【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか？〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜

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「まぁ！　ジュリエルさん、私の可愛い娘が嘘をついてるというの！？」
「いえ……そうではなく、病気だと思い込んでしまっている可能性があるのではないかと……」

　先にハーベスト様の義母様が帰られたので、今日起きた出来事と、診断の結果を報告したのだが……。

「シャロンちゃんが体調が悪いと言っているのに病気じゃないかもしれないなんて、あなたの考え方がバカなのかしら？」
「い……いえ……それに、私の義兄様は医師との繋がりもあります。以前、医師がシャロンさんを検査した時に完治したとも確認したそうですが……」
「おだまりなさい！　前に診療したダメ医師は、愛するシャロンちゃんを不愉快にさせたのよ！　そんなヤブ医者の結果なんか信用できないわよ」

　なんで義母様、トスカーレ＝ドルチャ様にここまで怒鳴られなければいけないのだろうか。
　このままではいつまでたってもシャロンさんは病気だと言って部屋に閉じこもってしまうだけだろう。

「シャロンさんが病気だと言っているのであれば、もう一度別の医療で検査を受けた方が良いのではないかと」
「ジュリエルさんに何がわかるというの？　シャロンちゃんは可哀想な子なのよ！　あの子の意見を尊重してあげるべきなの！　はぁ、なんでこんな女がハーベストちゃんの婚約相手なのよ……」

　あまりにも酷い怒声で威嚇されてしまい、私の身体が震えてしまった。
　まさか結婚まで否定されるとは思っていなかったからだ。

「このことはしっかりと大人の家族会議で伝えさせてもらいますからね。ジュリエルさん、あなたのお父様がさぞかし立派な方だとしても、あなたはここの人間になったことをお忘れなく。覚悟してくださいね」

　振り返って部屋へ消えていく義母様を呆然と見ながら、この場からしばらく動くことができなかった。

　♢

「おいおいジュリエルさんよ、アンタ今までどうやって教育されてたんだ？　まだこんなに汚れているではないか！」

　窓が汚れている……。いや、意図的に泥だらけにされたのだ。
　私は今さっき雑巾で綺麗に拭いたはずなのに……使用人が手に持っている泥水の雑巾を使って窓を汚くしたのだろう。
　これで何度目の嫌がらせなのだろうか。

「……わかりました。やり直します」
「当たり前だ！　全く……我々使用人より使えない女など……いや、違うか、我々が優秀すぎるからお前の家事スキルなどゴミ同然というわけか。これは失礼。はっはっは！」

　ここ数日、ハーベスト様が外出されている間だけ、私に対する仕打ちが酷い。
　一緒に住んでるのだから、手伝いくらいしたらどうなんだと言われ、掃除をしたらこの有様。

　義母様やシャロンさんもこの光景を見て嘲笑っている。
　最初は味方だったはずの義父様には『おっと、手が滑った』と言って、胸やお尻を触られた。

　反抗しようとすれば全員で理不尽なことばかり言われてしまうので、大人しく従うことにしていたが、流石に我慢の限界だった。

　ハーベスト様だけはこの状況を知らないらしい。
　ならばハーベスト様なら助けてくれるかもしれない。

　そう信じて、ハーベスト様の帰宅後を待って、現状を相談することにした。