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「捕らえろ!!」
 ドアが勢いよく開き、突入してきた部隊によって、アイスピックを持った男爵と使用人は簡単に捕まった。
 夫人とシャロンさんも、呆気なく捕まり、作戦は上手くいった。

 私はというと気が抜けてその場に蹲み込んでしまった。

「大丈夫かジュリエル。お前は本当によく頑張ってくれた」
「助けにくるのが遅すぎです……流石にダメかと思いました」
「すまない、決定打の言葉を記録するまでは動くに動けなかったからな……」

 気が抜けてしまい義兄様に寄っかかってしまった。
 身体がうまく動かせないので許してほしい。

「ちょっと、離しなさいよ! 私はこんなに風邪をゴホッゴホッ……。こんな強引に捕まえられたら死んでしまうかもしれないわ! ……ゴホッゴホッ!」

「そうか、ならば国の最高機関で健康診断を再び受けさせてやろう。許可も得ているからな」
「な!?」

「喜ぶがいい。もしも本当に病気だったとしたら、お前だけは無罪になるかもしれんぞ。ただし、仮病だったときは覚悟するのだな」

「ちょ……そんな勝手なこと……ゴホッゴホッ!」

 シャロンさんは顔が真っ青になりながらも必死に演技を続けていた。
 その才能を生かして大いに国に貢献できていれば大物になれたかもしれないのに……。

「無駄な芝居はしなくていい。こうなると思って事前にある方の命令で、シャロンの部屋で映像を記録し、更に健康診断の病院でも音声を盗聴していたのだ」

「何言ってるのかわかんないんですけど!」
「ふっ……熱を上げるために激しい運動をしていたことも、健康診断の控室で虫型の盗聴器でお前達の会話も全て記録してあるのだよ。聞いてみるかい?」
「な……!?」

 病気の芝居はすぐに止まり、本当の病人のような顔色に変化した。どうやらようやく状況を理解できたらしい。

 ドルチャ家の人間と使用人は、そのままどこかへ連行されていった。

 ♢

「こ……これはどういうことだ!? それに婚約破棄とはなぜだ!?」

 家に帰ってきたハーベストは、状況を理解できないまま混乱しているようだ。
 義兄様が、ドルチャ家の人間全員が連行されていったことを説明した。
 そして、私は婚約破棄することを申し出たのだ。

「待て! 父上達が捕まったとはいえ、俺との婚約には関係ないだろう。それとも、君は俺の家族が捕まっただけのことで俺との愛を終わりにするつもりなのかい?」

 どうしてここまで自信を持ってそんな勝手なことを言えるのだろうか。
 流石に殺されそうになった私に対して、第一声に大丈夫かと心配してくれるのが普通なのでは?

 義兄様が言ってくれた時のように……。
 もはや常識が通用しない男には、本題だけさっさと伝えてしまべきなのかもしれない。

「ハーベスト様とシャロンさんが義兄妹という範囲を超えて身体の関係を持っていたことも知っていますが……」
「あぁ、あれは当然のことだ。君が心配するようなことではないのだよ」
「はい!?」

 流石に私の堪忍袋も爆発しそうだった。
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