上 下
17 / 19

17 【ザグレーム視点】ざまぁみろと思っていたのだが

しおりを挟む
 メアリーナのやつ、やはりとんでもない奴だった……。
 俺はあんな凄い人間と本当に結婚していたのだろうか。

 ギルドの冒険者なんてどれほど凄いのかよく知らなかったから、ただ金を持っているというだけで口説いて結婚した。

 今回の大爆発に巻き込まれても、メアリーナの肉体だけは無事で、意識不明の重体で済んでいると聞くのだから驚きだ。

「あんなに強い存在だったのなら……」

 シャーラは誰よりも可愛くまさに俺の理想だった。だが、もしもメアリーナがあれほどの凄い人間だと知っていたら愛人にすることもなかったのかもしれない。
 とはいえ、もう俺たちには助かる術はないんだ。

 今、判決が言い渡される。

「其方らの数々の罪、そして王都を爆破しようとした罰、情状酌量の余地は一切無しで死刑だ。魔獣の餌として提供する」

 裁判長の発言に対して、俺やシャーラ、それに三女誰一人反論はしなかった。
 もはや何を言っても無駄だろうから。

「くそう……。こんなことなら最初からシャーラと不倫などしなければ……」
「ザグレームさま! な……なんで今更そんなこと言うのです!?」
「当然だ! お前さえいなければ今頃メアリーナと幸せに過ごせていたのだぞ!」

「静粛に!!」

 裁判長が吠えているが、どうせ俺たちは死ぬんだ。構うものか。

「ふざけないでよっ! 私がどれほどザグレームさまのことを愛していたか……。あなたの失態をフォローしてきたのは私よ!」
「なんだと! 罪をなすりつけるなよ!」
「そっちこそ!!」

「静粛に!!」

 あっさりと警備兵に捕らえられ、そのまま連行されてしまう。
 その先にいたのは情けない顔をした王子だった。

「ザグレームよ、お前の罪、魔獣に喰われる程度では私の心は癒えないのだぞ……」
 何を今更そんなことを言っているのだこの王子は。

「それ以上の罪などあれば教えて欲しいものですね」

「おのれ……メアリーナは貴様の愚かな行いのせいで犠牲になり、今もまだ眠り続けているのだぞ! メアリーナを返せ……」
「何言ってるのです腰抜け王子。まるで自分の恋人か妻みたいな発言ですね。聞いてて呆れますよ」

 せめてもの反抗だ。
 俺はこいつらに出来る限りの嫌味を言い続けた。

 ふん……所詮は俺はたかだか不倫をしただけにすぎないんだ。
 後からみんなしてふざけたことをしてきたからいけないのだよ。

「そうだ、殿下。死に土産で言っておきますけど、メアリーナの持っている財産ですけどね、調べた方がいいですよ。あいつの持っている金塊、偽物の鉄屑っすから。俺はあれを盗みましたけど、偽物だって言われて詐欺罪になったんですからね」
「あぁ、あれは貴様らに仕向けた罠だ。当然私だけでなく取引所の男も偽物だと知っている」
「ほへ!?」

 なんだって……。あんなやたら重いものをわざわざ持ち運んだのはこの時のためだと言うのに……。

「まさか今になって言ってくるとはな……。メアリーナが聞いたら笑うだろう。しかし、罠だとも気がつかずに大事に証拠として持ち運んでいたのか。間抜けな奴らだ」
「そ……そんなバカな……」

「最初からお前たちは簡単に捕まえられたのだ。だが、泳がせておけばいずれ捕まっていない悪党とつながる可能性が高いとメアリーナが言っていてな。案の定、お前達のおかげでとんでもない組織を捕まえられた。だが貴様らの罪は重過ぎだ。情状酌量の余地など一ミリもない!」

 メアリーナの詐欺を暴けば多少の免罪かと思って頑張っていたのに。最後の最後で王子にバカにされてしまった。
 しかも、結果的に爆弾から王都を救ってしまったということか。
 くそう……。

 俺はその後は無言になってしまい何も言い返せなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?

音爽(ネソウ)
恋愛
勇者だと持ち上げられた彼はこれまでの功績すべてが自分のものと思い込む。 たしかに前衛に立つ彼は目立つ存在だった、しかしペアを組んだ彼女がいてこそなのだが……。

入り婿予定の婚約者はハーレムを作りたいらしい

音爽(ネソウ)
恋愛
「お前の家は公爵だ、金なんて腐るほどあるだろ使ってやるよ。将来は家を継いでやるんだ文句は言わせない!」 「何を言ってるの……呆れたわ」 夢を見るのは勝手だがそんなこと許されるわけがないと席をたった。 背を向けて去る私に向かって「絶対叶えてやる!愛人100人作ってやるからな!」そう宣った。 愚かなルーファの行為はエスカレートしていき、ある事件を起こす。

婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!

しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。

(完結)お姉様、私を捨てるの?

青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・ 中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。

さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます

夜桜
恋愛
 令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。  アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。

さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」 王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。 前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。 侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。 王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。 政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。 ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。 カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。

処理中です...