上 下
14 / 21

14-1

しおりを挟む
【前書き】
※今回のお話から三話分は、本編に沿ったおまけ回になります。

 尚、気持ち悪くなるかもしれない描写が含まれていますので、苦手な方や食前や食事中の読者様はご注意ください。


ーーーーーーーーーー


 朝から夕方まではソラシさんがカルダモン様の部屋で勉強を教えています。
 更に、夜は誰かしらが階段の真下で常に警備という名目で待機です。

 もしも侵入者が二階にいたとしても、逃げ出せる隙は全くありません。
 もちろん、私たちはただの警備活動をしているだけですよ。

 カルダモン様以外の誰かがクローゼットの中に住み着いているなんて考えるわけありませんよね。

 さて、私とレミファさんは一回のリビングでのんびりとティータイムを楽しみながら、防犯のために仕掛けた盗聴器の音声をチェックしています。

『カルダモンさまぁ……外に逃げられるタイミングが全くないじゃないのよ……』
『くそう……せめて避難ハシゴを買っておくか、避難用の滑り台を設置しておけばよかった。流石にこの高さから飛び降りれば大怪我だろう』

 我が家には貴族が多数いらっしゃいます。ご案内するためには家の内装も大事ですからね。天井が高いと広い家に見えますもの。
 こだわって色々と考えたわけですが、まさかこんなところでも活躍するとは思いませんでした。

「アタシ、このクミンという女が許せないんですけど……。カルダモン様はよくこんな女を好きになったなぁと思ってしまいますけどね。見る目なさすぎですよ」
「ちょっとレミファさんー! それじゃあ私だって該当されちゃいますよ。一応、カルダモン様の妻ですから」
「あ……決してそのようなつもりは! 申し訳ございません」

 慌てている姿を見て、つい笑ってしまいました。別に本気で言ったわけじゃないんですけどね。
 レミファさんは幼い頃からずっと私の面倒を見てくれていたお姉さまのような存在です。

 冗談の通じる相手なんですが、時々なぜかレミファさんにドキドキしてしまうこともあるんですよね。
 まぁレミファさんがこれだけ可愛いのだから仕方ありません。

 音声を再び聴きましょうか。

『せめてお風呂だけでも入りたい……』
『家から脱出するまで我慢してくれ。だが、私は気にしないからバレないようにヤりたいんだが』
『汚いから今はダメ!』

 妻が同じ屋根の下にいるというのによくもまぁ堂々とそんなこと言えますよね。
 私が聞いているなんて思っていないでしょうから堂々としているのでしょうけれども。

「ルフナ様、もしもカルダモン様がこれ以上不倫行為をするようならばすぐにでも捕らえますか?」
「もう愛情のかけらもなくなってしまいましたので……。証拠をたくさん掴んで離婚裁判で有利になることだけすれば結構ですよ」

 おっと……なにやらゴソゴソと音が聞こえてきます。
 これは本当にそうなっちゃうのでしょうか。

 流石に聴きたくはないので音声はカットしておきましょうか……。
 盗聴器の電源を切ろうとしたそのとき。

『『ぎゃーーーーーーーー!!』』 「「ぎゃーーーーーーーー!!」」

 二階の部屋からの悲鳴と、盗聴器からの悲鳴がほぼ同時に聞こえてきました。
 クミンさんの声もバレバレですけれどね。ここまで大声を出すなど、何かあったのでしょうか。

『ゴッキーレジェンドが……』
『カルダモンさまぁ! 早く退治して!!』
『無茶いうな! ただでさえ私は虫が大の苦手なのだ! なぜクローゼットの中に……』

「「げ……」」

 聞いていた私たちも顔が真っ青になりました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前

地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。 あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。 私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。 アリシア・ブルームの復讐が始まる。

〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。

藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢だったジョアンナは、アンソニー・ライデッカーと結婚していた。 5年が経ったある日、アンソニーはいきなり離縁すると言い出した。理由は、愛人と結婚する為。 アンソニーは辺境伯で、『戦場の悪魔』と恐れられるほど無類の強さを誇っていた。 だがそれは、ジョアンナの力のお陰だった。 ジョアンナは精霊の加護を受けており、ジョアンナが祈り続けていた為、アンソニーは負け知らずだったのだ。 精霊の加護など迷信だ! 負け知らずなのは自分の力だ! と、アンソニーはジョアンナを捨てた。 その結果は、すぐに思い知る事になる。 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 全10話で完結になります。 (番外編1話追加) 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。全て読ませて頂いております。ありがとうございます。

わたくしは、すでに離婚を告げました。撤回は致しません

絹乃
恋愛
ユリアーナは夫である伯爵のブレフトから、完全に無視されていた。ブレフトの愛人であるメイドからの嫌がらせも、むしろメイドの肩を持つ始末だ。生来のセンスの良さから、ユリアーナには調度品や服の見立ての依頼がひっきりなしに来る。その収入すらも、ブレフトは奪おうとする。ユリアーナの上品さ、審美眼、それらが何よりも価値あるものだと愚かなブレフトは気づかない。伯爵家という檻に閉じ込められたユリアーナを救ったのは、幼なじみのレオンだった。ユリアーナに離婚を告げられたブレフトは、ようやく妻が素晴らしい女性であったと気づく。けれど、もう遅かった。

(完)結婚式当日にドタキャンされた私ー貴方にはもうなんの興味もありませんが?(全10話+おまけ)

青空一夏
恋愛
私はアーブリー・ウォーカー伯爵令嬢。今日は愛しのエイダン・アクス侯爵家嫡男と結婚式だ。 ところが、彼はなかなか姿を現さない。 そんななか、一人の少年が手紙を預かったと私に渡してきた。 『ごめん。僕は”真実の愛”をみつけた! 砂漠の国の王女のティアラが”真実の愛”の相手だ。だから、君とは結婚できない! どうか僕を許してほしい』  その手紙には、そんなことが書かれていた。  私は、ガクンと膝から崩れおちた。結婚式当日にドタキャンをされた私は、社交界でいい笑い者よ。  ところがこんな酷いことをしてきたエイダンが復縁を迫ってきた……私は……  ざまぁ系恋愛小説。コメディ風味のゆるふわ設定。異世界中世ヨーロッパ風。  全10話の予定です。ざまぁ後の末路は完結後のおまけ、そこだけR15です。 

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

処理中です...