5 / 19
5 【ザグレーム視点】逃げ道が無い!
しおりを挟む
おそらくメアリーナは血相を変えて俺たちを探しているはず。
そんな時に身分証明書などを提示すれば、ここにいますよってアピールするようなものだ。
身分証を持っていないとも口が裂けても言えるものか。
国の法律で、全員が身分証明書を持つ義務がある。
もしも持っていなかったり紛失した場合は即刻王宮の近くへ連れていかれる。
再発行をするか親族の迎えが来るまで待たされることになってしまうぞ……。
「あ、しまった! 金を忘れた! 後でまた来るから、じゃ。ソユコトデ……」
逃げるように大急ぎでこの場を離れた。
♢
これは異常事態だ。
概ね直径二十キロメートルの円形の王都だからそこまで広いわけではない。このままではいずれ捕まってしまうぞ……。
「ねぇ、ザグレームさまぁ、いい方法がありますわ」
「本当か!?」
「えぇ。ギルドに行くのは危険ですけど、今ならまだ指名手配されていないはずなので大丈夫かと思うんですよね。ギルドへ行って、強そうな方をボディーガードとして雇い、徒歩で隣町まで一緒に行くという方法ですわ」
「天才だっ!!」
さすがシャーラだ。
俺のような楽をしたい人間の発想では思いつかなかった。
歩くのはしんどいが、頑張った先に未来がある。
よし、早速ギルドへ行き、なるべく強そうな人間をスカウトしよう。できれば女の子が良い。旅の最中にこっそりと口説けるし。
♢
「では、これから隣町へ徒歩で向かうのですね? なぜ歩くのか理由は尋ねませんが、僕も冒険の途中でしたので引き受けましょう」
「助かる! 前払制だったよな、五十万円でよろしく頼む」
「はい。もちろん承知かとは思いますが、依頼者側の理由で隣町への移動を断念した場合、もしくはキャンセルの際は返金はできませんが問題ありませんね?」
「あぁ、そこはしっかりと法律に従う」
相手が男性で真面目そうな冒険者だったのが残念だが、とにかくこれで一安心だ。
旅をしている冒険者ならば、外に生息している野獣などに負けることは滅多にないはず。
ちなみにもっと離れた地へ行くと、言葉を話す魔獣だって生息する。
そいつらは人間を餌にするが性格は温厚らしい。とはいえ餌は必要だ。
今のところは人間と魔獣間での取引で、重罪を犯した死刑執行の囚人を餌として提供している。
その代わりに人間の住む街へ危害を加えないという条約を結んでいるそうだ。
さて、いよいよ王都の出入口まで来たわけだが、何故か列ができている。何か珍しい薬草でも発見したのだろうか。
ここではあくまで野獣が入らないように警備しているだけなので、王都から外へ出るのには問題ない。
王都の外といっても、近くに薬草や食べ物を収穫できる場所もあるために人の出入りは多い。
だから身分証の提示はスルーなのだ。
「本日より国からの行政指示が加わりまして、王都から外へ出られる方全員にお願いをしていることがあります」
なんだこれは……少し前に似たようなことを聞いた気がするぞ。
まさか!?
「身分証の提示をお願いしております」
目の前にいる奴が身分証を提示していたので、俺もシャーラも顔が真っ青になってしまった。
「あ……あのさ、ちょっと悪いんだけど、この依頼なかったことにして良い?」
「別に構いませんが、ここまでの道のりも護衛に該当します。従って、返金はできませんが……」
「あーもうこの際構わん! とにかく急用ができたので失礼する」
大急ぎでシャーラを連れて列から離脱した。
一体、どこへ逃げれば良いのだ……。
そんな時に身分証明書などを提示すれば、ここにいますよってアピールするようなものだ。
身分証を持っていないとも口が裂けても言えるものか。
国の法律で、全員が身分証明書を持つ義務がある。
もしも持っていなかったり紛失した場合は即刻王宮の近くへ連れていかれる。
再発行をするか親族の迎えが来るまで待たされることになってしまうぞ……。
「あ、しまった! 金を忘れた! 後でまた来るから、じゃ。ソユコトデ……」
逃げるように大急ぎでこの場を離れた。
♢
これは異常事態だ。
概ね直径二十キロメートルの円形の王都だからそこまで広いわけではない。このままではいずれ捕まってしまうぞ……。
「ねぇ、ザグレームさまぁ、いい方法がありますわ」
「本当か!?」
「えぇ。ギルドに行くのは危険ですけど、今ならまだ指名手配されていないはずなので大丈夫かと思うんですよね。ギルドへ行って、強そうな方をボディーガードとして雇い、徒歩で隣町まで一緒に行くという方法ですわ」
「天才だっ!!」
さすがシャーラだ。
俺のような楽をしたい人間の発想では思いつかなかった。
歩くのはしんどいが、頑張った先に未来がある。
よし、早速ギルドへ行き、なるべく強そうな人間をスカウトしよう。できれば女の子が良い。旅の最中にこっそりと口説けるし。
♢
「では、これから隣町へ徒歩で向かうのですね? なぜ歩くのか理由は尋ねませんが、僕も冒険の途中でしたので引き受けましょう」
「助かる! 前払制だったよな、五十万円でよろしく頼む」
「はい。もちろん承知かとは思いますが、依頼者側の理由で隣町への移動を断念した場合、もしくはキャンセルの際は返金はできませんが問題ありませんね?」
「あぁ、そこはしっかりと法律に従う」
相手が男性で真面目そうな冒険者だったのが残念だが、とにかくこれで一安心だ。
旅をしている冒険者ならば、外に生息している野獣などに負けることは滅多にないはず。
ちなみにもっと離れた地へ行くと、言葉を話す魔獣だって生息する。
そいつらは人間を餌にするが性格は温厚らしい。とはいえ餌は必要だ。
今のところは人間と魔獣間での取引で、重罪を犯した死刑執行の囚人を餌として提供している。
その代わりに人間の住む街へ危害を加えないという条約を結んでいるそうだ。
さて、いよいよ王都の出入口まで来たわけだが、何故か列ができている。何か珍しい薬草でも発見したのだろうか。
ここではあくまで野獣が入らないように警備しているだけなので、王都から外へ出るのには問題ない。
王都の外といっても、近くに薬草や食べ物を収穫できる場所もあるために人の出入りは多い。
だから身分証の提示はスルーなのだ。
「本日より国からの行政指示が加わりまして、王都から外へ出られる方全員にお願いをしていることがあります」
なんだこれは……少し前に似たようなことを聞いた気がするぞ。
まさか!?
「身分証の提示をお願いしております」
目の前にいる奴が身分証を提示していたので、俺もシャーラも顔が真っ青になってしまった。
「あ……あのさ、ちょっと悪いんだけど、この依頼なかったことにして良い?」
「別に構いませんが、ここまでの道のりも護衛に該当します。従って、返金はできませんが……」
「あーもうこの際構わん! とにかく急用ができたので失礼する」
大急ぎでシャーラを連れて列から離脱した。
一体、どこへ逃げれば良いのだ……。
1
お気に入りに追加
1,039
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
完結 勇者様、己の実力だといつから勘違いしてたんですか?
音爽(ネソウ)
恋愛
勇者だと持ち上げられた彼はこれまでの功績すべてが自分のものと思い込む。
たしかに前衛に立つ彼は目立つ存在だった、しかしペアを組んだ彼女がいてこそなのだが……。
入り婿予定の婚約者はハーレムを作りたいらしい
音爽(ネソウ)
恋愛
「お前の家は公爵だ、金なんて腐るほどあるだろ使ってやるよ。将来は家を継いでやるんだ文句は言わせない!」
「何を言ってるの……呆れたわ」
夢を見るのは勝手だがそんなこと許されるわけがないと席をたった。
背を向けて去る私に向かって「絶対叶えてやる!愛人100人作ってやるからな!」そう宣った。
愚かなルーファの行為はエスカレートしていき、ある事件を起こす。
婚約破棄をされて魔導図書館の運営からも外されたのに今さら私が協力すると思っているんですか?絶対に協力なんてしませんよ!
しまうま弁当
恋愛
ユーゲルス公爵家の跡取りベルタスとの婚約していたメルティだったが、婚約者のベルタスから突然の婚約破棄を突き付けられたのだった。しかもベルタスと一緒に現れた同級生のミーシャに正妻の座に加えて魔導司書の座まで奪われてしまう。罵声を浴びせられ罪まで擦り付けられたメルティは婚約破棄を受け入れ公爵家を去る事にしたのでした。メルティがいなくなって大喜びしていたベルタスとミーシャであったが魔導図書館の設立をしなければならなくなり、それに伴いどんどん歯車が狂っていく。ベルタスとミーシャはメルティがいなくなったツケをドンドン支払わなければならなくなるのでした。
(完結)お姉様、私を捨てるの?
青空一夏
恋愛
大好きなお姉様の為に貴族学園に行かず奉公に出た私。なのに、お姉様は・・・・・・
中世ヨーロッパ風の異世界ですがここは貴族学園の上に上級学園があり、そこに行かなければ女官や文官になれない世界です。現代で言うところの大学のようなもので、文官や女官は○○省で働くキャリア官僚のようなものと考えてください。日本的な価値観も混ざった異世界の姉妹のお話。番の話も混じったショートショート。※獣人の貴族もいますがどちらかというと人間より下に見られている世界観です。
さようならお姉様、辺境伯サマはいただきます
夜桜
恋愛
令嬢アリスとアイリスは双子の姉妹。
アリスは辺境伯エルヴィスと婚約を結んでいた。けれど、姉であるアイリスが仕組み、婚約を破棄させる。エルヴィスをモノにしたアイリスは、妹のアリスを氷の大地に捨てた。死んだと思われたアリスだったが……。
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
夜桜
恋愛
【正式タイトル】
屋敷のバルコニーから突き落とされて死んだはずの私、実は生きていました。犯人は伯爵。人生のドン底に突き落として社会的に抹殺します。
~婚約破棄ですか? 構いません!
田舎令嬢は後に憧れの公爵様に拾われ、幸せに生きるようです~
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる