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15 カルダモン視点

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「カルダモンさま……もう無理。ご飯は僅か、トイレも落ち着けない、お風呂には入れないし、ずっとクローゼットの中で隠れている生活なんて地獄……」

 すでに一週間もクミンと一緒に生活をしていると考えれば幸せなのだが、現実は地獄のようなものだ。

 なんとか使用人が雇われている数日間だけ我慢して、その後にクミンをこの家から脱出できるように手を尽くそうかと思っていた。
 だが、使用人は一週間と言っていたのに何故か延長されて未だに滞在している。

 しかも以前よりも何故か警備が厳重で、おまけに昼間はずっとソラシのつきっきり教育をされていた。
 こんな状態ではクミンはクローゼットの中にいてもらうしか方法がなかった。

「クミンよ、落ち着け。もしもここでバレてしまえば私もお前も処刑になるかもしれんのだぞ。もう少し我慢を……」
「無理無理。こんな生活なら死んだ方がマシ。それに、全っ然逃げ出す隙がないじゃないの! もう嫌。捕まってもいいからここから出たい」

 くそう……クミンがここまで後先を考えられない女だとは思わなかった。
 これでは今が良ければそれで良い精神じゃないか。
 私は慰めようとクミンの身体に抱きつこうとした。

「やめて! こないで!」

 クミンに突き飛ばされ、私は尻餅をついてしまった。
「ど……どうしてだ!? なぜこのような──」
「察してよ。私は何日もお風呂に入れていないし汗臭いの。そんな身体でカルダモンさまに近寄られたくない」

 そんなことだけで騒いでルフナたちに見つかってしまえば、私たちは処刑されるかもしれないのだぞ。

 それにそのような理由など私が気にするとでも思ったのだろうか。かわいいやつだ。臭くてもいい! ひっつきたい!
 ハッキリと気持ちを伝えるべきだ。

「ならば問題ない。クミンの体臭など気にしない」
「カルダモンさま酷すぎるわ! 女心を全くわかっていないの!」

 なぜだ。私はクミンが臭かろうと愛しているのだ。正直に答えたのに何故怒るんだろう。
 おっと、今はそれどころではなかった。

「しーーー……静かに! バレてしまうだろ、とにかく落ち着け」

 クミンが荒れてしまっている。私の行動や言動は全くもって何も悪くないのに、こんなことでクミンが怒ってしまうとは……。きっと食事が取れていないストレスだろう。

「もうカルダモンさまなんて嫌い! 大っ嫌い!」
「わ……そんな大声出すな」

 私は必死になって両手でクミンの口を塞いだ。 
「ふんうーーー……んんふーー!」
「頼むから大人しくしててくれ」

 これはまずい。さすがに外に声が漏れてしまうではないか。
 しかもクミンは必死に抵抗してくるし、私も全力でクミンの口を塞ぐしかない。

 もうすぐ勉強の時間だからソラシが来てしまうぞ……。

「何をやっているのだ!?」

 声の主を振り向くと、顔を強張らせたソラシが私の部屋に入ってきてしまった。
 あぁ……ついにバレてしまったか。
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