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「ルフナよ、第二夫人として我がスパイス家に招き入れたい者がいるのだが……」
私の旦那様であるカルダモン=スパイスが、とんでもないことを言い始めました。
「正気ですか……。確かに準伯爵家であるスパイス家には一夫多妻の許可は下りています。ですが、旦那様が働かないと……」
「そんなことはわかっている。だが、君の父親は大商人だし、ルフナだって父親に負けずと稼げてるから問題ないだろう」
それはあくまで私の稼ぎの話でしょう。
第二妃を養う側である旦那様の稼ぎはゼロ。私と結婚してから、『働く必要はないだろう』と言い出して仕事をやめてしまったのです。
「つべこべ言わずに認めてほしい。既に家に招いているのだから会ってほしい」
この状況下で上から目線で言ってくる旦那様もどうなのでしょうか。最近は旦那様に対しての不満や不安が多くなっています。だからこそ、第二夫人を招いたとしても妬いたりする感情が沸いてきません。
「……わかりました」
貴族家である以上、理不尽であろうとも法に逆らっているわけではないことなので、旦那様の言い分に従うしかありませんね。
悔しいですけど。
♢
「はじめましてー。私はクミンっていいます。ルフナさんのことはカルダモンさんから色々と聞いていますよっ」
なんなのでしょうか、この言葉遣いは……。旦那様のことを馴れ馴れしく名前で呼ぶ行為も信じられませんね。
まるで……。
「クミンとは城下町で出逢ったんだ。一目惚れでな……」
やはり……。言い方は失礼かもしれませんが平民でしたか。
急に旦那様の顔が真っ赤っかになってモジモジした態度になっています。
私に対してあのような顔を一度もしたことはありませんのに……。
「もうっ、カルダモン様ったらー」
クミンさんが旦那様の腕に胸を擦り付けながら抱きつきます。まだ第二夫人と認めた覚えはないんですが。
「とにかくだ、クミンを第二夫人にする」
「残念ですがそれは不可能かと思いますが」
「「へ!?」」
息ピッタリで、まぁ相性がいいですこと……。
「失礼ですが、クミンさんは貴族の方ではありませんね?」
「そうですけどー、何か問題でも?」
「貴族同士にのみ認められている一夫多妻に関する法律の問題です。婚約相手が准男爵以上の者でなければ、第二夫人としての結婚が認められないのですよ。旦那様はご存知なかったのですか? 貴族としての教育で習うはずですが……」
「え……そうなのか……?」
知らなかったのですね。
同情する気はありませんが、これではクミンさんも浮かばれませんね。
「ならばクミンを准男爵にすれば……そうだ! ルフナ。君の父親に頼んで養子にしてもらうとかすれば」
「お断りです。そもそも、貴族としての嗜みや礼儀、貴族界での社交ダンスといった教育ができていなければお父様が認めるわけがありません」
「そんな……」
「私、カルダモンさんと結婚できないってこと……?」
「そういうことですね。クミンさん……申し訳ございませんが、今日のところはお引き取りください」
「す、すまない……ひとまず家まで送ろうか……それくらいならいいだろう?」
「えぇ」
旦那様も現実を理解してくれたようで、私もホッとしました。
♢
あれから三日後の朝、旦那様は再び信じ難い行動に出てしまったようです。
「改めて紹介する。私の愛人、クミンだ」
「よろしくですー」
旦那様、正気ですか?
私の旦那様であるカルダモン=スパイスが、とんでもないことを言い始めました。
「正気ですか……。確かに準伯爵家であるスパイス家には一夫多妻の許可は下りています。ですが、旦那様が働かないと……」
「そんなことはわかっている。だが、君の父親は大商人だし、ルフナだって父親に負けずと稼げてるから問題ないだろう」
それはあくまで私の稼ぎの話でしょう。
第二妃を養う側である旦那様の稼ぎはゼロ。私と結婚してから、『働く必要はないだろう』と言い出して仕事をやめてしまったのです。
「つべこべ言わずに認めてほしい。既に家に招いているのだから会ってほしい」
この状況下で上から目線で言ってくる旦那様もどうなのでしょうか。最近は旦那様に対しての不満や不安が多くなっています。だからこそ、第二夫人を招いたとしても妬いたりする感情が沸いてきません。
「……わかりました」
貴族家である以上、理不尽であろうとも法に逆らっているわけではないことなので、旦那様の言い分に従うしかありませんね。
悔しいですけど。
♢
「はじめましてー。私はクミンっていいます。ルフナさんのことはカルダモンさんから色々と聞いていますよっ」
なんなのでしょうか、この言葉遣いは……。旦那様のことを馴れ馴れしく名前で呼ぶ行為も信じられませんね。
まるで……。
「クミンとは城下町で出逢ったんだ。一目惚れでな……」
やはり……。言い方は失礼かもしれませんが平民でしたか。
急に旦那様の顔が真っ赤っかになってモジモジした態度になっています。
私に対してあのような顔を一度もしたことはありませんのに……。
「もうっ、カルダモン様ったらー」
クミンさんが旦那様の腕に胸を擦り付けながら抱きつきます。まだ第二夫人と認めた覚えはないんですが。
「とにかくだ、クミンを第二夫人にする」
「残念ですがそれは不可能かと思いますが」
「「へ!?」」
息ピッタリで、まぁ相性がいいですこと……。
「失礼ですが、クミンさんは貴族の方ではありませんね?」
「そうですけどー、何か問題でも?」
「貴族同士にのみ認められている一夫多妻に関する法律の問題です。婚約相手が准男爵以上の者でなければ、第二夫人としての結婚が認められないのですよ。旦那様はご存知なかったのですか? 貴族としての教育で習うはずですが……」
「え……そうなのか……?」
知らなかったのですね。
同情する気はありませんが、これではクミンさんも浮かばれませんね。
「ならばクミンを准男爵にすれば……そうだ! ルフナ。君の父親に頼んで養子にしてもらうとかすれば」
「お断りです。そもそも、貴族としての嗜みや礼儀、貴族界での社交ダンスといった教育ができていなければお父様が認めるわけがありません」
「そんな……」
「私、カルダモンさんと結婚できないってこと……?」
「そういうことですね。クミンさん……申し訳ございませんが、今日のところはお引き取りください」
「す、すまない……ひとまず家まで送ろうか……それくらいならいいだろう?」
「えぇ」
旦那様も現実を理解してくれたようで、私もホッとしました。
♢
あれから三日後の朝、旦那様は再び信じ難い行動に出てしまったようです。
「改めて紹介する。私の愛人、クミンだ」
「よろしくですー」
旦那様、正気ですか?
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