【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜

よどら文鳥

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「ジュリエル、家が大変なことになってしまったから、早く帰ってきてほしい」
「はぁ……わかりました」

 数日間ディラウ家で平和な日々を過ごせていたのだが、突然ハーベストが家にやってきた。

 少し距離をあけて分かったのだが、私はこの人とは今後やっていけそうにない。
 すでにお父様達にも相談していて、婚約破棄にする許可ももらっている。

 準備も全て整っているので、あとは義兄様達にお任せして、家を出発した。

 ♢

「ジュリエル、実はな……シャロンのことなんだが……」

 私がディラウ家に帰ってから、ハーベストとシャロンが何をしていたかは全て知っている。卑劣な行為をしていたことまでも。

 病気をいち早く察知、派遣、対処するためという名目で、映像を記録できる道具をシャロンさんの部屋に設置していた。

 公爵様が義兄様に指示をしていたのだ。
 作戦とはいえ、知らぬふりをするのがとても辛い。

「なんでしょうか?」
「どうもシャロンは私のことを好きなようでな……」

 知っています。しかもあなたは断ることもなく身体まで受け入れたことも……。

「それを私に言うのもどうかと思いますが……ハーベスト様はどうしたいのです?」
「誤解しないで欲しいのだが、妹としては好きだ。私が看病をすると、シャロンの病気が発生しないんだ。だから、結婚してからもシャロンを家に招いて三人で過ごしたい」

 何を言い出すかと思えば……。
 事情を知らない人が聞いたらそれもありだと言うかもしれない。

 だが、ハーベストとシャロンさんは既に身体の関係にまで発展している。おまけにシャロンさんは病気ではなく仮病だ。
 どうして一番身近にいるのに気がつかないのだろうか。

「シャロンさんをしっかり見ていますか? 彼女、病気ではなく仮病ですが。このままでは国が黙っていませんよ」

 これは私からハーベストへ向けた最後の警告だった。

「そうか、ジュリエルの気持ちはよく分かった」
   さすがに考え直してくれたようでホッとした。とは言っても、婚約破棄を言い渡すことに変わりはないが。

「君が私を独占したいという気持ち、とても嬉しいよ」
「はい!?」

 私は間違ったことを伝えてしまったのだろうか。どう解釈したらそのような考えになるのだ。

「私もジュリエルの気持ちに負けないくらい君を愛しているし、これは相思相愛だろう。私たちはきっと良き夫婦になれる」
 いえいえ、既に私はあなたに愛情のかけらすら持っていませんが!

「だが、シャロンのことを悪く言わないでほしいんだ。あの子の病気は深刻なのだ。いくら私の気を引きたいからって仮病などと言われてしまえば流石に傷つくよ……」
「いえ、だからそうじゃなくて、彼女は本当に仮病で……」
「その言葉だけは二度と言わないでほしい。勝手で悪いが、シャロンも交えた三人での生活を考えてほしい。シャロンの病気を悪化させない為に!」

 私は今まで諦めるという行動をしたことがなかったと思うが、その記録はここで途絶えてしまうだろう。
 もう無理です。ハーベストには、なにを言っても無駄。
 ハーベスト達がどうなっても私はもう知りません。
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