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 大荷物を持って実家に帰ってきました。

 私は運がいいのかもしれません。

 旦那様とは政略結婚でしたので、私からお父様に『離婚したいです』とは言えません。
 しかし、愛人対策として前回実家に帰ったときに、お父様は察してくれました。
 おかげで、現状の全てを主張できましたが、それを聞いたお父様は大層ご立腹で……。

 お父様のご協力もあり、愛人との接触を理由として、離婚が実現できてしまうかもしれないのです。


「全く……スパイス準伯爵にどうしてもと願われて仕方なく娘を送り出したというのに。まさかスパイス家の息子がそこまで無能だったとは……」
「無能ならまだ許せますが、流石に異性交友に関しては許し難い行動です。法的に許されるようにと無茶な誘導をしてみましたが……」

 お父様は急に笑い始めました。
「はっはっは! スパイス家の息子には絶対にできないとわかっていたからなのであろう?」
「……さすがお父様ですね」

 私の悪戯心が筒抜けのようです。
 旦那様が離婚の処罰によって死んでほしいとまでは望んではいません。ただ、私が日々悩まされた分と屈辱の倍量くらいは、旦那様にも苦しんでいただきたいものです。

「前にも言ったが、そこまでの心情になっているのに立場を尊重することはない。ある貴族の政略結婚では、夫婦間の性格が合わなすぎてストレスがどんどん溜まっていき、嫁が自殺してしまったケースもあるのだからな」

 さすがに私はそのような行動はしません……と思いたいです。
 何の対策もなく進んでいった未来だったらわかりませんが……。

「ルフナよ、だが離婚は待って欲しいのだ。そのために私の部下を二人送り込んだのだから」
「ソラシさんとレミファさんの教育ならば、旦那様も変われると本当に思っているのですか?」

 二人の厳しさは身をもって体験しています。
 それでも旦那様相手では分が悪すぎるのではないでしょうか。

「試したいのだ。もしもあの二人の指導によって最低限の品層やモラルを改善できるのであれば、愛人とも離れるであろう……」
「そうですね……」

「だが、出来ることを試してダメだった場合は、娘の嫁ぎ先を誤ってしまった私のミスになる。これならばルフナが責任を取ることはないだろう」
「そんなふうに離婚を公表してしまったらお父様の立場が……」
「だからそのようなことは気にするなと言っているだろう。常に上に立つべき立場である私が、大事な判断もできなかったということだ。仕方あるまい」

 お父様は申し訳なさそうな顔をしながら、私に頭を下げてきました。

「せめて愛人との不倫現場を捉えることができれば話は変わってくるのだがな」
「そこまで旦那様が無能な行動に出るとは思えませんけれどね……」

 お父様の言っていることを要約します。
 愛人が我家に入り不倫行為を行い、その現場もしくは状況証拠を掴むということなのでしょう。

 確かにこれならば完全に相手側の過失になるので何の問題もなく離婚が成立できると思います。
 しかし、レミファさんとソラシさんが使用人としている中、そのような状況になるとはとても思えなかったのです。
 レミファさん達が何か仕掛けないことには無理でしょう……。

 お父様の立場も考えると旦那様が更生されて愛人と離れるか、当初の計画通りに愛人のクミンさんが運よく養子入りをする二択しか丸く治る道はなさそうですね。

 旦那様とクミンさんが困るような天罰が起こってほしいものですね。
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