誠か?」
「はい……」
なぜかカルム様がひどく驚いているようだった。
カイエン様は、特に驚くこともなく平然としている。
「無理もないでしょうな。リリア様の側近にいた王子が、リリア様に対して記憶を抹消する魔道具を与えていたのですから……」
「え⁉︎ ラファエル……さまがですか⁉︎」
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