27 / 33
27
しおりを挟む
魔力のほとんどを超級魔法一発に使用してしまったため、魔力切れ寸前状態です。
そのため、膨大な魔力を消費する転移魔法は今は使えません。
でも『ダッシュ』はほとんど魔力の消費感覚がなかったため、この際ブブルル王国からメビルス王国まで走ることにします。
ラノベ好きにはたまらないのです。
そして、今は身体を動かしてさきほどやらかしたことに対して気を紛らわせたかったのです。
ひたすら進んでいくと、ブブルル王国から避難しているであろう数百台規模の馬車と遭遇しました。
ここで見つかるとろくなことにならないだろうし、まっすぐメビルス王国に向かっているようなので、そのまま追い抜いて先を急ぎます。
それからしばらくすると、今度はさきほどの馬車よりも煌びやかな客席がありそうな馬車も目撃しました。
無事を祈ってもちろん無視です。
概ね二時間ほど進むと、もうメビルス王国の王都に近づいてきました。
すると、今度は前方から数台の馬車が。
おそらく王都からブブルル王国に向かっているのでしょう。
カイン騎士団長たちは戦闘する気でいたようですし、もしかしたらと思って『ダッシュ』を解除して馬車の前に立ちます。
すると、思ったとおり。
客席から出てきたカイン騎士団長とチュリップは信じられないといった表情を浮かべています。
「ヴィレーナか。思いとどまって逃走できたのだな」
「ヴィレーナ様はゆっくり休んでください」
「いえ、上級モンスターは倒しました」
「「は!?」」
二人とも口を開けたまま固まっています。
「え、ええと……、精神的に死にそうになりましたけどね」
一撃で倒しましたなどとは口が裂けても言えません。
ドラゴンブレスをこの目で見て、今まで住んでいた王都が壊滅してしまったことや、私の魔法で山を破壊したことに関しては精神的にまいっています。
嘘はついていませんよ。
「怪我はなかったのか?」
「は、はい……。そう言われてみれば」
私が挙動不審な態度をとっているからだったと思います。
前方で黙って聞いていた御者が口を挟んできました。
「失礼ながらヴィレーナ様。本当にモンスターを退治したのですか?」
「おい、なにを言う! ヴィレーナに対して失礼だろう!」
「ですが、中級モンスター相手でもカイン騎士団長だけでは勝てるかどうかもわからない強さなのです。ましてや前代未聞の上級モンスターともなれば、無傷で帰ってこれるわけがないかと……」
さすがのカイン騎士団長もチュリップもなにも言い返せずでした。
もちろん私が本当のことを言わないからいけないのです。
ただ、証拠ならあるのですが、果たしてここで見せて良いのかどうか。
「あの……。上級モンスターは死んでも消滅せずにあらゆる素材になるということはご存知でしょうか?」
「私なら歴史本で読んだことがあるので知っていますよ」
「俺も話には聞いたことはある。大昔、どうやったのかは記されていないが上級モンスターを倒せる猛者がいたらしい。その者はモンスターの死骸にとんでもない価値があることを知り、それを元手に国を創ったとか」
「今、ここでさきほど倒したモンスターを出してもよろしいでしょうか?」
論より証拠。
実物を見せたほうが納得していただけるだろうと思い、マジックボックスから出しました。
「「「…………」」」
すぐにマジックボックスに収納します。
マジックボックスの中では時の流れも止まるようで、ドラゴンとはいえ生物ですからね。
後で売却するまでなるべく新鮮なまま残しておきたかったのです。
「ヴィレーナ……。今のはどうやって出したり消したりしたのだ……?」
「あ……」
マジックボックスを普通に使ってしまいましたが、この世界には知られていない魔法だったことをすっかり忘れていました……。
そのため、膨大な魔力を消費する転移魔法は今は使えません。
でも『ダッシュ』はほとんど魔力の消費感覚がなかったため、この際ブブルル王国からメビルス王国まで走ることにします。
ラノベ好きにはたまらないのです。
そして、今は身体を動かしてさきほどやらかしたことに対して気を紛らわせたかったのです。
ひたすら進んでいくと、ブブルル王国から避難しているであろう数百台規模の馬車と遭遇しました。
ここで見つかるとろくなことにならないだろうし、まっすぐメビルス王国に向かっているようなので、そのまま追い抜いて先を急ぎます。
それからしばらくすると、今度はさきほどの馬車よりも煌びやかな客席がありそうな馬車も目撃しました。
無事を祈ってもちろん無視です。
概ね二時間ほど進むと、もうメビルス王国の王都に近づいてきました。
すると、今度は前方から数台の馬車が。
おそらく王都からブブルル王国に向かっているのでしょう。
カイン騎士団長たちは戦闘する気でいたようですし、もしかしたらと思って『ダッシュ』を解除して馬車の前に立ちます。
すると、思ったとおり。
客席から出てきたカイン騎士団長とチュリップは信じられないといった表情を浮かべています。
「ヴィレーナか。思いとどまって逃走できたのだな」
「ヴィレーナ様はゆっくり休んでください」
「いえ、上級モンスターは倒しました」
「「は!?」」
二人とも口を開けたまま固まっています。
「え、ええと……、精神的に死にそうになりましたけどね」
一撃で倒しましたなどとは口が裂けても言えません。
ドラゴンブレスをこの目で見て、今まで住んでいた王都が壊滅してしまったことや、私の魔法で山を破壊したことに関しては精神的にまいっています。
嘘はついていませんよ。
「怪我はなかったのか?」
「は、はい……。そう言われてみれば」
私が挙動不審な態度をとっているからだったと思います。
前方で黙って聞いていた御者が口を挟んできました。
「失礼ながらヴィレーナ様。本当にモンスターを退治したのですか?」
「おい、なにを言う! ヴィレーナに対して失礼だろう!」
「ですが、中級モンスター相手でもカイン騎士団長だけでは勝てるかどうかもわからない強さなのです。ましてや前代未聞の上級モンスターともなれば、無傷で帰ってこれるわけがないかと……」
さすがのカイン騎士団長もチュリップもなにも言い返せずでした。
もちろん私が本当のことを言わないからいけないのです。
ただ、証拠ならあるのですが、果たしてここで見せて良いのかどうか。
「あの……。上級モンスターは死んでも消滅せずにあらゆる素材になるということはご存知でしょうか?」
「私なら歴史本で読んだことがあるので知っていますよ」
「俺も話には聞いたことはある。大昔、どうやったのかは記されていないが上級モンスターを倒せる猛者がいたらしい。その者はモンスターの死骸にとんでもない価値があることを知り、それを元手に国を創ったとか」
「今、ここでさきほど倒したモンスターを出してもよろしいでしょうか?」
論より証拠。
実物を見せたほうが納得していただけるだろうと思い、マジックボックスから出しました。
「「「…………」」」
すぐにマジックボックスに収納します。
マジックボックスの中では時の流れも止まるようで、ドラゴンとはいえ生物ですからね。
後で売却するまでなるべく新鮮なまま残しておきたかったのです。
「ヴィレーナ……。今のはどうやって出したり消したりしたのだ……?」
「あ……」
マジックボックスを普通に使ってしまいましたが、この世界には知られていない魔法だったことをすっかり忘れていました……。
59
お気に入りに追加
1,154
あなたにおすすめの小説

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

妹が真の聖女だったので、偽りの聖女である私は追放されました。でも、聖女の役目はものすごく退屈だったので、最高に嬉しいです【完結】
小平ニコ
ファンタジー
「お姉様、よくも私から夢を奪ってくれたわね。絶対に許さない」
私の妹――シャノーラはそう言うと、計略を巡らし、私から聖女の座を奪った。……でも、私は最高に良い気分だった。だって私、もともと聖女なんかになりたくなかったから。
退職金を貰い、大喜びで国を出た私は、『真の聖女』として国を守る立場になったシャノーラのことを思った。……あの子、聖女になって、一日の休みもなく国を守るのがどれだけ大変なことか、ちゃんと分かってるのかしら?
案の定、シャノーラはよく理解していなかった。
聖女として役目を果たしていくのが、とてつもなく困難な道であることを……

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる