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「父上。たとえダメ元でもできるだけの抵抗はするつもりです」
「死ぬ気か?」
「どうせ死ぬなら最後まであらがうのだとヴィレーナ殿の騎士道精神に心打たれました」

 だから私はそういうつもりで言ったんじゃないんですって……。
 神様のおかげで謎に勝てる自信はあるけれどそれを誤魔化すための言い分であって……。

「本来ならば恩人であるヴィレーナ殿だけでも少しでも安全な場所へ避難誘導させたい。だが、なぜだろう。ヴィレーナ殿がそう言ってくれると、なぜか希望が出てくるのは」
「私も同感です。ただでさえ規格外の聖なる力と回復魔法で奇跡を見てきましたからね。微力ながら上級モンスターに争うつもりです」
「俺も」
「私もです。せっかくヴィレーナ様に力を元に戻してくださったのですから」

 えぇと……。
 思っていた展開と大きく変わってしまいました。
 今から一人で上級モンスターのところへ移動するつもりだったのですが……。
 謎にみなさん張り切っちゃっていたら、これからこっそりと使う転移魔法ができないじゃありませんか。

「俺、この戦いで生き残ることができたら、チュリップを幸せにする」
「「え!?」」

 チュリップは嬉しそうな反応、そして私はやべぇと思った反応をしました。
 これ、絶対に言っちゃいけないやつでしょ!!

「私も、この戦闘で奇跡をおこせたらヴィレーナ殿、いや、ヴィレーナ。私と正式に婚約して欲しい」
「えぇぇぇえこのタイミングですか!?」

 最悪のタイミングです……。
 前世の私の記憶が強く、とても強く訴えているのです。

「そのほうが絶対に生き残るという気合いも入るだろう。それに、本心だ。キミの謙虚さと優しさ、そして絶望にもあらがうかっこよさ、私はヴィレーナのことを心の底から愛しているのだと気がついた」

 それは大変嬉しいことなんですが、このタイミングで言われると、むしろ絶望しかありません。
 少なくとも、カイン騎士団長とキーファウス殿下は絶対に戦場へ連れていってはいけないことがわかりました。
 もうこうなってはさっさと終わらせたほうが良いでしょう……。

「申しわけございません。私一人でブブルル王国へ向かいます」
「「「「な!?」」」」

 驚くのは当然だと思います。
 けれど、言っちゃいけないフラグを言ったから死ぬと思いますだなんて、正直には言えません。
 ここは誤魔化すことにしました。
 多少のリスクは承知のうえで。

「実は、私は転移魔法が使えます」
「「「「てんいまほう?」」」」
「あ、瞬間移動のようなことができます。一度行った場所にしか行けませんし、それに今の段階では自分だけしか移動できないようなので、すぐにでもブブルル王国に行けます」

 四人とも口を開きながら呆然としていました。
 転移魔法は、起きた瞬間に実は使えるということがわかりました。
 これも神様からのご教授のおかげです。
 しかし、この世界で転移魔法は存在しないようなので、黙ったおくつもりでしたが、致し方なかったのです。

「たった一人で上級モンスターと戦うと!?」
「どちらにしても無謀な挑戦ですから。せめて少しでも怪我を負わせてのちの戦闘で有利になるようには最低限しておきたいなって」
「しかし……それではヴィレーナ殿が!」
「とにかく時間がありません。私はこのまますぐにでも向かいます」

 ブブルル王国の状況がどうなっているのかわかりません。
 神様の言うとおりならすでに出現していて国が崩壊しているなんてことも……。

 私は構わずに覚えたての魔法をこの場で使いました。

『転移!』
「「「「おおおおおお……」」」」

 彼らの驚く声は聞こえませんでした。
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