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10 指名手配書を公開しました

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「メアリーナ、一層のこと王宮に住んでしまったらどうだ? 毎日帰ったり戻ってきたり大変であろう」
「スローライフを送るとはいえ、家でダラダラしているわけではありませんし。運動もしなければ身体も鈍ってしまいますから」

 ザグレームを捕まえるために、毎日王宮に通っているのでこんなことを言われてしまいました。

「そうか、問題が解決してからも、このまま毎日通ってくれて構わんぞ?」
「流石にご迷惑かと!」
「そんなことはない。むしろメアリーナがここにいてくれれば、これ以上安全な王宮はないだろう」
「それは盛りすぎかと思いますが……」

 レオン殿下は笑いながら椅子に腰かけたので、私も彼の正面の椅子に座ります。

「さて、そろそろ敵陣の駒を半分ほど回収し、逃げまくる王を徐々に攻めながら総回収するという展開になったわけだな」

 ザグレーム達は馬車、王都の出入口、金換金所には事実上出入り不可能となりました。
 ですが、まだギルドや各店等は出入りが可能です。
 更にまだ現金を残している可能性があります。
 油断をすると逆転されてしまう可能性もあるでしょう。

「明日にでも指名手配書を王都中に出そうと思うのだが……」
「盤面に全ての駒を配置していくような行動ですね」
「うむ。逃げ道をどんどん潰し、最終的に身動きが取れなくなり目的地へ入って試合終了だ」

 ザグレームの慰謝料の支払いは今日ですから、遅れた瞬間に確実に重罪が決まります。
 明日手配書を出すというのはそういうことですね。

「わかりました。宜しくお願い致します、レオン殿下……」
「どうしたのだ? 表情が暗いぞ」
「いえ……なんでもありません」

 ザグレームが捕まれば、当然私が王宮に来る用事もなくなるわけです。
 そうしたら毎日こうやって、目の前にいる友人と作戦を立てたりその後の将棋もできなくなると思うと、ちょっぴり寂しいなと感じました。
 流石に不謹慎ですね。

「ところでレオン殿下は毎日私の相手をしていただいてますが、国務の方は大丈夫ですか?」

「あぁ、しっかりやっている。そもそも我が国は、王子の仕事がはっきり言って少ないのだ。国の決断は父上が決める。私がやることと言えば主に王族を継ぐための勉強や子孫繁栄の嫁探しなのだよ。だから毎日メアリーナと会っていることは無駄ではないのだ。むしろ父上から優先させるように言われているくらいだ」

「私、何か勉強になるようなことをレオン殿下にしていますか?」
「……メアリーナは推理力や力は凄まじいが、肝心なことは鈍感だな……」

 レオン殿下は呆れているようです。
 私、何か気がつかなかったことでもあるのでしょうか……。
 さっぱりわかりませんね。

 ♢

 これでもかというほど、ザグレーム達に似ている似顔絵付きの指名手配書が、王都中に貼られました。尚、シャーラの胸の大きさも強調されています。

 これで彼らがギルドにでも出入りしてしまえば、冒険者さんやギルドメンバーの方々に捕まりますね。
 更に、様々な商店にも張り紙が公開されていますので、店にも出入りできなくなったかと思います。

 ですが、慎重なザグレームならば、おそらく捕まらない選択肢をとるはずです。
 お金が絡むと異常に無鉄砲になってしまうので、そこは心配ですが……。

 出入り可能な場所といえば裏組織のアジトや非合法の店くらいでしょう。
 今回の作戦の意図は大詰めを迎えたようですね。
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