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11 【ザグレーム視点】シャーラが目立ちすぎる!

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「くそう……まさか指名手配されてしまうとは……」
 貼られていた紙を引きちぎり、よく見てみた。この似顔絵では確実にバレてしまう。
 特にシャーラは可愛いから余計に目立ってしまいそうだ。特に胸の強調が酷い。
 指名手配書だというのにこれでは男共が喰いつきそうだ。つまり、大人気の指名手配書になってしまい、余計に目立つ!

「ザグレームさまぁ、この手配書の似顔絵、下手すぎませんか? 私はもっと可愛いと思うんですけど……」

 かなり似ていると思うが……と言えば怒られるだろう。ここはシャーラに合わせておく。しかし、よくこんな状況で落ち着いていられるよな。

「こんなものが町中に貼られていてはどうすることもできんぞ……」

 これでは確実に捕まってしまう。もはやこれまでなのだろうか……。
 だが、やはりシャーラの顔はまだ冷静に見える。
 この状況でも逃げる糸口があるとでもいうのだろうか。

「ザグレームさまぁ、ちょっと危険な提案なんですけどね……」
「なんだなんだ!? 捕まらなければ危険でもやるしかないだろう」
「こういう手配書って、一般的な人間には効果があると思うんですけど、同士だったら味方だと思うんですよ」

 言っていることがよくわからない。同士とはなんだろう。こんな状況でも俺たちに味方になるやつがいるのか?

「つまり、犯罪者が逃げているような場所や、裏組織のグループのアジトならばなんとかなるかと」
「そうか……同士とはそういうことか。俺たちは完全に犯罪者だもんな……」

 今更だが、大人しく慰謝料を払っていた方がまだマシだったのではないかと後悔してきた。
 生活は相当苦しくなるが、シャーラと新たな暮らしができたはずだった。

「小さな地下アジトなら知り合いもいるので案内できますが」
「いや、ちょっと待てシャーラ。なんでそんな危険そうな人間と知り合いなのだ!?」

 シャーラの返答によっては、あまりにも危険だ。
 疑いたくはないが、もしかしたらシャーラが俺をそこへ連れていく組織のスパイと考えることもできる。

「私は元々貧民街の人間ですから……お金がなくなりそうになったらこの身体を売ることでなんとか生きてきました。だからその辺の裏関係とも繋がりはあるんですよぉ……」
「す……すまん」

 悲しそうな顔をするシャーラを見て、少しでも疑ってしまった自分を悔やむ。
 シャーラの言うとおりに従うことにした。

 どうせこのまま何もしなければ捕まる。
 ならばやれるだけのことはやってやる。
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