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56 サバス様との危機⁉︎2

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 今日はサバス様に手料理する予定だ。
 ここ最近元気がないようだったし、昨日のデートはあらわになっていたから、しっかり栄養のあるものを作って食べていただかないと!
 もうすぐ暑い時期になるし、その前に体力つけなきゃ!

 サバス様のところへ行く前に、自宅のキッチンで念入りに料理の確認をしていた。
 お父様が発明した新作レシピをより正確に作りたい。

「これではダメだ。全体に熱が伝達できていない。しっかりと満遍なくかきまぜる上で具材を崩さずにすることもわすれるな」
「はい! 気をつけます」
「ったく……、おまえはサバス様のことになると真剣だよな」

 お父様は呆れているようで大きくため息を吐いている。

「大丈夫だとは思うけどよ、冷められてないだろうな?」
「え!? 冷めるとは……?」
「このところ毎日会いにいってるだろ? サバス様とはいえ、これだけ気持ちが重いと感じてしまったら辛くなっちまうこともあるってことだ」

 まさかそんな……と思ってしまい、無意識で混ぜていた手が一瞬止まってしまう。
 すぐに手をとめるなと言われたので再び作業にとりかかりながら話を続けた。

「サバス様は……大丈夫だと、おもい……ます」
「悪い。あくまで俺の感覚だ。人間同士の付き合い、片方だけが重すぎるとバランスを崩してしまうってことがよくあるわけだが……。まぁお前たちがそんなことで終わるような関係ではないとは思っている。これだけ俺に料理を教えてほしいなんて言ってくるくらいだから、きっとサバス様の舌は満たされているだろ」

 お父様が言っているとおり、今の私はサバス様に対しての気持ちが強すぎるかもしれない。
 毎日ずっとずっと一緒にいたいと思うようになっていて、それが行動に現れている。
 初めてサバス様とお会いしたときは、それほどがめつくようなこともなかった。
 お菓子を作って喜んで食べてくれて、それが嬉しいと思っていた程度だ。

 だが、今はそうじゃない。

 サバス様のお顔を見れるようになってからは、好きだけでは抑え切れないほどの気持ちになっている。
 もしもこの気持ちが私だけだとしたら、お父様の言うとおり辛い思いをさせてしまっているかもしれない。
 今日、お会いしたときに少し観察してみようと思う。

 だが、仮に重いと思われていたとしたら、この先私はどうやって気持ちをセーブさせればいいのだろうか……。
 料理で使う熱の調整は出来たとしても、気持ちの加減調整なんて簡単にはできない。

「手! 何事も一瞬の油断で失敗する。料理とて同じだ」
「すみません。集中します」

 とはいったものの、サバス様が私のことをどう思っているのかが不安でそればかり考えてしまっていた。
 せっかくお父様に教えてもらっているのに集中できない。

「重症だな……すまん、まさかライアンがここまで思い悩むとは思わなかった」
「いえ、悪いのは私なので。一つのことに囚われてやるべきことに集中できないのは悪いところです。今はこちらに集中します」
「ならばたまには今作ったものを持って行ってみてはどうだ?」
「へ!?」

 普段家で試しに作った料理は家のものが食べている。
 練習で作ったものをサバス様に食べさせるなどどうなのだろう。

「サバス様のために作るとなれば少しは集中できるだろう?」
「そうかもしれませんが……」
「やれ!」
「は、はい!」

 これはサバス様が召し上がるもの……。
 これはサバス様が召し上がるもの…………。
 これはサバス様が召し上がるもの……………………。

「できました!!」
「ほら、思ったとおりだ」

 私ってどうしてこんなにも単純なのだろう……。
 サバス様が召し上がると考えながら作っただけで、集中することができた。

 果たして家から持って行ったものを食べてくださるだろうか……。
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