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64 マーレット様のお見合いとミーナの親戚5
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「僕が極端に心配性だということを忘れないでくれよ」
「うむ、確かにそうだったが」
「それに、こんなにも美しき方と二人きりになってしまったら緊張して何も喋れなくなってしまう……」
「私もライアンさんがいてくれないと喋れませんわ」
思ったよりも大変だな。
お互いに緊張しすぎていて、私たちがそばにいないと何もできないらしい。
「サイファー様は──」
「マーレットさん、僕のことは名前で呼んでほしい」
「いきなりですかっ!?」
「兄上たちの婚約者からはサイファー様と呼ばれているので。できればマーレットさんはそのように呼んでくれると……」
「わ……わかりましたわ! オービットさま……」
見ている私のほうが恥ずかしくなってきてしまった。
二人の会話に新鮮味があって、こっちまで見ているだけでドキドキしてしまう。
オービット様は極端に心配性と言っていたが、マーレット様は全く気にしていないようだ。
「ところで、先ほどから言いたかったことがあるのだがいいか? つい最近僕が婚約解消をせざるをえなくてそういった手続きをしたばかりだということはご存知で?」
「いえ、初耳ですわ」
「すまない……。先に伝えてもらうべきだった。実は婚約者がいたのだよ。しかしながら、その相手の親族がつい最近不正を働き爵位奪還の可能性があるという情報を聞いてな。失礼ながら婚約者のことも調べていたら本人も裏で悪さをするような方だったので……」
オービット様が申し訳なさそうな態度で話している。
幼馴染のオズマやミーナ以外の貴族でもそういう悪さをする家柄があったのか……。
マーレット様の表情が次第に険しくなっていく。
「オービットは必死に説得して二度と悪の道へ進むなと誘導をかけていたそうだ。だが、彼女はバレたことに腹立ち逆上して何度も暴行を加えてきたそうだ」
「ひどすぎですわ! そんな家柄の者とは関わりたくありませんね」
サバス様は、マーレット様の発言を聞いてピクリと顔を動かした。
「少なくともライアンは関わっているが……」
「「え!?」」
私とマーレット様が揃って反応してしまった。
「ミーナ=ワインド男爵令嬢の従姉妹にあたる者だったのだよ」
「な……!?」
私は思わず固まってしまう。
返答にも悩む。
ミーナの血筋の方々は揃いも揃って問題だらけなのか!?
「オービット様は大変な苦労をされていたのですね。お気持ち察しますわ」
「むろん、過去のことには向き合わないつもりだが、このことだけはいずれ知ると思い先に伝えたかった」
「いえ、お心遣い感謝いたしますわ」
オービット様がカミングアウトしてから、彼がよそよそしい雰囲気になっている。
これはもしかして、マーレット様のことを意識しているのではないだろうか。
「オービット様……、私でよければこの後も深く話をしたいと思っていますわ」
「是非に!!」
どうやらマーレット様にも幸せな季節がやってきたようだ。
「ライアンさん、サバス様。私はお二人のおかげで今、とても幸せですわ。ありがとうございます」
「うむ、其方らに幸あれ。ところでこんなに幸せな空間の中で言ってしまうのは心苦しいことだが……。実は明日オービットの前の者とミーナの容疑に関して、証拠が浮上したそうで捕まえ連行するそうだ」
本当にこんなにいい雰囲気の中で言わないでくれ!
はぁ、ついにミーナがどうにかなってしまうのか。
幼馴染とはいえ、同情の余地もないのでどうすることもできないけれど。
オズマはどうなるのだろうか。
どちらにしても、今はマーレット様たちがいい雰囲気なので、あまり深くは聞かないでおいて、帰り際にでもサバス様に聞いておくか。
ーーーーーーーーーー
【後書き】
ここまで読んでいただきまして本当にありがとうございます。
今回の章ではかなり脱線してしまいましたが、次話から急展開します。
また次話からは、ほんの少しだけ執筆にも変化があります。
この作品はあともう少しだけ続きますが、お付き合いいただければ幸いです。
「うむ、確かにそうだったが」
「それに、こんなにも美しき方と二人きりになってしまったら緊張して何も喋れなくなってしまう……」
「私もライアンさんがいてくれないと喋れませんわ」
思ったよりも大変だな。
お互いに緊張しすぎていて、私たちがそばにいないと何もできないらしい。
「サイファー様は──」
「マーレットさん、僕のことは名前で呼んでほしい」
「いきなりですかっ!?」
「兄上たちの婚約者からはサイファー様と呼ばれているので。できればマーレットさんはそのように呼んでくれると……」
「わ……わかりましたわ! オービットさま……」
見ている私のほうが恥ずかしくなってきてしまった。
二人の会話に新鮮味があって、こっちまで見ているだけでドキドキしてしまう。
オービット様は極端に心配性と言っていたが、マーレット様は全く気にしていないようだ。
「ところで、先ほどから言いたかったことがあるのだがいいか? つい最近僕が婚約解消をせざるをえなくてそういった手続きをしたばかりだということはご存知で?」
「いえ、初耳ですわ」
「すまない……。先に伝えてもらうべきだった。実は婚約者がいたのだよ。しかしながら、その相手の親族がつい最近不正を働き爵位奪還の可能性があるという情報を聞いてな。失礼ながら婚約者のことも調べていたら本人も裏で悪さをするような方だったので……」
オービット様が申し訳なさそうな態度で話している。
幼馴染のオズマやミーナ以外の貴族でもそういう悪さをする家柄があったのか……。
マーレット様の表情が次第に険しくなっていく。
「オービットは必死に説得して二度と悪の道へ進むなと誘導をかけていたそうだ。だが、彼女はバレたことに腹立ち逆上して何度も暴行を加えてきたそうだ」
「ひどすぎですわ! そんな家柄の者とは関わりたくありませんね」
サバス様は、マーレット様の発言を聞いてピクリと顔を動かした。
「少なくともライアンは関わっているが……」
「「え!?」」
私とマーレット様が揃って反応してしまった。
「ミーナ=ワインド男爵令嬢の従姉妹にあたる者だったのだよ」
「な……!?」
私は思わず固まってしまう。
返答にも悩む。
ミーナの血筋の方々は揃いも揃って問題だらけなのか!?
「オービット様は大変な苦労をされていたのですね。お気持ち察しますわ」
「むろん、過去のことには向き合わないつもりだが、このことだけはいずれ知ると思い先に伝えたかった」
「いえ、お心遣い感謝いたしますわ」
オービット様がカミングアウトしてから、彼がよそよそしい雰囲気になっている。
これはもしかして、マーレット様のことを意識しているのではないだろうか。
「オービット様……、私でよければこの後も深く話をしたいと思っていますわ」
「是非に!!」
どうやらマーレット様にも幸せな季節がやってきたようだ。
「ライアンさん、サバス様。私はお二人のおかげで今、とても幸せですわ。ありがとうございます」
「うむ、其方らに幸あれ。ところでこんなに幸せな空間の中で言ってしまうのは心苦しいことだが……。実は明日オービットの前の者とミーナの容疑に関して、証拠が浮上したそうで捕まえ連行するそうだ」
本当にこんなにいい雰囲気の中で言わないでくれ!
はぁ、ついにミーナがどうにかなってしまうのか。
幼馴染とはいえ、同情の余地もないのでどうすることもできないけれど。
オズマはどうなるのだろうか。
どちらにしても、今はマーレット様たちがいい雰囲気なので、あまり深くは聞かないでおいて、帰り際にでもサバス様に聞いておくか。
ーーーーーーーーーー
【後書き】
ここまで読んでいただきまして本当にありがとうございます。
今回の章ではかなり脱線してしまいましたが、次話から急展開します。
また次話からは、ほんの少しだけ執筆にも変化があります。
この作品はあともう少しだけ続きますが、お付き合いいただければ幸いです。
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