17 / 21
15 カルダモン視点
しおりを挟む
「カルダモンさま……もう無理。ご飯は僅か、トイレも落ち着けない、お風呂には入れないし、ずっとクローゼットの中で隠れている生活なんて地獄……」
すでに一週間もクミンと一緒に生活をしていると考えれば幸せなのだが、現実は地獄のようなものだ。
なんとか使用人が雇われている数日間だけ我慢して、その後にクミンをこの家から脱出できるように手を尽くそうかと思っていた。
だが、使用人は一週間と言っていたのに何故か延長されて未だに滞在している。
しかも以前よりも何故か警備が厳重で、おまけに昼間はずっとソラシのつきっきり教育をされていた。
こんな状態ではクミンはクローゼットの中にいてもらうしか方法がなかった。
「クミンよ、落ち着け。もしもここでバレてしまえば私もお前も処刑になるかもしれんのだぞ。もう少し我慢を……」
「無理無理。こんな生活なら死んだ方がマシ。それに、全っ然逃げ出す隙がないじゃないの! もう嫌。捕まってもいいからここから出たい」
くそう……クミンがここまで後先を考えられない女だとは思わなかった。
これでは今が良ければそれで良い精神じゃないか。
私は慰めようとクミンの身体に抱きつこうとした。
「やめて! こないで!」
クミンに突き飛ばされ、私は尻餅をついてしまった。
「ど……どうしてだ!? なぜこのような──」
「察してよ。私は何日もお風呂に入れていないし汗臭いの。そんな身体でカルダモンさまに近寄られたくない」
そんなことだけで騒いでルフナたちに見つかってしまえば、私たちは処刑されるかもしれないのだぞ。
それにそのような理由など私が気にするとでも思ったのだろうか。かわいいやつだ。臭くてもいい! ひっつきたい!
ハッキリと気持ちを伝えるべきだ。
「ならば問題ない。クミンの体臭など気にしない」
「カルダモンさま酷すぎるわ! 女心を全くわかっていないの!」
なぜだ。私はクミンが臭かろうと愛しているのだ。正直に答えたのに何故怒るんだろう。
おっと、今はそれどころではなかった。
「しーーー……静かに! バレてしまうだろ、とにかく落ち着け」
クミンが荒れてしまっている。私の行動や言動は全くもって何も悪くないのに、こんなことでクミンが怒ってしまうとは……。きっと食事が取れていないストレスだろう。
「もうカルダモンさまなんて嫌い! 大っ嫌い!」
「わ……そんな大声出すな」
私は必死になって両手でクミンの口を塞いだ。
「ふんうーーー……んんふーー!」
「頼むから大人しくしててくれ」
これはまずい。さすがに外に声が漏れてしまうではないか。
しかもクミンは必死に抵抗してくるし、私も全力でクミンの口を塞ぐしかない。
もうすぐ勉強の時間だからソラシが来てしまうぞ……。
「何をやっているのだ!?」
声の主を振り向くと、顔を強張らせたソラシが私の部屋に入ってきてしまった。
あぁ……ついにバレてしまったか。
すでに一週間もクミンと一緒に生活をしていると考えれば幸せなのだが、現実は地獄のようなものだ。
なんとか使用人が雇われている数日間だけ我慢して、その後にクミンをこの家から脱出できるように手を尽くそうかと思っていた。
だが、使用人は一週間と言っていたのに何故か延長されて未だに滞在している。
しかも以前よりも何故か警備が厳重で、おまけに昼間はずっとソラシのつきっきり教育をされていた。
こんな状態ではクミンはクローゼットの中にいてもらうしか方法がなかった。
「クミンよ、落ち着け。もしもここでバレてしまえば私もお前も処刑になるかもしれんのだぞ。もう少し我慢を……」
「無理無理。こんな生活なら死んだ方がマシ。それに、全っ然逃げ出す隙がないじゃないの! もう嫌。捕まってもいいからここから出たい」
くそう……クミンがここまで後先を考えられない女だとは思わなかった。
これでは今が良ければそれで良い精神じゃないか。
私は慰めようとクミンの身体に抱きつこうとした。
「やめて! こないで!」
クミンに突き飛ばされ、私は尻餅をついてしまった。
「ど……どうしてだ!? なぜこのような──」
「察してよ。私は何日もお風呂に入れていないし汗臭いの。そんな身体でカルダモンさまに近寄られたくない」
そんなことだけで騒いでルフナたちに見つかってしまえば、私たちは処刑されるかもしれないのだぞ。
それにそのような理由など私が気にするとでも思ったのだろうか。かわいいやつだ。臭くてもいい! ひっつきたい!
ハッキリと気持ちを伝えるべきだ。
「ならば問題ない。クミンの体臭など気にしない」
「カルダモンさま酷すぎるわ! 女心を全くわかっていないの!」
なぜだ。私はクミンが臭かろうと愛しているのだ。正直に答えたのに何故怒るんだろう。
おっと、今はそれどころではなかった。
「しーーー……静かに! バレてしまうだろ、とにかく落ち着け」
クミンが荒れてしまっている。私の行動や言動は全くもって何も悪くないのに、こんなことでクミンが怒ってしまうとは……。きっと食事が取れていないストレスだろう。
「もうカルダモンさまなんて嫌い! 大っ嫌い!」
「わ……そんな大声出すな」
私は必死になって両手でクミンの口を塞いだ。
「ふんうーーー……んんふーー!」
「頼むから大人しくしててくれ」
これはまずい。さすがに外に声が漏れてしまうではないか。
しかもクミンは必死に抵抗してくるし、私も全力でクミンの口を塞ぐしかない。
もうすぐ勉強の時間だからソラシが来てしまうぞ……。
「何をやっているのだ!?」
声の主を振り向くと、顔を強張らせたソラシが私の部屋に入ってきてしまった。
あぁ……ついにバレてしまったか。
15
お気に入りに追加
1,842
あなたにおすすめの小説
【完結】妹が旦那様とキスしていたのを見たのが十日前
地鶏
恋愛
私、アリシア・ブルームは順風満帆な人生を送っていた。
あの日、私の婚約者であるライア様と私の妹が濃厚なキスを交わすあの場面をみるまでは……。
私の気持ちを裏切り、弄んだ二人を、私は許さない。
アリシア・ブルームの復讐が始まる。
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。
藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢だったジョアンナは、アンソニー・ライデッカーと結婚していた。
5年が経ったある日、アンソニーはいきなり離縁すると言い出した。理由は、愛人と結婚する為。
アンソニーは辺境伯で、『戦場の悪魔』と恐れられるほど無類の強さを誇っていた。
だがそれは、ジョアンナの力のお陰だった。
ジョアンナは精霊の加護を受けており、ジョアンナが祈り続けていた為、アンソニーは負け知らずだったのだ。
精霊の加護など迷信だ! 負け知らずなのは自分の力だ!
と、アンソニーはジョアンナを捨てた。
その結果は、すぐに思い知る事になる。
設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。
全10話で完結になります。
(番外編1話追加)
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。全て読ませて頂いております。ありがとうございます。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
わたくしは、すでに離婚を告げました。撤回は致しません
絹乃
恋愛
ユリアーナは夫である伯爵のブレフトから、完全に無視されていた。ブレフトの愛人であるメイドからの嫌がらせも、むしろメイドの肩を持つ始末だ。生来のセンスの良さから、ユリアーナには調度品や服の見立ての依頼がひっきりなしに来る。その収入すらも、ブレフトは奪おうとする。ユリアーナの上品さ、審美眼、それらが何よりも価値あるものだと愚かなブレフトは気づかない。伯爵家という檻に閉じ込められたユリアーナを救ったのは、幼なじみのレオンだった。ユリアーナに離婚を告げられたブレフトは、ようやく妻が素晴らしい女性であったと気づく。けれど、もう遅かった。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
【完結】おまえを愛することはない、そう言う夫ですが私もあなたを、全くホントにこれっぽっちも愛せません。
やまぐちこはる
恋愛
エリーシャは夫となったアレンソアにおまえを愛することはないと言われた。
こどもの頃から婚約していたが、嫌いな相手だったのだ。お互いに。
3万文字ほどの作品です。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる