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旦那様が実家へ出かけている間に、私は大急ぎで今後のための準備を進めました。
それはもう、今までの人生で一番と言っても過言ではないほどあちこち走り回りましたよ。
「よし、これで準備は完璧ですね。ソラシさんにレミファさん。家のことと旦那様の監視をよろしくお願い致します」
「承知致しましたルフナ様。一週間の間、我々は使用人として行動いたしますので」
「ルフナさんの頼みならアタシはなんだってやってやりますよ!」
お二人が家にいてくれれば問題ありませんね。
お年を召して引退してしまいましたが、元王国重歩兵だったソラシさんのパワーは今も健在です。とても頼もしいお爺様といったところでしょうか。
対してレミファさんは元王国の忍として、あらゆるスパイを経験してきています。旦那様の不審な行動もすぐに見抜くことでしょう。これは私の密かな気持ちですが、レミファさんは可愛いので、ずっとそばにいてほしいくらいですね。
さて、残るは実家での会議です。先ほど少しだけ実家に顔は出していましたが、今度は数日間という長期ですからね……準備が必要でした。
支度も整いましたので、玄関先で旦那様がお帰りになるのを待つこととしましょう。
♢
「旦那様、お帰りなさい」
「あぁ、今帰ったぞルフナ。……ん? この鞄はなんだ?」
何度言っても聞かないので諦めてはいますが、やはり『ただいま』と言ってほしいものですね。
さて、これからが本番です。嘘をつかない範囲でどれだけ偽りなく話せるかどうか……。
「急遽実家でするべき用事ができましたので、帰る準備をしていました。報告が遅くなってしまい申し訳ございません」
「そうか。どれほどの間帰るのだ?」
「一週間ほどです」
嘘はついていません。先ほど実家へ帰った時に、お父様から『実家へ帰ってこい』と言われましたから。
「そうか、私ならかまわんぞ」
なんということでしょう。旦那様の顔が喜んでいるではありませんか。そんなに私と離れることが嬉しいとお考えですか。
……そうですよね。私が家を留守にしていれば、旦那様は間違いなくクミンさんを家に招き入れるはずですから。
ですが、申し訳ございませんがすでに対策済みです。
「ありがとうございます。家のことが疎かになると申し訳ないので、急遽住込で使用人を雇いましたのでご安心ください」
「へ!? 使用人!?」
「はい。お父様の協力によって、王宮に仕えていたこともある一流の方々を使用人として雇えたので、私が家事を行うよりも快適かと」
お二人は王宮で専属の使用人として動いていたこともあるそうで、家事の能力も自信があると聞いています。
おや、早速旦那様の表情に焦りが出ているようですね。
とてもわかりやすい方なので助かります。
「いやいやいや……、家のことなど放置でもいいだろう。それに家事なんて、帰ってきたらルフナがやればいいとは思わないか? 何よりも、一体いくらかかると思ってるのだ?」
あぁ……旦那様は私のことをロボットか何かと思っているのでしょうか。一週間溜め込んだ家事をやるのはそれなりに労力がいります。『その間の家事くらいなら任せておけ』と言ってほしいものですね。期待はしていませんが。
「一週間分の溜めた家事を行うのは流石に大変ですからね。支払いに関してはご安心ください。お父様に全面協力していただいたおかげで、旦那様が負担することは一切ありません」
嘘はついていません。レミファさんとソラシさんは、お父様が急遽呼んでくださいました。
旦那様の使用人ではありませんので、貴方の出費は一切かかりませんから。
文句を言われる前に、さっさとご対面させた方が良いでしょうね。
「すでに奥に使用人がいらしていますので、食べたいものや家のことであればなんなりと言いつけてください」
「そ……ソデスカ」
奥のキッチンへ連れていき、旦那様を紹介しました。
私は二人に任せてそのまま家を出ましたが、旦那様は無事に一週間耐えられるかどうか心配になってきますね……。
お二人はとても厳しいお方ですので……。
それはもう、今までの人生で一番と言っても過言ではないほどあちこち走り回りましたよ。
「よし、これで準備は完璧ですね。ソラシさんにレミファさん。家のことと旦那様の監視をよろしくお願い致します」
「承知致しましたルフナ様。一週間の間、我々は使用人として行動いたしますので」
「ルフナさんの頼みならアタシはなんだってやってやりますよ!」
お二人が家にいてくれれば問題ありませんね。
お年を召して引退してしまいましたが、元王国重歩兵だったソラシさんのパワーは今も健在です。とても頼もしいお爺様といったところでしょうか。
対してレミファさんは元王国の忍として、あらゆるスパイを経験してきています。旦那様の不審な行動もすぐに見抜くことでしょう。これは私の密かな気持ちですが、レミファさんは可愛いので、ずっとそばにいてほしいくらいですね。
さて、残るは実家での会議です。先ほど少しだけ実家に顔は出していましたが、今度は数日間という長期ですからね……準備が必要でした。
支度も整いましたので、玄関先で旦那様がお帰りになるのを待つこととしましょう。
♢
「旦那様、お帰りなさい」
「あぁ、今帰ったぞルフナ。……ん? この鞄はなんだ?」
何度言っても聞かないので諦めてはいますが、やはり『ただいま』と言ってほしいものですね。
さて、これからが本番です。嘘をつかない範囲でどれだけ偽りなく話せるかどうか……。
「急遽実家でするべき用事ができましたので、帰る準備をしていました。報告が遅くなってしまい申し訳ございません」
「そうか。どれほどの間帰るのだ?」
「一週間ほどです」
嘘はついていません。先ほど実家へ帰った時に、お父様から『実家へ帰ってこい』と言われましたから。
「そうか、私ならかまわんぞ」
なんということでしょう。旦那様の顔が喜んでいるではありませんか。そんなに私と離れることが嬉しいとお考えですか。
……そうですよね。私が家を留守にしていれば、旦那様は間違いなくクミンさんを家に招き入れるはずですから。
ですが、申し訳ございませんがすでに対策済みです。
「ありがとうございます。家のことが疎かになると申し訳ないので、急遽住込で使用人を雇いましたのでご安心ください」
「へ!? 使用人!?」
「はい。お父様の協力によって、王宮に仕えていたこともある一流の方々を使用人として雇えたので、私が家事を行うよりも快適かと」
お二人は王宮で専属の使用人として動いていたこともあるそうで、家事の能力も自信があると聞いています。
おや、早速旦那様の表情に焦りが出ているようですね。
とてもわかりやすい方なので助かります。
「いやいやいや……、家のことなど放置でもいいだろう。それに家事なんて、帰ってきたらルフナがやればいいとは思わないか? 何よりも、一体いくらかかると思ってるのだ?」
あぁ……旦那様は私のことをロボットか何かと思っているのでしょうか。一週間溜め込んだ家事をやるのはそれなりに労力がいります。『その間の家事くらいなら任せておけ』と言ってほしいものですね。期待はしていませんが。
「一週間分の溜めた家事を行うのは流石に大変ですからね。支払いに関してはご安心ください。お父様に全面協力していただいたおかげで、旦那様が負担することは一切ありません」
嘘はついていません。レミファさんとソラシさんは、お父様が急遽呼んでくださいました。
旦那様の使用人ではありませんので、貴方の出費は一切かかりませんから。
文句を言われる前に、さっさとご対面させた方が良いでしょうね。
「すでに奥に使用人がいらしていますので、食べたいものや家のことであればなんなりと言いつけてください」
「そ……ソデスカ」
奥のキッチンへ連れていき、旦那様を紹介しました。
私は二人に任せてそのまま家を出ましたが、旦那様は無事に一週間耐えられるかどうか心配になってきますね……。
お二人はとても厳しいお方ですので……。
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